第3回 朝起きられない中高生、受診の目安は?
2026年9月27日 21:19更新
専門外来コラム
朝起きられない中高生、受診の目安は?
― 起立性調節障害を見逃さないために ―
「何度起こしても朝起きられない」
「学校がある日になると頭痛や吐き気を訴える」
「午前中はぐったりしているのに、夕方になると元気になる」
中学生・高校生のお子さんにこのような変化がみられると、保護者の方は心配になると思います。
特に夏休み明けは生活リズムが変化しやすく、朝起きられない、学校へ行けないといった相談が増える時期です。
単なる寝不足や夜更かしの場合もありますが、症状が続くときには、背景に起立性調節障害(Orthostatic Dysregulation:OD)などの病気が隠れている可能性があります。
では、どのくらい症状が続いたら医療機関を受診したほうがよいのでしょうか。
今回は「朝起きられない中高生」をテーマに、受診を考える目安についてお話しします。
「朝起きられない=夜更かし」とは限りません
思春期になると、睡眠のリズムは少しずつ変化します。勉強や部活動、塾などで帰宅時間が遅くなり、さらにスマートフォンやゲームなどによって就寝時間が遅くなることもあります。
そのため、まずは睡眠時間が十分に確保できているかを確認することが大切です。
しかし、「早く寝ても朝起きられない」「起き上がろうとするとめまいがする」「朝になると頭痛や吐き気が強くなる」といった症状がある場合、睡眠時間だけの問題ではない可能性があります。
その代表的なものが起立性調節障害です。
起立性調節障害では、なぜ起きられない?
私たちが横になった状態から立ち上がると、重力によって血液が下半身へ移動します。
通常は自律神経がすぐに反応し、血管を収縮させたり心拍数を調節したりすることで、血圧や脳への血流を保ちます。ところが起立性調節障害では、この調節がうまく働かないことがあります。
その結果、めまい・立ちくらみ、頭痛、動悸、吐き気、倦怠感、顔色が悪い、食欲がない、集中できないなどの症状が現れます。
特に朝から午前中に症状が強く、午後から夕方にかけて少しずつ改善することが多いのも特徴です。
こんな症状があれば、一度受診を
「何日休んだら受診する」という明確な基準があるわけではありません。しかし、次のような状態が繰り返されている場合には、一度医療機関への相談をおすすめします。
① 朝起きられない状態が続いている
数日程度の寝不足であれば、生活リズムを戻すことで改善することもあります。一方、十分に睡眠をとっているにもかかわらず朝起きられない状態が続く場合には、身体的な原因を確認してみる必要があります。
② 起き上がるとめまい・立ちくらみがする
ベッドから起きたときや椅子から立ち上がったときに、ふらつく、目の前が暗くなるといった症状を繰り返す場合は注意が必要です。
③ 朝に頭痛や吐き気が強い
起立性調節障害では頭痛を伴うことがあります。また、思春期には片頭痛も比較的多くみられるため、頭痛が学校生活に影響している場合には、一度診察を受けることをおすすめします。
④ 動悸や息苦しさを感じる
立ち上がったときに心拍数が大きく増加し、動悸や息苦しさを感じるタイプもあります。「立っているだけでつらい」「長時間立っていられない」という訴えも重要なサインです。
⑤ 遅刻・欠席が増えている
体調不良による遅刻や欠席が増え始めた段階で相談することも大切です。欠席が長期化すると、「勉強についていけない」「友達に会いにくい」など、新たな不安が加わってしまうことがあります。
午後に元気でも「仮病」とは限りません
保護者の方が特に戸惑うのが、「朝は学校に行けないほどつらそうだったのに、夕方にはゲームをしている」という状況ではないでしょうか。
しかし、起立性調節障害では午前中に症状が強く、午後になると改善することがあります。朝に本当につらかったとしても、夕方には普通に話せたり、食事ができたりすることは十分にあります。
午後に元気だからといって、朝の症状が「仮病だった」と判断することはできません。むしろ、こうした時間帯による体調の変化は診断を考えるうえで重要な情報になります。
