専門外来コラム



気象病とアロマ

2023年1月19日 22:29更新
専門外来コラム


⑪気象病とアロマ

 

今回は気象病とアロマのお話です。

気象病や自律神経の不調にアロマが効果的なのはご存じでしょうか?

気象病は、気圧や気温・湿度などの変化によりさまざまな不調を引き起こします。気象変化が大きいと、それに合わせるように自律神経も乱れ、心身ともに調子が上がりづらいです。頭痛やめまい・倦怠感などの症状に加えて、気分が上がらずに寝込んでしまう方も少なくありません。

 

対処法や予防法はたくさんありますが、アロマは手軽に取り入れられるセルフケア方法の一つです。アロマには、体のバランスを回復させて心身をリフレッシュ・リラックスする効果があります。自律神経系・ホルモン系・免疫系を全体的に整えてくれるため、日々の健康維持や、生活を豊かにするアイテムとして、知っておくと良いですね。

 

・アロマオイルの持つ力

現代医学との違い

現代医学による投薬治療は、病気の治療には無くてはならないものですよね。しかし、薬というのは人工的で、作用が単一的です。一つの標的に対して集中的にはたらく強さがあるため、効果は大きいのですが、「必要な時に必要な分だけ」という使い方が理想です。

 

一方で、アロマは天然由来です。自然のものであるため、体にも容易に代謝・吸収されますが、それゆえ体内に残る時間も短いです。薬のような劇的な効果は見込めないかもしれませんが、薬よりも多様な成分が含まれているため、作用が全体的です。そのため、アロマは自律神経やホルモン・免疫系をバランスよく整えるのに適しており、日々の生活に継続的に取り入れることができます。

 

≪香りによる情報伝達≫

薬にはないアロマ特有の作用が、「香り」です。香りの情報は、嗅神経を通じて、自律神経をつかさどる視床下部・大脳辺縁系に伝わります。香りそのものによって、自律神経に関わる部分に作用し、ホメオスタシスを高めることができます。その結果、自然治癒力が上がります。

 

また、香りには、心に作用して記憶に残す力もあります。心と体はつながっているため、気象病で自律神経が乱れていると、どちらの調子も悪い方向へ向かいやすいです。そこで、心と体のバランスを整え、私たちをリフレッシュ・リラックスに導くのが香りの力です。自分の体調や好みによって精油を変えられるのも、良いポイントだと思います。

 

・アロマオイルと自律神経の関係

アロマの強みは、嗅覚を通して直接脳に作用する点です。アロマオイルの香りは、鼻から、

鼻の奥の鼻粘膜という場所を通過し、脳にたどり着きます。脳の中では、大脳辺縁系→偏桃体→視床下部の順に香りの情報が伝わり、自律神経系や内分泌系(ホルモン)、免疫系にはたらきかけます。

 

自律神経はストレスの影響を多く受けています。ストレスというのは、精神的なストレスから始まり、不規則な生活習慣や肉体的な疲労、環境条件など幅広く存在しています。気圧変化や寒暖差などの気象変化も立派なストレスの一つですよね。

自律神経は、脳の視床下部という場所が司令塔になり、心身のバランスを保っています。そのため、アロマの香りを通じて直接脳に情報が届くと、自律神経のコンディションを整え体と心の調子を改善することにつながります。

 

アロマは香りを鼻から楽しむ印象がありますが、一方で、皮膚に付けて吸収することもできます。皮膚に精油を塗る場合、精油の成分は直接皮膚から血流へ行き、同時に鼻から血流へ行き、体内に取り込まれます。また、「触れる」という行為は自律神経に良いため、ゆっくりと優しいタッチングをすることで、愛情ホルモンであるオキシトシンの分泌を促し、心と体が安心します。安心は、心身をつかさどっている自律神経にはとても大切な要素です。

 

・気象病に効果的なアロマブレンド

 

日本アロマ協会(AEAJ)によって考案された、「気候別のアロマブレンド」というものがあります。今回は、雨の日用のブレンドをご紹介します。

 

雨の日は副交感神経が優位になり、心身が休息モードになるため、体がだるくなったり元気が出ない傾向にあります。そこで、交感神経を優位にし、やる気をアップさせてくれる効果のあるオイルを選ぶと良いでしょう。

 

雨の日ブレンド:グレープフルーツ+スイートマジョラム

グレープフルーツ:

グレープフルーツには、交感神経に働きかけて血流の増加や気分を向上させる作用があるため、作業の効率が上がるでしょう。心に軽やかさをもたらし、リラックスというよりはリフレッシュしたい時に推奨されます。

 

スイートマジョラム:

スイートマジョラムは消化器をサポートするハーブで、昔からよく料理に使用されてきました。肉体的にも精神的にも温める作用があり、肉体的には冷えやむくみ、肩こり、消化器症状を改善し、精神的には緊張を緩和して孤独や悲しみを癒すと言われています。

 

・初心者の方はラベンダーから

ラベンダーは、リラックスの代表と言われており、万能でスタンダードな精油です。「アロマに慣れていなくてどの精油を選んで良いかわからない」という方にお勧めしています。ラベンダーは心身をバランスの取れた状態にするため、日常使いや、眠れない夜などに使うと良いでしょう。

 

・その他気象病・首肩こりに効果的な精油

バジル:疲れや痛みに効果があります。気象病による片頭痛・消化器の不調などがあるとき、自律神経の調整作用により心身をリフレッシュさせてくれます。

 

レモン:血流が良くなり、心身に爽快感をもたらしたり、集中力があがったりします。気象病や首肩こりなどで気力も体力も滞ってしまう時に、すっきりできる精油です。

 

イランイラン:バランス力が一番と言われている精油です。神経を落ち着かせて緊張や不安を軽減します。ストレスが溜まっていると感じる方は試してみると良いかもしれません。

 

参考文献

川口三枝子.「すぐ使えるアロマの化学 自律神経系 ホルモン系 免疫系の不調を改善!」BABジャパン.2020

 



気象病③ 寒暖差疲労・寒暖差アレルギー

2022年11月26日 13:02更新
専門外来コラム


気象病③ 寒暖差疲労・寒暖差アレルギー

 

最近は急に寒くなったり、突如ぽかぽか日和になったりと、1日の間や前日との気温差が大きくなっています。寒暖差疲労専門外来では、10月・11月にかけて、寒暖差による不調を訴える患者さんが多かったです。今年は特に患者さんが2倍ほど増えており、テレビや雑誌などの取材も例年以上と感じております。「寒暖差疲労」という言葉も少しずつ広まってきていますね。一般的には、気象病は低気圧(気圧の上下)のイメージがありますが、気温の上下、つまり寒暖差で起こる不調も気象病に当てはまります。

 

寒暖差疲労とは?

