2025・9 気象病が女性に多い理由は?―自律神経や女性ホルモンとの関係―



2025・9 気象病が女性に多い理由は?―自律神経や女性ホルモンとの関係―

2025年9月3日 06:44更新
専門外来コラム


2025・9

気象病が女性に多い理由は?―自律神経や女性ホルモンとの関係―

 

9月になり、台風や秋雨前線の影響で再び気象病が気になる季節になりました。気象病とは、気象変化によってさまざまな体調不良が起こることを言います。気象病の症状を訴える人は女性が多いですが、当院を受診される患者さんの中では、女性は7~8割を占めています。気象病が女性に多いのは、女性ならではのさまざまな特徴が関係しています。たとえば、女性ホルモン、貧血、低血圧、筋肉量・骨格、冷え性・むくみなどです。また、特にホルモンや筋骨格の要素は自律神経の乱れにも大きく関わっており、自律神経が乱れていると気象病も起こりやすくなります。

 

  • 気象病と自律神経の深い関係

気象病と自律神経は密接な関係にあります。気圧低下や寒暖差などの気象変化が起きると、それに体を適応させるために自律神経が反応して乱れるためです。たとえば、気圧が下がった時、内耳にあるセンサーが気圧の低下を感じ取り、その情報が自律神経の中枢に届きます。気圧低下という変化に対して微調整を行うために交感神経・副交感神経のバランスが乱れ、不調につながります。そのため、気象病の症状と自律神経の不調の症状は似通っているところがあります。そして、自律神経が乱れている人は気象病になりやすいです。

 

  • なぜ気象病は女性に多いのか?

[女性ホルモンの影響]

女性には月経周期ごとにホルモンバランスの大きな変動があります。女性ホルモンにはエストロゲンとプロゲステロンの2種があり、自律神経にも影響を及ぼします。特に排卵後から生理前はプロゲステロンが増えて、副交感神経が優位になりやすく、だるさや眠さなどが出やすくなります。一方で、ホルモン低下期には不安・イライラなどの心の不調が出やすくなります。このように、生理周期や更年期などでホルモンバランスが乱れると、自律神経も乱れやすくなります。自律神経は気象変化にも敏感であるため、自律神経が乱れていると、気象病の症状がより出やすくなります。

 

[筋肉量が少なく冷えやすい]

女性は筋肉量が少ないため、体の熱を産生する量が少ないです。そして血流が悪くなりやすいため女性は体が冷えやすく、自律神経の乱れを助長します。冷えると特に交感神経の緊張を招き、血行不良、頭痛、肩こり、不眠などの症状が出やすいです。また、寒暖差疲労になると、体が感じる大きな温度差に体温調整が追いつかず、冷えの症状が出る場合が多くあります。その影響で気温や湿度の変化で冷えが悪化し、不調の悪循環に陥りやすいです。

 

[片頭痛の有病率が高い]

片頭痛はもともと女性に多く、数でいうと男性の約3倍と言われています。片頭痛は気圧や天気の変化に影響を受けるため、天候が悪くなったり季節の変わり目になったりすると片頭痛が悪化しやすいです。気象病で最も訴えが多い症状が頭痛ですので、気圧の変化などで頭痛は起こりやすく、気象病に女性が多い一因ともなっています。

 

[ライフイベントによるストレスや変化が多い]

妊娠・出産、育児、更年期など、女性はライフイベントによって生活スタイルやホルモンの変化が大きいです。これに伴い、心身のバランスも崩れやすく、自律神経が安定しにくい傾向があります。自律神経が苦手としているのが「変化」です。そのため、様々な変化が重なると自律神経が乱れ、気象病が発症しやすい状況ができあがります。

 

  • 女性特有の気象病症状

[月経痛・PMS(月経前症候群)・更年期症状の悪化]

女性ホルモンと自律神経には深い関係があるため、女性のホルモンバランスに大きな変化が訪れる月経前後や更年期に気象変化が重なると、症状が重くなることがあります。実際、PMSの症状を持つ女性の3人に1人が天候の変化で症状が酷くなると言われており、頭痛、倦怠感、腹痛・気分の落ち込み・イライラ・不眠などのPMS症状が天気の変化と連動して強くなることがあります。そして更年期の女性は、ホルモンの急激な変化で自律神経が乱れやすく、その状態で気象の影響を受けるとのぼせ・ほてり・めまい・倦怠感などが悪化しやいです。

 

[冷え性やむくみ]

女性は元々冷えやすい体質にありますが、低気圧が訪れると体に水分を溜めこみやすくなるため、血行が悪化し、冷えやすくなります。低気圧の状態は、飛行機に乗るのと似たような状況です。飛行機でポテトチップスの袋が膨らむ現象があるように、私たちの体も大気圧が変化することによって膨らみ、むくみとして現れます。

 

[メンタルの不調(気分の落ち込み、涙もろさなど)]

気象病による自律神経の乱れで、うつや不安感、情緒不安定などメンタル面での不調が起こることがあります。特に雨の日や曇天が続くと、幸せホルモンと呼ばれるセロトニンの分泌が減りやすいため、精神的に沈みやすい状況です。気圧が下がるのと同時に、不可抗力で気持ちの急降下が起こる人も少なくありません。「気圧のせい」だと自覚ができると少しは気持ちが楽になるでしょう。

 

  • 女性の心と身体のバランスを整える運動

[ヨガ・ピラティス・背骨リセット]

背骨は自律神経の通り道であり、背骨を意識して動かすこの3つの運動は自律神経を整える効果があります。ゆっくりとした深い呼吸をすることで、ストレスを軽減したり、不安の解消、睡眠の質の向上などが期待できます。また、血流が良くなるため、PMSや月経痛の緩和にも役に立つでしょう。ピラティスや背骨リセットは体幹の筋力を強化する効果もあり、筋肉量が少なく冷えやすい女性の健康全般の健康面のサポートになります。

 

[ウォーキング(特に朝の散歩)]

ウォーキングは無理なく手軽に続けやすい運動の代表例です。外に出て太陽光を浴びるとセロトニンが分泌され、うつ傾向を予防し気分が向上します。有酸素運動は「心の鎮静剤」ともいわれており、メンタル面の底上げになるでしょう。

 

[ダンス・エクササイズ(ズンバ・バレエなど)]

音楽と一緒に体を動かすことで、ドーパミンやエンドルフィンといった快感系のホルモンが分泌されるため、気分転換・ストレス解消にぴったりの運動です。自分を表現することが自信や解放感にもつながります。

 

 





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