受診するときには、「何時頃が一番つらいのか」「午後になるとどう変化するのか」も医師に伝えてください。
朝起きられない原因はODだけではありません
ここも非常に大切です。「中高生で朝起きられない」という症状が、すべて起立性調節障害というわけではありません。
例えば、貧血、甲状腺の病気、睡眠障害、感染症などの身体疾患が原因となっていることがあります。また、片頭痛によって朝から動けないケースもあります。
さらに学校生活、人間関係、受験、家庭環境などによる心理的ストレスが睡眠や自律神経に影響していることもあります。
そのため、最初から「起立性調節障害だ」と決めつけるのではなく、他の病気が隠れていないかを確認することが重要です。
受診前に記録しておくと役立つことが、
診察では、「朝起きられない」という情報だけでなく、一日の中で体調がどのように変化するかがとても参考になります。
可能であれば数日間、「何時に寝たか」「何時に起きたか」「朝食を食べられたか」「頭痛やめまいがあったか」「学校へ行けたか」「何時頃から元気になったか」などを簡単に記録してみてください。
毎日細かく記録する必要はありません。スマートフォンのメモなどでも十分です。
「午前10時まではほとんど動けないけれど、午後2時頃から元気になる」といった具体的な情報があると、診察の際に役立ちます。
ご家庭でできること
症状が軽い場合でも、生活の中でできる対策があります。まず大切なのは、十分な水分を摂ることです。暑い時期には汗によって水分が失われやすいため、特に注意しましょう。
医師から指導がある場合には、塩分摂取についても調整します。
また、起床・就寝時間を大きくずらさない、朝起きたらカーテンを開けて光を浴びる、朝食をできる範囲で摂る、急に立ち上がらない、日中に無理のない範囲で身体を動かす、昼寝を長時間しすぎない、といった工夫も大切です。
ただし、症状が強いときに無理やり運動させたり、無理に登校させたりすることが必ずしも良いとは限りません。その日の体調に合わせて少しずつ生活リズムを整えていきましょう。
「学校に行けるか」だけを判断基準にしない
起立性調節障害の診療では、「学校に行けた・行けなかった」だけで状態を評価しないことも重要です。
例えば、以前は朝まったく起きられなかった子が10時には起きられるようになった。朝食が少し食べられるようになった。午後から短時間だけ登校できるようになった。こうした変化も大切な改善のサインです。
症状が続いていると、本人も保護者の方も焦ってしまいます。しかし、回復には時間がかかる場合もあります。
小さな改善を積み重ねながら、身体のリズムを取り戻していくことが大切です。
早めの相談が、悪循環を防ぐことにつながります
朝起きられない状態が続くと、「体調が悪い → 学校を休む → 生活リズムがさらに乱れる → 学校へ行きづらくなる → 不安やストレスが増える → さらに体調が悪化する」という悪循環に入ることがあります。
そのため、「もう少し様子を見よう」と長期間我慢するよりも、日常生活や学校生活に影響が出始めた段階で相談することが大切です。
朝起きられないことは、必ずしも「本人の努力不足」ではありません。身体から発せられているサインの可能性があります。
お子さんが「朝起きられない」「立つとつらい」「頭が痛くて学校へ行けない」と訴えている場合には、その言葉に耳を傾け、必要に応じて医療機関へ相談してみてください。
せたがや内科・神経内科クリニックでは、起立性調節障害をはじめ、頭痛、めまい、不眠など、自律神経に関連するさまざまな症状について診療を行っています。
「受診したほうがよいのかわからない」という段階でも、症状が続いている場合にはご相談ください。
9月なのに疲れが抜けない?長雨で起こる「多雨疲労」とは
2026年9月11日 23:44更新
専門外来コラム
9月なのに疲れが抜けない?長雨で起こる「多雨疲労」とは
9月になって暑さが少し落ち着いてきたのに、
「なぜか疲れが抜けない」、「雨の日は体がだるい」、「朝起きるのがつらい」
「頭痛やめまいが増えた」、「台風が近づくと体調が悪くなる」
と感じていませんか?
