12月 不調とストレッチの効果について



12月 不調とストレッチの効果について

2024年12月9日 07:24更新
専門外来コラム


12月 不調とストレッチの効果について

 

ストレッチは私たちの健康や日常に欠かせない運動のひとつです。私たちの体は何もしなければ、大人になるにつれてどんどん硬くなったり歪んだりしていきます。そもそも人体の構造は不安定にできており、その状態で長時間のデスクワークや身体に負担がかかる生活を強いられています。「日本人は働きすぎ」と言われていますし、心身のメンテナンスをする時間を取るのが難しい人ばかりのようにも思います。

私は、体のメンテナンスの第一歩がストレッチと考えています。実は、ストレッチは、ただ筋肉を伸ばすだけではありません。今回の記事を読んで、今までストレッチをする習慣が無い人は少しでもストレッチを日常に取り入れられるように、すでに習慣づけられている人は今まで以上に意味のあるストレッチができるようになって頂けると幸いです。

 

  • ストレッチの効果

ストレッチを継続して習慣化することによる効果は実にさまざまです。筋肉の緊張の緩和や可動域の拡大、凝りの解消など、身体的な機能を改善する効果もあれば、リラックスなどの精神面での効果、そして、ケガの予防・疲れにくい体づくりなどの健康増進の効果もあります。

 

身体の凝りの正体は主に筋肉の血行不良と酸素不足です。特定の筋肉の使い過ぎや誤った身体の使い方・姿勢、運動不足などの影響で筋肉が硬くなります。ストレッチをして痛みを感じる方は筋肉がこわばって硬くなり、血行が悪くなっています。

 

筋肉の過度な緊張を改善すると血流が良くなるので、酸素や栄養が行き届きやすくなります。筋肉に十分な酸素や栄養が巡るようになると、硬くなった筋肉に弾力が出てくるので動きもなめらかになっていきます。身体の可動域が広がると「体が軽くなった」「疲れにくくなった」と感じるようになり、不調の解消や予防につながります。ストレッチは身体だけでなくメンタル面にも効果もあります。ゆっくり呼吸をしながらストレッチに集中すると、自分の感情の乱れを落ち着かせることができるでしょう。

 

  • 2種類のストレッチ

[静的ストレッチ]

一般的に、ストレッチといったら静的ストレッチを思い浮かべる方が多いでしょう。ストレッチしたい筋肉をゆっくり少しずつ伸ばす動きをします。静的ストレッチは主に、運動に不慣れな方や不調が強い方などに向いています。

 

[動的ストレッチ]

ただ伸ばすのではなく、動きを伴うストレッチです。動きが加わることでほぐしたい筋肉の血流を促し、筋肉の温度が上がります。たとえば肩こりがある方は、伸びたまま固まっているケースが多いです。極端に筋肉が硬くなっている場合を除きますが、軽い首肩こりには動的ストレッチが適しています。首まわし、肩まわしなどを思い浮かべるとわかりやすいでしょう。首が細くて長い女性は首まわりの筋力不足によって伸びたまま凝り固まってしまっている代表例です。

 

  • せたがや内科で推奨しているストレッチ

不調の引きがねとなりやすいのが首肩こりです。首肩こりは、首肩周りの筋肉に過剰な負担がかかることによって起こります。原因は、使い過ぎ、筋力不足、姿勢不良など人によって様々ですが、首肩まわりの筋肉が凝り固まって酸素不足の状態になると、首とつながっている脳にも十分な酸素が回りません。頭のまわりも筋肉で覆われているので、首肩こりから派生して緊張性頭痛の原因にもなります。せたがや内科では、まずは全身の骨格・筋肉のバランスや凝りの具合を評価した後、首肩を中心とした凝りをほぐして、筋肉の酸素不足を解消するところから始めます。患者さんの状態によって内容は変わりますが、状態に応じて処方や指導をさせて頂いています。

 

  • ストレッチ中は呼吸を止めないことがポイントです

短距離走や重い荷物を持ちあげるとき、私たちは無意識のうちに呼吸を止めています。その理由は、息を止めないと筋肉は最大のパワーを出せないからです。逆に、筋肉を最大に緩めてストレッチの効果を出すためには、呼吸を止めないことが重要なポイントになります。呼吸によって筋肉に酸素が行き渡ると、心身ともに緊張もほぐれます。体調が優れない方は根っこの原因が何であれ、ストレス過多の状態です。体の酸素不足はストレスや不眠の一因でもあるので、呼吸がうまくできること、呼吸を意識する習慣をつけることは体調を快方に導くために大切です。呼吸には自律神経の乱れを改善する効果もあります。

 

  • ストレッチが習慣化できたら全身のメンテナンスを

せたがや内科の自律神経失調症・首肩こり・気象病専門外来では、体調が悪く、やっとのことで仕事や生活をされている患者さんが多いです。そのため、最初は応急処置として呼吸法やストレッチを最優先で実践していただいています。しかし、不調をより根本から治していきたい場合はストレッチだけでは足りません。緩める場所は凝りをほぐし、強化するべき場所は鍛えたりして、全身を整えていくことが大切です。パーソナルトレーナー賀来大樹さんとの共著書「不調がデフォな私たちの“背骨リセット”」に書いてあるように、ストレッチだけではなく背骨を中心として全身のメンテナンスに目を向けていきましょう。自律神経の機能の向上、不調の改善、全体的なパフォーマンスの底上げなどにつながっていきます。

 

≪参考≫

・「ストレッチングアナトミィ―ドラヴィエの図解と実践―」著フレデリック・ドラヴィエ、ジャン=ピエール・クレマンソー、マイケル・グンネル.2021.8.ガイアブックス

・「背骨リセット」著久手堅司・賀来大樹.2024.10.主婦と生活者





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