急激な気温の変化が繰り返されると、体温調節をするために自律神経の乱れが激しくなります。自律神経は心身の働きに関与している重要な神経であるため、自律神経が酷使されると心身のエネルギーも消耗されます。それによって疲労感・倦怠感、頭痛、冷え性、首肩こりなどの不調が生じることを「寒暖差疲労」と言います。

 

寒暖差には、以下の3つのパターンがあります。

 

①1日のうちに起こる最低・最高気温の差

②前日と当日、週単位での寒暖差

③室内外の寒暖差(冷暖房・電車なども)

 

寒暖差は常に生じていますが、基本的には7℃以上の温度差があると不調が出やすくなります。春や秋は1日の気温差が10℃以上になることも少なくないので、注意が必要です。症状のうち最も訴えが多いのは疲労感・倦怠感、次は冷え・首肩こり、その次は頭痛・めまいです。

 

・寒暖差アレルギー

急激な気温差によって、アレルギーのような症状が出ることもあります。具体的には鼻水、鼻づまり、咳、くしゃみなど、アレルギー性鼻炎によく似ており、これを「寒暖差アレルギー」といわれています。

自律神経は血管の拡張・収縮に関係しているのをご存じでしょうか。鼻にたくさん通っている毛細血管が、気温差の大きい環境に対応しきれず血管の調整がうまくいかないため、症状として現れます。また寒暖差に限らず、季節の変わり目は気候の変動が激しく気道が過敏になりやすいので、呼吸器が弱い方や喘息持ちの方は調子が悪くなりやすいです。今年は、寒暖差による鼻水や咳などの風邪・アレルギー症状を訴える方が多かったです。

 

・気温の変化と自律神経の関係

人間の体温は、外の気温に関係なく36℃37℃程度で一定に保たれています。これは、外気温の変化に応じて体の熱を産生していたり、逆に熱を放出したりして体温を調節しているためです。寒さや暑さは皮膚を通して感じますよね。その情報は脳の視床下部という場所の体温調節中枢に伝えられ、自律神経系や内分泌系、体性神経系を介して熱の産生と放出のバランスを取っています。ホメオスタシスを維持するために自律神経が微調整を担当して体温調節しています。

 

たとえば気温が上昇して暑さを感じると、以下の現象が起こります。

 

副交感神経による血管収縮能が抑えられ、血管が拡張して、皮膚表面での熱交換が行われる。

それで体温上昇に対応的ない時には、発汗が起こる。発汗時の気化熱にて、体温を下げる。

「発汗=水分の排泄」となるため、バソプレシン(詳しく調べる)というホルモンが増え、尿排泄量が減る。

 

**

 

反対に、気温が低下して寒さを感じた時は、以下の通りです。

 

交感神経により皮膚の血管が収縮、体表から熱が逃げていくのを防ぐ

交感神経の作用により、副腎皮質ホルモン(アドレナリン)、甲状腺ホルモンの分泌が増える

内臓で熱が作られる(新生児の場合は褐色細胞組織での熱産生も高まる)

「ふるえ」を起こして熱の産生を増やす

 

 

寒暖差が大きいと、上記の微調整を繰り返す必要があり、自律神経が乱れやすくなります。

 

・寒暖差に対するセルフケア

 

寒暖差が大きくなると、日中は暖かいですが朝晩は冷え込みが強まりますよね。体が冷えると、血流が悪くなり、体の機能が低下してさまざまな不定愁訴が出やすくなります。寒暖差によって外気が寒くなったときは、必要以上に体を冷やさないことが大切です。

 

自律神経に効果的な入浴法

体を温めるための基本は、入浴でゆっくり体を温めることです。夏はシャワーで済ませてしまう方も多いと思いますが、秋に向けてお風呂に入る習慣をつけてみましょう。冷え性や自律神経の不調をお持ちの方、女性などには、エプソムソルトや炭酸風呂などをお勧めしています。

エプソムソルトにはマグネシウムが多く含まれており、リラックス効果や筋肉を緩める作用が、緊張した体をほぐしてくれます。マグネシウムは皮膚からの吸収が良いため入浴剤でも効率よく体内に取り込むことが可能です。自律神経の不調を抱える方には手軽に取り入れてみて頂きたいものの一つです。一方、炭酸風呂は、炭酸ガスが吸収されることで血管が広がり、体温が上がります。こちらも血行が良くなるので冷え対策に役立ちます。

 

お風呂に入っているときは、首まで浸かり、余裕があればふくらはぎや鎖骨下のマッサージをすると良いと思います。もちろん、ぼーっとリラックスしても大丈夫です。首には人間にとって大切な大きい血管や自律神経の通り道があります。首を温めて首肩こりを改善すると、全身の血流アップにつながりますし、自律神経のケアができます。

たとえば頚椎1番(首の付け根・耳や鼻と並ぶ位置にあります)を意識して「うん、うん」と頷くように首を縦に動かす(1020回ほど)、次に頚椎2番を意識して横に首を振るように動かすと(同じくらいの回数)、普段は固まりやすい首の骨や筋肉の動きがよくなり、凝りが改善します。頭痛予防にもなるので、お風呂で時間のあるときにやってみましょう。

 

服装の工夫

寒暖差に応じた衣服の調整は、一般的にも言われていることですが、ポイントを知っておくとより効果的に体温調整できると思います。私がおすすめしているのは、マフラーやネックウォーマー、レッグウォーマー、腹巻・ホットパンツの3つです。太い血管の通り道である首・手首・足首、内臓が集中しているお腹を冷やさないようにしましょう。3つの中で意外と薄着になっている場所が足首です。足首が硬い方や足首を露出した恰好をすることが多い方は、冷えを引き起こしやすいです。デスクワークが多い方はぜひレッグウォーマーも活用してみましょう。

 

体が冷えすぎている方は、冷え症状と一緒にのぼせの症状も出る場合があります。「冷え性なのにのぼせもある」という方は、体の芯は冷えているのに頭や体の表面だけが暑くなっている方が多いです。のぼせてしまった場合は、頭や頬、手のひらなどを一時的に冷やすと、こもった熱が出ていきます。

参考:鈴木郁子(編著).やさしい自律神経生理学 命を支える仕組み.中外医学社.2015

 



「気象病ハンドブック」増版となりました

2022年10月22日 19:47更新
専門外来コラム


「気象病ハンドブック」増版となりました。ありがとうございます。

 

/5に発刊となりました書籍「気象病ハンドブック」の増版が決定しました。今年の9月は台風が数多く発生し、複数の台風に囲まれたり勢力が史上最大級だったりと、気象病の方でなくても体と心に負担の多いシーズンでしたね。また、寒暖差による不調を訴える方も注目されてきており、気象病には気圧・気温・湿度の3要素が重要なポイントであると再認識しています。書籍を手に取ってくださった方には、

 

・セルフケアがたくさんあってありがたい

・気象病でなくても健康に関心のある人には役立つ

・ストレッチなどが新しい

・かわいい、さわり心地が良い、大切にしたくなる

 

などと声を頂きありがたい限りです。増版の知らせを聞き、出版社である誠文堂新光社の編集の方や製作スタッフ陣と喜びを噛みしめているところでした。

気象病ハンドブックは、さまざまな方にとって意義のある本になるように作られています。今回は、この本の使い方について用途別にご紹介します。

 

気象病ハンドブックが活躍する場面

 

①気圧変動が大きい台風・梅雨シーズン

気象病で最も多いのが、気圧の変化による不調です。低気圧不調と言われているくらいなので気圧が下がるときに不調が出る方は多いですが、基本的には上下に関係なく、気圧の変化が起こると体調に影響が出ます。

 

気圧の低下・上昇が大きく繰り返されるのが梅雨・台風シーズンです。梅雨は雨の日が多くなるので、気圧が下がったり戻ったりと気圧変動が繰り返されると不調が起きやすくなります。また、梅雨時期は常に湿度が高いです。湿度の高さにより体温調節がしにくくなったり呼吸がしづらくなったりして、自律神経の負荷が増えます。

 

