2025・6 気象病による頭痛の特徴とその対策
2025年6月10日 21:39更新
専門外来コラム
2025・6 気象病による頭痛の特徴とその対策
気温とともに湿度も上がり、梅雨の蒸し暑さを感じる日が増えてきました。5月から7月にかけての時期は、気象病の患者さんが増えていきます。気象病というのは、気圧や気温、湿度の変化により引き起こされる心身の不調のことです。正式な病名ではありませんが、「気象病」はここ数年でかなり身近な言葉になってきていると感じています。気象病は気のせいという訳でも、心の病気でもありません。しかし、検査で明らかな原因がわからないため、周囲の人からは理解されづらく、悩まれている方も多いでしょう。気象病は女性に多く、頭痛を訴える方が圧倒的に多いです。今回は、気象病による頭痛の特徴と対策についてご紹介します。
- 初夏から梅雨は気象病患者が最も多いシーズン
5月から7月の時期は、春から夏への移行時期、そして梅雨が始まります。最近は涼しくなったり暑くなったりと、気温の変化が激しいですよね。気圧の上下・気温の上昇・湿度の上昇が重なると、自律神経に負担がかかり体調を崩しやすくなります。この時期は、気温が上昇していくと同時に湿度も上がります。湿度が体感温度に与える影響は大きく、早い段階から想像以上の蒸し暑さを感じるようになります。
自律神経は私たちの体の体温調節を行っていますが、蒸し暑さにより汗が蒸発しづらい状況が続くと、熱がこもって頭痛や気分不快などの症状が出やすくなります。体温調整するために、すでに自律神経に負担がかかっている中、さらに気圧の上下がプラスされると、その負荷に耐えられず症状が出たり強く出たりします。
- 気象病で起こる2種類の頭痛
気象病の症状は様々ですが、8割以上の人が頭痛を訴えます。気象病で起こる頭痛は命には関わりません(一次性頭痛に分類されます)が、痛みによって生活に支障が出るため、辛い症状です。気圧の上下で頭痛が出る人、気圧の上下をきっかけに片頭痛の発作が起こる、緊張性頭痛が悪化する人などがいます。
[片頭痛]
片頭痛は、頭の片端もしくは両端がズキズキと強く痛むのが特徴です。緊張から解放されたとき、寒暖差、気圧変動など、なんらかの刺激によって脳の血管が拡張し、それが神経を刺激して痛みとして発生します。特に片頭痛が起こりやすいのは気温が急上昇したときと、気圧が下がった時です。気温の上昇、気圧の低下とともに副交感神経が優位に働き、血管が拡張して片頭痛が起こりやすくなります。寒暖差と気圧の上下が重なる季節は、常に頭痛に悩まされるという方もいます。
[緊張性頭痛]
緊張性頭痛は、全体的に頭を締め付けられているような鈍い痛みが出るのが特徴です。片頭痛とは異なり、左右差はありません。緊張性頭痛が起きるのは、気温が下がって身体が緊張した時や、気圧の変化でストレスを感じて交感神経が優位になった時です。身体が緊張したり交感神経が優位になると、首・肩の筋肉も収縮して首肩こりを引き起こし、それが頭に派生して頭痛になります。緊張性頭痛に悩まされている人は多く、患者さんからのニーズは高くありますが、片頭痛ほどは注目されていないため、薬の選択肢が増えないのも特徴です。
- 頭痛が起きた時の応急処置
[片頭痛]
片頭痛が起きた時は、とにかく刺激の少ない環境で横になって休むことをお勧めします。動いたり、お風呂などの血流が良くなることをしたりすると、ズキズキとした痛みの元になりますのでご注意ください。頭頂部やこめかみなどを氷枕で冷やすと症状が和らぐことがあります。首まで冷やしてしまうと全身が冷えて緊張してしまいますので気をつけましょう。
[緊張性頭痛]
緊張性頭痛の締め付けられているような痛みは、筋肉の過緊張によるものです。そのため、血行を良くしたり、心身の緊張を緩めたりすると頭痛を和らげることができます。首肩こりが関係していることが多いので、お風呂に首まで浸かり、ストレッチをしてみましょう。片頭痛は温めると悪化しますが、緊張性頭痛の場合は、温めて筋肉をほぐした方が効果があります。頭痛によって対処法が異なるためお気を付けください。
- 気象病は女性に多い
気象病に悩む方は、圧倒的に女性が多いです。実は気象病は、女性ホルモンと関係しています。月経周期や更年期などのホルモンの変化に伴い、気象関連の負荷がプラスされると、不調が起こりやすくなります。たとえば、生理前に片頭痛の症状が出やすい方は、気象病でも頭痛が頻発することがあります。女性ホルモンであるエストロゲンやプロゲステロンが分泌されるには、脳にある視床下部という部分が関与しています。視床下部は自律神経の中枢でもあるため、気象病と女性ホルモン、自律神経は互いに切っても切れない関係なのです。不調の症状の種類も似ています。
- 頭痛の予防と改善のポイントは「首肩こり」
頭痛もち、気象病の方に共通しているのは、酷い首肩こりです。頭痛薬で痛みのコントロールをするのも1つの方法ですが、薬だけに頼らず、首肩こり対策をすることも重要です。私の外来では、セルフケアなどにより首肩こりが軽くなった患者さんは、薬の量も減っていきます。中には薬が全く要らないまでに頭痛が改善する方もいます。それほど首肩こりのセルフケアには意味があります。首肩こりが起こりやすい生活習慣の改善、ストレッチや背骨を動かす運動など、できることから実践してみてください。
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