9月は夏の疲れが残っているだけでなく、秋雨前線や台風による長雨、気圧の変化、寒暖差、高い湿度などが重なる季節です。
こうした気象変化は、私たちの自律神経や睡眠、体温調節などに影響し、疲労感や頭痛、めまい、眠気など、さまざまな体調不良につながることがあります。
今回は、長雨が続く時期にみられるこうした不調である「多雨疲労(たうひろう)」について解説します。
※「多雨疲労」は正式な医学的診断名ではありません。
「夏バテなら夏に起こるのでは?」と思うかもしれません。
実は9月は、身体にとって負担の大きい季節です。
真夏の間、私たちの身体は猛暑や高湿度にさらされます。さらに、屋外の暑さと冷房の効いた室内との温度差にも繰り返し対応しています。
この調整に大きく関わっているのが自律神経です。
そして9月になると、今度は秋雨前線や台風によって天候が変わりやすくなります。
気圧が下がる、湿度が上がる、気温が急に下がる、翌日は再び暑くなる――。
つまり9月は、
夏の疲労 + 長雨 + 気圧変化 + 寒暖差 + 高湿度
という複数の負担が重なりやすい時期なのです。
「夏が終わったのに体調が戻らない」という方は、夏バテが残っているだけではなく、秋の気象変化への対応で身体が疲れている可能性も考えてみましょう。
長雨による「多雨疲労」でみられる症状
雨の日が続く時期には、次のような症状がみられることがあります。
・体がだるい、疲れが取れない
・朝なかなか起きられない
・日中に眠気が強い
・頭痛、頭重感
・めまい、ふらつき
・耳が詰まったように感じる
・首こり、肩こり
・体がむくむ
・食欲がない、胃が重い
・動悸がする
・集中力が続かない
・気分がすっきりしない
これらは一見すると別々の症状に見えますが、その背景に自律神経の働きや気象変化への反応が関係している場合があります。
特に、もともと片頭痛や気象病、めまいなどがある方は、天候の変化に伴って症状が悪化することがあります。
雨が続くと体調が悪くなる4つの理由
① 気圧の変化と「内耳」
気象病を考えるうえで重要なのが、耳の奥にある内耳です。
内耳には、音を聞く働きだけでなく、身体の傾きや動きなどを感じ取り、バランスを保つ働きがあります。さらに、気圧変化を感知する仕組みに内耳が関与している可能性も研究されています。
台風や低気圧が近づいて気圧が変化すると、その刺激が内耳などを介して脳へ伝わり、自律神経系に影響すると考えられています。
気象変化に敏感な方では、その結果として、頭痛、めまい、倦怠感、眠気、動悸
などが現れることがあります。
患者さんから、
「天気予報を見る前に、頭痛で雨が分かります」
「台風が近づいてくると体調が悪くなります」
という話を聞くことがあります。
重要なのは、雨が降っている瞬間だけが問題とは限らないということです。
雨が降る前の気圧低下や、雨が止んで気圧が戻るときなど、気圧が変化するタイミングで症状が出る方もいます。
② 高湿度で体温調節に負担がかかる
長雨では、気圧だけでなく湿度も重要です。
私たちの身体は、汗をかき、その汗が蒸発するときに熱を逃がすことで体温を調節しています。
ところが湿度が高い環境では、汗が蒸発しにくくなります。
すると身体に熱がこもりやすくなり、体温調節への負担が増えます。
9月は真夏ほど気温が高くない日でも、湿度が高いことがあります。
そのため、
「それほど暑くないのに体が重い」
「少し動いただけで疲れる」
「なんとなく一日中だるい」
という症状につながることがあります。
③ 日照不足で睡眠・覚醒リズムが乱れる
長雨が続くと、太陽の光を浴びる時間も少なくなります。
朝の光は、私たちの体内時計を調整する大切な刺激です。
朝に光を浴びることで身体は「朝になった」と認識し、睡眠と覚醒のリズムを整えていきます。
しかし、雨や曇りの日が続き、さらに外出する機会も減ると、朝の光を十分に浴びにくくなります。
その結果、
「朝起きられない」
「昼間なのに眠い」
「夕方から元気になる」
「夜になってもなかなか眠れない」
といった生活リズムの乱れにつながることがあります。
特に、雨の日に起床時間が遅くなってしまう方は注意が必要です。
④ 雨で活動量が減ってしまう
雨の日には外出する機会が減ります。
買い物をやめる、散歩をしない、家で一日過ごす――。
こうした日が何日も続けば、自然と歩数や運動量が低下します。
身体活動が少なくなると、睡眠の質や血流などにも影響し、疲労感がさらに抜けにくくなることがあります。
「疲れているから動かない → 夜よく眠れない → 翌日さらに疲れる」
という悪循環にならないよう注意しましょう。
「気象病」「多雨疲労」は何が違う?