台風シーズンは気圧低下の程度が大きくなるため、不調もより強く出やすいです。台風の場合は、台風が遠くに存在していたとしても頭痛や倦怠感などが発症しやすいです。台風が過ぎ去ったと思うとまた発生して…の繰り返しが起こると、患者さんの心も折れてしまうみたいです。少しでもお薬やセルフケアで対策をすることが大切です。

 

②寒暖差の大きい春・秋

気象病は気圧の影響、という印象が大きいかもしれませんが、寒暖差による不調(寒暖差疲労・寒暖差アレルギー)にも注意しておきたいです。実際、最近では寒暖差による不調を訴える方も増えてきており、患者さんやメディアの取材・特集などが多いです。

 

寒暖差の大きい季節は春と秋です。寒暖差でポイントとなるのが、①1日の気温差②前日との気温差③室内外での気温差、の3つです。春と秋は①②の影響が大きく、疲労感や倦怠感、首肩こり、冷え・のぼせ、頭痛、めまいなどを訴える方が増えます。

 

人間の体温は、外の環境変化に影響されることなく、常に36℃程度で一定に保たれています。体温が一定でいられるのは、自律神経がはたらいて体温を微調整しているおかげです。寒暖差が大きければ大きいほど、体温調節に自律神経が酷使されることになります。必要以上に心身のエネルギーが体温調節に使われてしまうため、疲労感などが起きやすいのです。寒暖差のシーズンは、十分な休息と栄養補給、冷え・のぼせ対策がポイントになります。

 

③日頃から(自律神経や体のメンテナンスをしたい方)

現代は、心身に負担のかかるような多くのストレッサーが潜んでおり、自律神経が乱れていない人の方が珍しいですね。私のクリニックには、自律神経の不調により生活に支障が出ている方が多く来院されます。しかし本当は、不調が出る前に自律神経のメンテナンスをすることがとても大切です。生活習慣を整える工夫をするだけでも自律神経への負担を減らすことができるので、ストレッチや運動などをやってみましょう。

 

目的別の使い方

 

不調の知識を深めたい人は最初から1項目ずつ

 

気象病の対策は、お薬などの治療もありますが、セルフケアの部分が大きいです。ご自身で生活を見直すためには、「なぜ不調が起きているのか?」という根拠や仕組みを理解してからだと、より効果的にセルフケアに取り組むことができます。前半は、気象病の導入から気象病の正体、自律神経についてなど、学習要素が盛りだくさんです。まずはゆっくり勉強して知識を深めていきたいという方は、はじめから1項目ずつ読まれることをお勧めします。

 

興味のある内容だけを知りたい人は好きなところだけを

 

気象病ハンドブックは、読者の方の疑問に応える形で、見開き2ページずつの構成になっています。目次を読んで、気になる内容だけを抽出して読むことができます。最初からじっくりよむ時間や体力がない方は、お好きなところだけ目を通して頂ければ大丈夫です。

 

今ある不調を何とかしたい方は5章から

 

第5章は、気象病の症状別に、症状の特徴や対策を載せています。「今○○の症状があるから、今すぐ何とかしたい」という方は、まずはご自身の不調の項を読んで頂けたらと思います。ここだけのお話ですが、不調別にセルフケアや対策を載せたものの、他の症状にも効くストレッチや、合わせてやった方が効果的な内容もあります。たとえば、呼吸は自律神経を整えるための基本となるので、すべての症状に関係してきます。症状にお困りの方は、余力があるときに5・6章全体を見て頂けたら幸いです。

 

不調はなくても運動習慣を見直したい方は6章を実践

 

6章は、気象病の不調を抱えている方はもちろん、より健康を目指したい方にとっても大切な運動・セルフケアが載っています。「気象病はそこまで重くないけれど、骨格を見直して適切な運動習慣を取り入れたい」という方は、6章だけでも構いません。私が推奨しているのは、主に背骨(肩甲骨や骨盤なども)を動かす運動です。背骨の動きが良い人は、心身の出すパフォーマンスが上がります。背骨は自律神経や髄液の分布とも関係しています。ご自身に本来備わっている能力を最大限に発揮することは、つまり不調が少なく元気に過ごすことにつながります。不調の方にも、より元気な状態を目指したい方にも、6章のセルフケアは必要ということですね。

 



気象病②ー自律神経との関係ー

2022年9月18日 21:22更新
専門外来コラム


気象病ー自律神経との関係ー

 

せたがや内科・神経内科クリニックの専門外来では、気象病外来の他に、自律神経失調症外来もあります。気象病は自律神経のはたらきと関係している点が多く、2つの専門外来を同時に受診される方も少なくありません。自律神経を整える生活の工夫をしていくと、気象病の予防や改善にもつながります。先日の「気象病」の記事は気象病の導入でしたが、今回は気象病と自律神経の関係についてお話していきます。

 

気象病のメカニズム

・気圧に反応するのは内耳

地球上には、大気圧というものがあります。大気圧というのは、地球を覆っている空気による圧力のことで、人間の体は常にこの圧力を受けて生活しています。数値で示すととても大きな圧力なのですが(10t/)、私たち人間の体が潰れてしまうことはありません。なぜなら、大気圧に対して体内からも同じ分だけ押し返す力がはたらいており、私たちは体感としての影響を受けることがないからです。特に負担などを感じることはありません。

 

しかし体に負担を感じないのは、気圧がある程度一定である時の場合であり、「気圧変動」が起きたときは違います。たとえば、飛行機に乗った時にお菓子の袋がパンパンになると言われていたり、耳が詰まったような感覚になったりするかと思います。このように、気圧が大きく変化する(上がる・下がる)と、体にも変化が生じます。

 

気圧の変化を感じるセンサーとなるのは、「内耳」という部分です。耳の鼓膜の奥に位置しています。先ほどの例にもありましたが、飛行機やエレベーターなどで体にかかる圧が変動すると、耳が痛くなったり・こもったりすると思います。これは鼓膜の内側が膨らんでいることによって生じる症状です。内耳で気圧の低下を感じ取ると、それが脳に伝わり、自律神経にも影響が加わります。気象病でめまい(一般的には耳鼻科の症状です)が出るのは、平衡感覚を担っている内耳と関係しています。

 

・体温調整と関係している自律神経

気象病は、気圧の変化だけでなく、気温や湿度の変化によって不調が起こることもあります。私たちの体温は、発熱していない限りは3637℃程度で常に一定ですよね。外の温度に限らず体温を一定に保つことができるのは、ホメオスタシス(恒常性)と言って、体の状態を一定の状態(体温・血圧・電解質など)に保つことのできる人間の特性です(参照:コラム/自律神経とホメオスタシス)

 

ホメオスタシスを維持するために重要な役割を果たしているのが、自律神経です。自律神経が体のあらゆる条件を微調整していることによって、ホメオスタシスが維持できます。体温で言うと、暑いと汗をかき、寒いと縮こまりますよね。暑さに関しては、末梢血管を拡張したり、汗をかいて体温が下がるようにし、寒さに関しては熱が奪われ過ぎないように末梢血管や筋肉を収縮して熱を産生します。これらの過程には常に自律神経のはたらきが関わっており、寒暖差が大きいと自律神経に負担がかかることになります。

 

・寒暖差疲労と寒暖差アレルギー

寒暖差によって起こる不調は疲労感とアレルギー様症状です。一般的には、7℃以上の寒暖差があると不調が出やすくなります。寒暖差に合わせて体温調整をするのに、自律神経が酷使されるためです。寒暖差による不調に注意したいのが冬から春にかけて暖かくなる3~4月、秋から冬にかけて寒くなる9月~12月あたりです。衣服による体温調整や冷え・のぼせ対策や環境調整をすることで症状を緩和することができます。

 

気象病と自律神経失調症の違いは?

