自律神経と骨格①背骨のつくり 



自律神経と骨格①背骨のつくり 

2024年5月10日 17:22更新
専門外来コラム


自律神経と骨格①背骨のつくり 

 

自律神経失調症外来や気象病外来、頭痛外来など、せたがや内科・神経内科クリニックの専門外来では、骨格のゆがみや背骨に着目して治療を行っています。自律神経が大きく乱れている患者さんや不定愁訴(原因がわからない体調不良)を抱えている方は、骨格のゆがみが目立つ方が多いです。骨格は、誰しも多少は歪んでいるものなのですが、ゆがみが強くなり体のバランスが大きく乱れていくと、頭痛やめまいなどさまざまな不調を引き起こす原因となります。骨格において特に重要なのは背骨です。背骨は骨格を構成するうえで軸となり、重要な存在です。しかし、私たちが生活している中で、背骨を意識する機会は中々多くはないのではないかと思っています。今回のコラムでは骨格と背骨について書いていきましょう。

 

  • 骨格の話

人間の体は200コ以上の骨でできています。骨格というのは、体にとって大切な土台です。骨は体を支えており、骨格を成すことによって複雑な動きを可能にしています。

骨格は軸骨格と付属肢骨格の2つに大別されています。軸骨格は頭蓋骨、背骨、肋骨、胸骨から成っており、体の中心を通る軸を作っています。一方で、付属肢骨格は四肢(両腕・両足・鎖骨・肩甲骨・骨盤など)で構成されており、軸骨格に四肢がくっついているようなイメージです。それらの中でも背骨は、軸骨格の主要な動きを作る重要な存在です

 

おまけになりますが、骨格系には、体を支える(支持)、動かす(運動)だけではなく、保護、貯蔵、造血という役割もあります。保護は頭蓋骨や胸郭に当てはまり、脳や内臓などを守っています。貯蔵というのは、骨の中はカルシウムやリン酸、マグネシウムなどを蓄えて血液の中の成分を調整しています。さらに、造血は骨髄に該当します。骨髄では赤血球や白血球・血小板などの血液が造られています。

 

  • 背骨のつくり

みなさんは、背骨と言ったらどこを想像するでしょうか?背中のあたりをイメージされるかもしれませんが、正確に位置を認識している人の方が少ないかもしれません。背骨は首から胸、腰、そしてお尻の部分まで繋がっています。

背骨というのは、医学・解剖学的に言うと「脊椎」という表現をします。首のあたりになるのが脊椎、胸のあたりが胸椎、背中・腰あたりが腰椎、その下が仙椎と言います。背骨は”1という呼び方をしますが、まっすぐ1本につながっているという訳ではありません。臼のような形をした小さい骨(椎骨)が縦に連なって構成されています。小さな骨と骨との間には椎間板というクッションの役割をしたものが挟まれています。一般的によく言う椎間板ヘルニアは、このクッション約の椎間板が飛び出てしまっている状態です。

 

背骨は頚椎、胸椎、腰椎、仙骨・尾骨が連なってできています。頚椎が7コ、胸椎が12コ、腰椎が5コ、仙骨(仙椎5コ)が1コ、尾骨が1コです。人間を横から見るとS字状のカーブを描くように重なっています。頚椎と腰椎は前にカーブ、それ以外の部位は後ろにカーブしてバランスを取っています。首の始まりの第一頚椎は鼻の奥あたり、背骨の一番下にある尾骨はお尻の割れ目の上のあたりです。意外と縦に長いですよね。

 

  • 背骨の役割

背骨は骨格の中心にあり、姿勢をつくるうえでも軸となります。「骨格がゆがむ」とは、背骨がS字状に標準的なカーブを描いた状態から、カーブが強くなる、カーブが弱くなる、前から見て横方向に歪む(側弯と言います)など、正常なカーブを描かなくなることです。そもそも背骨がS字にカーブを描いているのは、頭や内臓を支え、体が動いた時の衝撃を吸収するためです。人間の体には、重力がかかっています。頭の重さは5~6kg、その重さを背骨1本で支えなければいけないため、背骨が弯曲することによって体のバランスを保っています。

 

皆さんは「背骨の動き」を意識したことがあるでしょうか?赤ちゃんの動きを想像してみてください。人間は、赤ん坊の段階では背骨の柔軟性が高く、動きもしなやかです。背中が丸まったり反ったりしても、大人と違って痛みやケガが出にくいでしょう。しかし、年齢を重ねるようになると圧倒的に増えるのが、座っている時間です。学校や会社に通うようになると、うつむき姿勢や背中が丸まった状態で何時間も作業をするというような状況が容易に想像できますよね。このように悪い姿勢でいる時間が長くなると、骨格が歪んで姿勢が悪くなるだけではなく、その姿勢が癖になって固まってしまうので、背骨の動きもどんどん悪くなっていきます。運動の習慣が無い人は、前屈や後屈、側屈などの軽い伸びをするだけでも、体の動かしづらさを感じるでしょう。背骨が本来持っている役割も発揮しきれず、アンバランスになっていきます。

 

  • 骨格が歪んでいる患者さんの特徴

自律神経失調症や気象病、その他原因不明の不定愁訴などを抱えている患者さんは、背骨がゆがんでいるケースが大半です。診察をしていて特徴的なのが、首肩こりが酷いのにも関わらずその自覚が無いということ。自分ではそこまで酷いとは思っていないため、セルフケアができていない方が多いです。そして、立って目を閉じて頂くと、フラフラで立っていられないほどのこともあります。普段は目で補正をしているのですが、骨格がゆがんで左右差があると体のバランスを取るのが難しくなっているのです。これがめまいの原因にもなります。骨格が歪んでいると、さまざまな不調を引き起こすため、背骨のケアはとても大切です。

 





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