 

  • 気象病

:気圧や気温の変化(寒暖差)、湿度などの気象条件が変化することによって、心身ともにさまざまな不調が出ることを言います。

 

  • 自律神経失調症

:心身の調子を整えている自律神経のはたらきがうまくいかず、交感神経と副交感神経のスイッチングが適切にできなくなります。それによって出るさまざまな不調(倦怠感、首肩こり、頭痛、めまい、動悸、息切れ、低血圧、胃腸障害、不眠、抑うつなど、自律神経症状と言われているもの)が起こることを言います。

これらの不調に関して、必要な検査を行ない原因が特定されない場合に、自律神経失調症の可能性が高くなります。

 

気象病と自律神経失調症は似ている部分も多く、関係が深いです。気象病の症状は多岐にわたり、人それぞれ訴える症状が異なりますが、これは気象病が与える自律神経への影響が大きいためです。気象変化によって不調が起きると自律神経の乱れが起きていますし、逆に自律神経が乱れている方は、気象変化に弱く気象病を発症しやすいです。

 

気象病の方は自律神経を整える工夫を

 

先ほど述べたように、気象病は自律神経との関係が深く、自律神経が乱れている方ほど気象病になりやすいと言えます。自律神経が整っている方は、日常にあるさまざまなストレス(身体・精神・環境など)に耐える受け皿が大きいです。そのため、気圧低下や寒暖差によるストレスが加わったとしても、不調になることなくストレスを乗り越えることができます。しかし自律神経が乱れている方は、はじめから心身ともにストレス耐性が弱くなっている状態です。気象変化に対応するだけのエネルギーが足りず、容量を超えた分だけ不調が出てしまいます。

 

自律神経は日常生活の工夫やセルフケアによって、整えることができるものです。特効薬のようなものはありませんが、自律神経失調症で不調が慢性化してしまった方でも、生活習慣を変えていくことで具合の悪さを少しでも和らげることが可能です。自律神経に関心を持ち、心と身体を大切にする習慣を作っていくことから始めると良いですね。不調は辛いですが、あまり神経質になり過ぎないことがポイントです。

 



書籍「気象病ハンドブック」9月発売に向けて

2022年7月16日 19:23更新
専門外来コラム


今年は空梅雨でしたが、猛暑になったり大気が不安定だったりと、体に負担がかかる天気が続いていますね。

一部SNSでは公開いたしましたが、実は今、2022年9月発売に向けて「気象病ハンドブック」という本の執筆に取り組んでいます。

 

この本は、気象病に悩む方はもちろん、気象の変化でなんとなく調子が上がらない方・雨の日でももっと元気に過ごしたい方など、さまざまな方にとってお役に立つ本となるように力を注いでいるところです。

 

手に取って頂けたら嬉しいですが、その前に、どんな本なのかだけでも知っていただけたらと思います。そこで、今回は「気象病ハンドブック」のご紹介と製作の裏話などを含めてお話させていただきます。

 

  • 「気象病ハンドブック」が気象病のバイブル本となるように…

 「この1冊があれば、気象病のすべてがわかる——」

 

そんな本を目指して、「気象病ハンドブック」というタイトルを付けました。

現在、完成に近づいてきましたが、まさにタイトル通りのものが出来上がっていると思います。

 

最近では、「気象病」や「自律神経」という言葉が以前よりも普及してきたと肌で感じています。気象病専門外来を設立して約 6年になりますが、今まで気象病に悩みながら、周囲に理解されないことにも苦しむ患者さんを多く診てきました。気象病はきちんと原因がある不調ですし、原因があれば対策もあります。「気象病がやっと認知されてきた」という気持ちは大きいです。

 

気象病とは、気象条件の変化(気圧や気温・湿度など)によって起こる心身の不調のことを言

います。最近では気圧を予測するアプリや気圧予報などが多く見られるようになりました。それだけニーズがあるということですね。気象病に特徴的な症状は頭痛や倦怠感・めまいなどですが、症状は本当に人それぞれです。

 

オンライン診察も一般的になり、気象病専門外来も全国から患者さんが診察にいらっしゃいます。しかし、私の診察時間にも限界がありお伝えしきれないことも多くあります。また、「病院に行くのは気が引けるけれど、気象の変化で何となく不調がある」という方などにも気象病との付き合い方やセルフケアをお伝えすることで、多くの方々が天気に左右されることなく元気に過ごせるように、本を書きたいと思いました。

 

  • 気象病のすべてが詰まっています

 私が大切にしているのは、「健康をトータルで考える」ということです。

気象病や自律神経の不調を診察するのに骨格のゆがみに注目してはいますが、人間は他にもさまざまな側面を持っていますよね。身体・心・社会のバランスが整ってこそベストな状態でいられると思います。不調がさまざまであるように、食事や睡眠、運動、メンタル、人との繋がり、社会生活など、その人に必要なアプローチもさまざまです。気象病は気象変化による不調ですが、セルフケアで多方面から補っていくことで症状は改善に向かいますし、うまく付き合っていけるものです。

本書では、私の長年の臨床経験をもとに、気象病の正体・治療・対策まですべてをお伝えし

ています。

 

  • どこから読んでも役立つ本

 本書の構成は、前半が知識編、後半が実践編という構成です。

前半は気象病を知るための基本的な知識や、気象病と関係の深い自律神経についてご紹介しています。診察中のような質問形式になっているので、知りたい部分だけを選んで読むことができます。

後半は、生活の中でできる具体的なセルフケアや、骨格のメンテナンス方法(主に運動療法)についてです。気象病と深く関係している自律神経ですが、その自律神経を整えるための要となるのが、「骨格」です。

パーソナルトレーナーさんにもご協力頂き、より専門的で、他の本にはないセルフケアの内容が詰まっています。

 

  • 初公開のセルフケアが充実しています

 「気象病ハンドブック」の大きな注目ポイントの一つが、いつもお世話になっているトレーナーさんにセルフケア監修をして頂いたことです。何度も言っていますが、私が専門外来で行っている治療で特徴的なのは、パーソナルトレーナーとの協働治療です。

 

気象病は自律神経の脆弱さや乱れが大きく影響しています。自律神経を乱したり、不調の引き金となるのが骨格のゆがみです。たとえば、ストレートネックや反り腰、側弯などがありますが、これらのような骨格の歪みがあると首肩こり・頭痛・めまいなど不定愁訴が起きやすくなります。

 

私は、気象病や自律神経の患者さんの症状を診ていますが、ストレッチなどのセルフケア指導はできても、骨格そのものを治すことは難しいです。

そこで、筋肉・骨格・運動のプロであるパーソナルトレーナーさんの力をお借りして、気象病の方々の治療を行っています。(パーソナルトレーナーによる運動療法や骨格の調整の介入が無くても、投薬や簡単なセルフケアで良くなる患者さんも多くいらっしゃいます)

 

そのトレーナーさんに監修いただき、一緒に本を作ったことで、今まで公開してこなかった具体的なセルフケアが充実しています。個人的には、トレーナーさんのお名前もやっと公開できることがうれしいです。

 

 気象病専門外来の医師として…

この本は私にとって、ターニングポイントとなる一作です。

昨今、気象病が注目され始めていますが、気象病に関する知識とセルフケアがここまで具体的に書かれているものはまだ無いのではないかと思っています。

 

また、医師とパーソナルトレーナーが協働して製作できるのは、現段階の日本ではとても珍しいことです。医療と健康、両者の専門家によるセルフケアなので、気象病に苦しむ方、不調なのに気象病であることにまだ気づいていない方など、さまざまな方のお役に立ってほしいと願っています。

 

 



気象病について-入門編-

2022年6月7日 22:27更新
専門外来コラム


気象病について-入門編-

 

今年は早い時期から気温が上下したり、気圧や湿度が変化したりと、自律神経に負担がかかる日々が続いていますね。私は5年以上前から気象病専門外来や自律神経失調症専門外来を開設していますが、最近ではやっと「気象病」や「自律神経」という言葉が世の中に普及してきたように思います。特に気象病に悩まされている方がとても多く、治療やセルフケアがより多くの患者さんに行き届いてほしいと願うばかりです。

 

梅雨の季節になってきたので、今回は気象病の導入について書いていきます。

 

・気象病とは?

 

▹気象の変化によって起こる不調

 

季節の変わり目や梅雨・台風の時期などに具合の悪くなる方はいませんか?

気象病とは、気圧や気温の変化(寒暖差)、湿度などの気象条件が変化することによって、心身ともにさまざまな不調が出ることを言います。

 

正式な病気として認定されている訳ではないですが、気象病は患者さんの生活に支障をきたしてしまう辛い不調です。重症度は「雨の降る前は何となく不調」という方から、「寝込んでしまって学校や仕事に行けない」という方までさまざまなケースがあります。

 

症状も非常に多岐にわたります。最も多いのは頭痛ですが、全身倦怠感やめまい、首肩こり、起床困難、低血圧、抑うつなど、心身、そして全身にさまざまな不調が出やすいです。

 

▹気象病は自律神経とセットで考える

 

気象病と深く関係しているのは自律神経です。

気圧の変化や寒暖差、湿度の変化などが起こると、自律神経がその変化に合わせて体温調整や身体のコンディションの調節がなされます。そのため、気象変化が激しい時ほど自律神経は酷使されていることになります。

 

何らかの要因で元々自律神経が乱れている方やストレスの多い方などは、気象病にもなりやすいです。逆に、気象病の治療や対策に加えて、自律神経を整えるためのメンテナンスをすると、気象変化に強い体づくりにつながります。

 

・気象病の方は増えています

 

最近では、「自分は気象病なのでは?」と思われている方が多いです。まずはチェックをしてみましょう。

 

▹チェックリスト

 

1 天候が変わるときに体調が悪い

2 雨が降る前や天候が変わる前になんとなく予測ができる

3 頭痛もちである

4 耳鳴りやめまいが起きやすい

5 肩こり・首こりもち

6 姿勢が悪い。猫背・反り腰などがある

7 乗り物酔いをしやすい

8 スマホやパソコンを使用する時間が長い(14時間以上)

9 ストレッチや柔軟をすることが少ない

10 歯の食いしばり、歯ぎしり、歯の治療が多い。顎関節症がある。

11 年中エアコンが効いた環境にいることが多い

12 日常的にストレスの多い生活をしている

13 更年期障害ではないか?と感じることがある(男女ともに)

 

1・2にチェックがつけばほぼ気象病と言って良いでしょう。3~13に3つ以上チェックがついた方は、予備軍と考えて良いです。

 

====

 

▹なぜ気象病が増えているのか?

 

実際に私の気象病専門外来でも、患者さんが増加しています。

 

気象病の方が増えている要因はいくつも考えられますが、ここでは2つ挙げていきます。

1つは、世の中に「気象病」というという言葉や薬などが普及してきたことにあります。気象変化でなんとなく不調を感じていた方が、テレビや雑誌などをきっかけに、ご自身が気象病であることに気づいたケースですね。患者さんとお話していると、「やっとわかってもらえる病院を見つけた」「今までは気のせいと言われて辛かった」などの言葉を聴くことが多いです。隠れている気象病の方はまだまだ多くいらっしゃると感じています。

 

もう1つは、世の中が自律神経の乱れやすい環境になっており、単純に気象変化による自律神経系の不調を訴える方が増えていることにあります。最近ではスマホやパソコンを使用するのは当たり前、情報過多、異常気象などストレスフルな社会となっているように感じます。コロナ禍になって尚、ストレスが増えた方は多いでしょう。

 

スマホなどの長時間の使用は骨格のゆがみを招き、自律神経が乱れやすい体になります。また、脳に負担のかかる生活やストレスの多い日常は、自律神経を弱くしてしまう原因になります。自律神経が乱れていると、気象変化のストレスにも耐えきれずに気象病につながることが多いです。

 

・気象病の症状

 

気象病の症状は、本当にさまざまです。頭痛を訴える方が多いですが、他にも症状がたくさんあります。

 

・頭痛(もともと緊張型頭痛、片頭痛を持っている方は、ともに悪化しやすいです。)

・全身倦怠感

・首こり、肩こり

・めまい

・耳鳴り・耳がこもった感じ

・消化器症状(吐き気・胃痛・下痢・便秘など)

・動悸

・低血圧・血圧の変動

・朝起きられない

・メンタルの不調

・古傷の痛み、関節痛

・神経痛

・咳が出やすい・止まらなくなる(喘息のような症状)

・鼻炎

・冷え性(手足、体幹、体全体)

・手足のしびれ

 

先ほども書きましたが、最も出やすいのは頭痛です。気象病の方の80%以上の方に出ています。次に多いのは、全身倦怠感・だるさ。次に、首肩こり(これは気象に関わらず慢性的に持っている方が多いです)、めまい、朝起きられない、低血圧などです。

 

・気温や湿度も意外と大切

 

気象病専門外来にいらっしゃる患者さんの不調要因は、以下の割合です。

 

気圧:8~9

気温:1~2割

湿度:湿度のみでの来院はほとんどなし

 

気象病は、気圧の変化による不調を訴える方が多いですが、気象条件は他にもあります。気象病の方は「気圧・気温・湿度」の3つをポイントにして生活していくと良いでしょう。

 

気温の変化(寒暖差)は疲労感や頭痛、冷え・のぼせ(体温調節の不良)などを引き起こすことが多いです。また、「湿度が原因で不調が出ます」と言って来院する方は少ないですが、湿度が不調と関係しているのも間違いありません。

湿度を下げると、同じ気温でも体感温度が下がります。そのため、湿度の対策をするだけで身体の熱がこもりにくくなり、自律神経にかかる負担を減らすことができるのです。梅雨や夏場は、睡眠の質の改善に役立ちます。



自律神経のしくみ ⑤ 自律神経と骨格の話

2022年4月25日 23:38更新
専門外来コラム


自律神経と骨格の話

 

私が行う自律神経失調症外来・気象病外来の最大の特徴は「骨格のゆがみと自律神経」に着目した治療です。一見、「背骨のゆがみや姿勢の悪さがそこまで体調と関係あるの?」と思われるかもしれません。私もそう思っていた過去があるのでわかります。しかし、原因のわからない自律神経の不調に悩まれている方こそ、筋肉や骨格のアプローチに可能性があると思いますよ。

 

・自律神経が乱れている人は骨格が歪んでいる

 

私は自律神経失調症外来・気象病外来・頭痛外来などの専門外来を始めて約7年経ちますが、自律神経が乱れている患者さんのほとんどが、背骨の弯曲や歪みがあります。ストレートネックや左右の肩の高さの違い、軽い側弯症、反り腰や平背、骨盤の高さの左右差などがあります。

 

骨格が歪むと、私たちの体にとってさまざまな不都合が生じます。骨格が歪んで姿勢が悪くなっている分だけ別の場所に負荷がかかり、さまざまな場所の筋肉が凝ることになります。たとえばストレートネックは、首が前に出ている分だけ頭の重さが何倍も首にかかることになります。そもそも頭の重さは4~6kgあるため、その倍になるだけで大きな負担です。その影響で首こり・肩こりが進むと、頭痛などの不調が出ます。

 

骨格のゆがみがある方は、頭痛だけでなくめまい・倦怠感・動悸・息苦しさ・胃腸不良・耳鳴り・低血圧など、あらゆる不調を抱えている方が多いです。

 

・骨格や背骨に着目する理由

 

①自律神経には呼吸が大切

 

自律神経にとって最も重要といっても過言ではないのが「呼吸」です。呼吸は無意識にできている方の方が多いと思いますので、命に関わる程苦しくならない限りは、そこまで重要視できないかもしれません。しかし、自律神経の不調を抱えている方こそ呼吸が浅く、うまく酸素や栄養が全身に回っていない方ばかりなんです。

 

呼吸と言えば、肺や胸を想像しますよね。骨格が歪んでいると胸郭が硬くなり、呼吸がしにくく、浅くなります。首や腰が痛い方は、一見首や腰そのものに問題があるのでは?と思う方もいるかもしれませんが、実は胸椎や胸郭の動きに問題がある方が多いです。

 

②脊椎と自律神経の関係

 

自律神経の通り道を知っていますか?

自律神経は、脳と脊髄から始まり、各臓器や器官に分布していく神経です。

 

交感神経系は胸・腰髄から出ますが、副交感神経のルートは脳幹および仙髄から出て、それぞれ各器官に指令がいきます。実は、脳幹から腰髄までのラインは、脊椎(頚椎・胸椎・腰椎・仙椎)のラインと同じです。首・背骨のことですね。

 

骨格が歪んでいると、自律神経の伝達ルートが妨げられてしまいます。まっすぐな道を進むのと、くねくね曲がったり、狭い道があったりすると通りづらいですよね。ちなみに背骨が歪んでいると、脳脊髄液の流れも悪くなってしまいます(自律神経と脳脊髄液も密接な関係があります)。どちらにせよ、自律神経のはたらきが悪くなる原因になってしまうのです。これも、私が骨格や首・背骨に注目している理由です。

 

③背骨の動きと自律神経

先ほども言いましたが、私が重要視しているのが胸椎です。首肩コリ、腰痛などがある方は、実は胸椎や胸郭が固くなって、ほとんど動いていないことが多いです。胸郭の動きを良くするためには、背骨全体の動きを良くすることも大切です。ストレッチやヨガ・ピラティスは背骨を意識できるよい運動だと思います。

 

背骨や胸郭の動きを良くすると、今まで動いていなかった部分のロックが解除されたようになり、血流が良くなったり体の動きが良くなったりします。すると、自律神経をつかさどっている視床下部()に酸素や栄養がより行き渡るので、自律神経のはたらきが良くなります。体の動きが改善すると身体的なストレスが減ることになるので、自律神経の負担も軽減しますよね。

 

④良い姿勢が体にもたらす効果

アメリカのある研究によると、人は姿勢を良くすると、前かがみなどの悪い姿勢よりもストレス耐性が上がると言われています。姿勢をよくして、抗重力筋を刺激することで、脳内にたくさんのセロトニンが分泌され、ストレスを感じにくい状態を作ります。

 

・気象病との関係

 

気象病にも触れておこうと思います。自律神経と気象病はとても深い関係にあります。

 

最近、気象病の認知度が上がってきたこともあり、「気象病は内耳の部分が問題なのでは?」と言われることが多いです。確かに内耳は気象病のメカニズムで重要な要因ですが、内耳だけが悪いというわけではありません。

 

内耳は頭蓋骨の中にあり、頭蓋骨は頚椎とつながっております。頚椎は胸椎と、胸椎は腰椎と、腰椎は骨盤群と下肢と足底までつながっています。人間の体は、骨格で構成されているので、「内耳の場所が体の中心線からどの程度ずれているのか」ということが診断の目安になっています。

内耳が安定しておらず揺れやすい状態にあるということは、より内耳が不安定な状態になりやすいと考えてください。骨格は気象病の方にとっても大切ですね。

 



自律神経のしくみ ④ 自律神経と脳の関わり

2022年4月18日 18:57更新
専門外来コラム


自律神経と脳の関わり

 

脳といえば、人間にとって重要な器官のひとつですよね。自律神経にとっても、脳は深い関わりがあり重要な存在です。

 

脳は神経細胞を通して、心と身体から受け取る情報を管理しています。そして自律神経は、その脳の視床下部という場所によってコントロールされています。

 

自律神経を語るうえで視床下部は大切な存在です。脳の話も少し難しい言葉が多いかもしれませんが、心と身体とのつながりも含めてご説明していきます。

 

  • 脳は心と身体のコントロール役

脳は神経細胞を通して、心と身体の機能を管理しています。

まずは心の機能。私たちは「うれしい」「悲しい」などの感情を「心」という言葉を使って表現しますよね。実は、これらの感情はすべて頭の中で起こっている現象です。脳は場所ごとに、感情や思考、記憶、学習などを担当するエリアに分かれています。心、つまり感情は脳がつかさどる機能の一つに含まれます。

 

一方で身体の機能についてはどうでしょうか?手足を動かすことができたり、心臓が動いていたりするのも、個々で動いているという訳ではありません。脳が神経細胞に指令を送っているおかげで、身体の各臓器や器官がうまくはたらき続けることができます。

 

  • 自律神経は脳の視床下部に支配されている

1視床下部は自律神経系の最高中枢

自律神経は、本人の意思とはかかわりなく内臓や器官に作用しています。ホメオスタシスを保つために、24時間365日休まず体の状態を微調整しているのでしたね(前回のコラム「自律神経とホメオスタシス」より)。

 

自律神経のはたらきは、脳の視床下部という場所によってコントロールされています。「視床下部は自律神経系の最高中枢」と呼ばれているほど。脳の中ではとても小さな部分ですが、人間のホメオスタシスの維持に最も重要な役割を果たしています。

 

2.脳を構成する3パーツ

脳は大きく分けて大脳小脳脳幹の3つのパーツから成り立っています。視床下部は、脳幹(間脳・中脳・橋・延髄)のなかの、さらに間脳(視床・視床下部)という場所の中です。また、の大脳は「大脳新皮質」と「大脳辺縁系」の2つのエリアに分かれています。大脳新皮質はものを知覚・思考・判断するなど、知性をつかさどるはたらき、大脳辺縁系は食欲や性欲、快・不快、怒り・驚きなどの情動をつかさどるはたらきがあります。視床下部はこの大脳辺縁系の影響も強く受けながら、自律神経活動の調整を行っています。

 

  • 自律神経は「本能」に反応する

視床下部は大脳辺縁系などの影響を受けつつ、脳幹や脊髄に作用し、自律神経活動へとつながります。とくに大脳辺縁系からの情報が大きく影響しており、自律神経は本能的な欲求や情動・感情などに反応します。

 

たとえば、急に大きな音がしたとしましょう。この時、大脳辺縁系に「驚き」という感情が生じます。驚きに反応した視床下部は自律神経の交感神経を興奮させ、交感神経は心臓の鼓動を速めたり、血圧を上げたりするのです。

 

  • 自律神経は心の動きにも敏感

1.理性と本能のバランス

私たちは、理性と本能という、相反する感情のバランスをとりながら生きています。理性の部分は大脳新皮質、本能の部分は大脳辺縁系(視床下部も大きく関与)が強く影響を受けているのでしたね。しかし、本能的な喜怒哀楽が生じたときに、理性が強くはたらいて感情を抑制する方が強くなってしまうと、大脳新皮質と大脳辺縁系の間に混乱が生じます。

 

たとえば、「つらい」「苦しい」などの感情を理性で抑制してしまうと、視床下部はうまく情報を受け取ることができません。すると、視床下部は自律神経のコントロールもうまくできなくなってしまうため、自律神経失調症を引き起こすきっかけになるのです。

 

2.ストレスが長期化すると…

本来であれば、「つらい」「苦しい」などの感情が起こると交感神経が反応しますが、しばらくすると副交感神経がはたらいて、安定した状態に戻ります。しかし、ストレス状態が長期間にわたると、交感神経はずっと興奮したままです。副交感神経のスイッチが入りにくくなったり、切り替えがうまくいかなくなったりと、視床下部の自律神経コントロール力が乏しくなっていくと考えられています。

 

  • なるべく「自由」を大切に

私が臨床で自律神経失調症の患者さんを見ていて思うのが、ストレスや感情を抑制しすぎてしまっている方が多いということ。中学生や高校生にもよくみられます。このストレス社会で「本能のままに」というのは少し難しいですが、不調を抱えている方こそなるべく我慢をせず、自由や開放、安心などを大切にして頂けたらと思っています。ストレス発散やリフレッシュ、リラックスが大切と言われているのはこのためでもありますよ。

 

【出典】

・久手堅司監修.面白いほどわかる自律神経の新常識.宝島社.2021

・鈴木郁子編著.やさしい自律神経生理学.中外医学者.2021

・久保木富房監修.専門医が治す!自律神経失調症 ストレスに強い心身をつくる、効果的な療法&日常的なケア

・エレインN.マリーブ.R.N.人間の構造と機能.医学書院

 



自律神経のしくみ③ 自律神経とホメオスタシス

2022年1月23日 17:42更新
専門外来コラム


■自律神経とホメオスタシス

 

ホメオスタシスという言葉をご存じでしょうか?

以前の専門外来コラムでは、「自律神経は内臓や血管などのはたらきを24時間、休まず自動的に調整してくれるシステム」ということでした。実はその調整には、「人間に本来備わっているホメオスタシス(恒常性)」という機能が深く関わっています。

 

ホメオスタシスという言葉は医療用語なので難しいかもしれませんが、一度理解すれば、自律神経のお話も今まで以上に深く学習できると思います。今回は、ホメオスタシスと自律神経の関係についてお話ししていきますね。

 

・人間の体に備わっているホメオスタシス機能

 

まずは「ホメオスタシスとは一体何なのか?」という問題からご説明していきます。

 

・ホメオスタシスの意味

 

ホメオスタシスとは、「外界がたえず変化していたとしても、体内の状態(体温・血液量・血液成分など)を一定に維持できる能力のこと」です。ホメオスタシスという言葉そのものは、「変化しない」という意味を持ちます。しかし人間の場合は、全く変化しないというよりは、ある一定の狭い範囲を変動している平衡状態と捉えてもらった方が良いかもしれません。

 

私たち人間の体は、数十兆個の細胞からなっています。それが一定の営みを続けていられるのは、ホメオスタシスを維持できているおかげです。たとえば私たちの体温は、約36℃程度に保たれています。外が暑い・寒いに関わらず、体温は一定ですよね。

 

ごく当たり前のことのように思われますが、もし体温が高くなった時に「体温を一定に維持しよう」という機能がはたらかないと、体に熱がこもったままになり、脳がうまく機能しなくなってしまいます。「体温が高くなったら、体温を下げるためにはたらこう(発汗など)」というプロセスは、ホメオスタシスを保つために脳にインプットされているはたらきなのです。

 

・ホメオスタシスが崩れるとどうなるか?

 

ホメオスタシスを維持するようなはたらきは、脳にプログラミングされています。とくに、脳の視床下部という部分が自律神経の調整をしているため、ホメオスタシスのはたらきが崩れると、交感神経と副交感神経の切り替えがうまくいかなくなります。

 

先ほど挙げた体温を例にとるなら、体温調節がうまくいかなくなり、冷えやのぼせの症状がでます。日本は寒暖差の激しい時期があるので、体が寒暖差に対応しきれず体調不良を引き起こすことになるのです。

 

・自律神経とホメオスタシスの深い関係

 

自律神経は、ホメオスタシスを維持するために、バランスを取りながら微調整を続けています。私たちを構成している数多くの細胞にお休みはありませんよね。常にホメオスタシスを維持するため、自律神経も24時間365日、休まずオートマティックにはたらいているのです。日中になれば交感神経が優位になり、人間活動を促します。リラックス時、眠前には副交感神経が優位になり、人間に必要な休息をもたらします。

 

寝ている時にも無意識に呼吸が続き、多少の暑さ寒さ・湿度の変化があっても寝続けていられるのは、自律神経がその時々の体の状態に応じて対応しているからです。

私たちの体はとても繊細で、優秀につくられているのです。

 

・不規則な生活が自律神経に良くない訳

・人間は規則正しい生活をするようにできている

 

「自律神経の乱れを治すには、規則正しい生活をしましょう」という言葉をよく耳にしませんか?これは本当です。自律神経は不規則な生活に弱いです。わかりやすい例が睡眠リズム。人間は、朝に起きて夜に寝る、朝に交感神経が優位になり、夜に副交感神経が優位になる、このようにできています。ホメオスタシスを維持するためです。

 

夜勤や交代制勤務で体調を崩す方が多いのは、人間の本来のコンディションに反することをしているからです。副交感神経が優位になるべき時間に無理やり起きていたり、交感神経が優位になるべき時間に眠らなければいけない生活をしていると、体に刻まれているリズムやホメオスタシス機能が混乱を起こします。その結果、自律神経の調節もうまくいかなくなり、さまざまな不調が現れます。

 

・自律神経が弱いと不規則に対応しきれない

 

そもそも自律神経が乱れていると、本来持っている微調整のはたらきも弱くなってしまいます。周囲の環境やストレスの影響をもろに受けることになるのです。自律神経の乱れている方が、体温調整ができずに冷えやのぼせを訴えられていたり、不眠や朝起きられないなどの症状があるのは、自律神経の微調整やスイッチングがうまくいっていない代表的な例です。

 

とすると、自律神経にとって、規則正しい生活をするのは大前提です。「夜寝る前にスマホを触らない方が良いです」と私が言っているのは、スマホを触ることが骨格のゆがみを引き起こすのもありますが、寝る前に脳を興奮させて交感神経が刺激されてしまうためでもあります。自律神経の不調がすでにある方はもちろん、そうでない方も、人間の本来あるべき生活リズムを送るように心がけると、より体調が良くなるかもしれませんね。

 

・参考

・久手堅司監修.面白いほどわかる自律神経の新常識.宝島社.2021

・鈴木郁子編著.やさしい自律神経生理学.中外医学者.2021

・久保木富房監修.専門医が治す!自律神経失調症 ストレスに強い心身をつくる、効果的な療法&日常的なケア

・エレインN.マリーブ.R.N.人間の構造と機能.医学書院

 



自律神経のしくみ②:交感神経と副交感神経

2022年1月11日 20:53更新
専門外来コラム


自律神経のしくみ:交感神経と副交感神経

 

こんにちは。前回の専門外来コラム「自律神経のしくみ」では、自律神経はそもそも何なのか?という点に注目して書きました。

 

自律神経は、内臓や血管などのはたらきを24時間、休まず自動的に調整してくれるシステムです。その自動的なシステムは、交感神経と副交感神経がバランスよくはたらくことによって成り立ちます。

 

今回は、交感神経と副交感神経のふしぎについて書いていきます。

 

  • 自律神経は2種類で構成されるー交感神経と副交感神経ー

 

自律神経は、交感神経と副交感神経がバランスよくはたらくことで機能しています。

 

どんなに暑くても寒くても、私たちの体温が36℃~37℃の範囲で一定に保たれていますよね。このように、体内の環境は、ある一定の範囲の状態に保てるようにつくられています。これを恒常性(ホメオスタシス)と言います。

 

自律神経はこの恒常性を保つために必須のシステムです。

交感神経はアクセル、副交感神経はブレーキ。お互いがシーソーのようにバランスを取りながらはたらくことによって、体の状態を良いコンディションに保っています。

 

交感神経と副交感神経は24時間365日はたらいています。どちらか一方だけのスイッチが入っている訳ではありません。そのため、交感神経のはたらきが強いときは「交感神経が優位」、副交感神経の方が強くはたらいているときは「副交感神経が優位」と表現します。

 

  • 交感神経のはたらき

 

交感神経の役割

 

交感神経は、体と心が「興奮モード」のときに優位にはたらきます。たとえば、運動をしているときは心臓の鼓動が速くなったり血圧が上がったりしますよね。それ以外にも以下のようなはたらきがあります。

 

・脳血管を収縮させる

・瞳孔の拡大、涙の分泌を抑制する

・唾液が出づらくさせる

・気管支を拡張させる

・心拍数を増やす

・消化を抑制する

・排便・排尿を抑制する

・(暑い時など)汗を分泌して体温を下げる

・(寒い時など)鳥肌を立てて熱を発生させる

・末梢血管を収縮させる

 

交感神経が優位なときに出やすい症状

 

・頭痛(緊張性頭痛)

・眩しさ、目が乾く

・口が乾く

・動悸、息苦しさ

・便秘、下痢

・胃痛、腹痛

・体温調節がしづらい(熱がこもる)

・過緊張、首肩こり

 

交感神経が過度に優位になると、アクセル全開になりすぎるため不調につながります。慢性的にストレスがかかっていると、交感神経を優位にしてがんばるしかありません。その代償に、首肩こりや頭痛、動悸など、上記の症状が発生します。

 

交感神経のスイッチが入るタイミングは?

 

・日中

・興奮したとき

・驚いた時

・ストレスを強く感じたとき

・緊張したとき

・不安を感じているとき

・危険を感じたとき

 

私たちは人間活動をするために、本来は日中に交感神経のスイッチが入るようにできています。日常生活はストレスで溢れていますよね。交感神経は悪いものではありませんが、私たちの生活の中には交感神経のスイッチが入れる要素がたくさん潜んでいることを、頭の片隅に入れておきましょう。

 

  • 副交感神経のはたらき

 

副交感神経の役割

 

副交感神経は、体と心が「お休みモード」のときに優位にはたらきます。リラックスしているとき、体の力が抜けて脈がゆっくりになるのはこのためです。その他にも、副交感神経は「消化」のときに優位にはたらきます。心地よい環境でゆっくり食べた方が消化に良いのは副交感神経のおかげです。

 

・脳血管を拡張させる

・瞳孔を収縮させる

・サラッとした唾液を出す

・気管支を収縮させる

・心拍数を減らす

・消化を促進する

・排便・排尿を促進する

 

副交感神経が優位なときに出やすい症状

 

副交感神経はリラックスの印象が強いので「体に良いもの」と思われがちですが、副交感神経のはたらきが強すぎたり、適切なタイミングではたらかなかったりすると、不調の原因になります。

 

・頭痛(片頭痛)

・涙が出る

・徐脈(脈が遅くなりすぎる)

・だるさ・朝起きられない

 

副交感神経のスイッチの入るタイミングは?

 

・眠っているとき

・リラックスしているとき

・食後にゆっくりしているとき

・癒しを感じたとき

 

夜になると眠くなるのは、副交感神経のスイッチが入るようにできているからです。「規則正しい生活をしましょう」とよく言われますが、これは「人間に備わっている自律神経のリズムを乱さない生活」という意味になります。夜勤や当直、昼夜逆転の生活が体によくないのはこのためです。

 

  • 大切なのは交感神経・副交感神経のバランス

 

交感神経・副交感神経の2つはどちらがいいという訳ではなく、両方がオン・オフになり、状況に応じてバランスよく切り替わる状態が理想的です。

 

日中、学校の授業や仕事に集中したい時には交感神経が優位になって「興奮モード」にならなければ活動ができません。夜、ぐっすり休んで疲れを取るためには「お休みモード」になることが必須ですよね。

 

しかし、ストレスがかかって慢性的に緊張状態になると、夜も「興奮モード」がはたらいてしまいうまく休むことができません。これが積み重なると、自律神経のバランスが乱れてスイッチの切り替えが上手くいかず、不調につながるのです。

 

  • 自律神経のはたらくルートと脊椎(背骨)の位置

 

交感神経と副交感神経では、体内の通るルートが違うのを知っていますか?

交感神経は脊髄の外側から出たあと、お腹側を回り、体の各器官に分布していきます。

 

それに対して、副交感神経は、脳の下部(首のあたりです)にある中脳・橋・延髄から出て体の各器官に分布するルートと、脊髄の下部にある(腰のあたりです)骨盤神経から腸や膀胱・生殖器に向かうルートがあります。

 

「緊張すると胃がキリキリする、お腹が痛くなる」

「首や腰を温めてほぐすとリラックスする」

 

このようなシーンを想像すると、自律神経のはたらくルートと背骨や内臓の位置は何かつながりがあるのかもしれませんね。私は外来に来る患者さんにピラティス(背骨の動きを重視している運動です)をおススメしているのですが、「眠れるようになった」「胃腸の調子がよくなった(機能性ディスペプシアが改善した)」という方が多くいらっしゃいます。

 

≪参考≫

・久手堅司著.最高のパフォーマンスを引き出す自律神経の整え方.クロスメディアパブリッシング.2018

・久手堅司監修.面白いほどわかる自律神経の新常識.宝島社.2021

・鈴木郁子編著.やさしい自律神経生理学.中外医学者.2021

 



2 / 512345

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

Blogメニュー


▶Blogトップ

アーカイブ