「雨で体調が悪くなる」と聞くと、気象病という言葉を思い浮かべる方も多いでしょう。
気象病は、気圧や気温、湿度などの気象変化に伴って体調が悪化する状態を広く表現するときに使われています。
一方、本記事でいう「多雨疲労」は、
長雨が続く
↓
気圧・湿度・日照・気温などが変化する
↓
自律神経、睡眠、体温調節などへの負担が重なる
↓
疲労、眠気、頭痛、めまいなどが続く
という、長雨による全身的な不調をイメージしています。
ポイントは、「一日の雨」ではなく「雨が何日も続くこと」です。
小さな負担が重なることで、徐々に疲れが抜けにくくなることがあります。当院では、
今日からできる「多雨疲労」対策5つ
1.雨の日でも朝の光を浴びる
起きたらまずカーテンを開けましょう。
曇りや雨の日でも、屋外の光は室内照明より明るいことが多く、体内時計を整える刺激になります。
可能であれば、窓際で朝食を食べたり、短時間でも外へ出たりするのもよいでしょう。
2.休日でも起床時間を大きく変えない
「雨だから今日は昼まで寝よう」
これを繰り返すと、睡眠リズムがさらに乱れてしまうことがあります。
疲れているときこそ睡眠時間を確保することは大切ですが、起床時間を大幅に遅らせないことも意識しましょう。
3.室内でも軽く体を動かす
外出できない日は、ストレッチや軽い筋力トレーニングなどでも構いません。
長時間座り続けず、1時間に一度は立ち上がるなど、こまめに身体を動かしましょう。
4.エアコンや除湿器を上手に使う
9月だからといって、エアコンを我慢する必要はありません。
気温だけではなく湿度にも注意して、除湿機能などを上手に利用しましょう。
5.天気と自分の症状を記録する
気象病では、自分がどの気象変化に弱いのかを知ることも大切です。
例えば、
「雨が降る前日に頭痛がする」
「台風が近づくとめまいがする」
「雨が3日以上続くと朝起きられなくなる」
など、人によってパターンは異なります。
天気と体調を簡単に記録しておくと、自分自身の傾向を把握し、早めに対策を取れるようになります。
「雨のせい」と決めつけないことも大切
一方で、注意していただきたいことがあります。
疲労感、頭痛、めまい、動悸、強い眠気などは、気象変化以外のさまざまな病気でも起こります。
「雨の日だから仕方がない」
「自律神経が乱れているだけだろう」
と自己判断してしまうと、別の病気を見逃してしまう可能性があります。
特に、
症状が長期間続いている
日常生活や仕事・学校に支障が出ている
頭痛やめまいが以前より強くなっている
動悸や息苦しさを繰り返す
これまで経験したことのない強い症状がある
といった場合には、一度医療機関へ相談することをおすすめします。
9月の疲れは「休むだけ」では改善しないこともあります
疲れていると、「とにかく長く寝れば治る」と考えがちです。
もちろん、十分な休息と睡眠は大切です。
しかし、長雨に伴う体調不良では、長時間寝ているだけでは生活リズムが乱れ、かえって疲労感が抜けにくくなることもあります。
大切なのは、
朝は決まった時間に起きる
↓
朝の光を浴びる
↓
日中は適度に身体を動かす
↓
夜に自然と眠くなる
というリズムを維持することです。
9月は、夏の暑さを乗り切った身体に、秋雨や台風、気圧変化、寒暖差などが次々と加わる季節です。
「夏が終わったのに、なぜか疲れが抜けない」
そんなときは、単なる夏バテだけではなく、長雨による気象変化への対応で身体が疲れている可能性も考えてみてください。
雨の日が続く季節だからこそ、朝の光、睡眠、適度な運動、湿度管理など、毎日の生活リズムを意識することが大切です。
そして、頭痛やめまい、強い倦怠感などが続く場合には、我慢せず医療機関へ相談してください。
当院では、頭痛、めまい、倦怠感、自律神経の不調など、気象変化に伴って悪化するさまざまな症状について診療しています。
「雨が降るといつも体調が悪くなる」
「台風が近づくと頭痛やめまいが出る」
「検査では異常がないと言われたけれど、体調不良が続いている」
といった症状でお困りの方は、ご相談ください。
夏休みに増える学生の体調不良 夏休みに入り、学生さんの体調不良が増えています
2026年8月23日 06:50更新
専門外来コラム
夏休みに増える学生の体調不良
― 起立性調節障害・不眠と自律神経の関係 ―
夏休みに入り、学生さんの体調不良が増えています
夏休みに入り、せたがや内科・神経内科クリニックでは、中学生・高校生・大学生など、学生さんの体調不良についてのご相談が増えています。
特に多いのが、「朝なかなか起きられない」「立ち上がるとめまい・立ちくらみがする」「頭痛や吐き気がある」「身体がだるく疲れやすい」「夜になっても眠れない」「昼夜逆転してしまった」といった症状です。
学校がある時期には、登校時間に合わせて起床し、日中は授業や部活動などで活動し、夜になると眠るという一定の生活リズムがあります。しかし夏休みに入ると、朝早く起きる必要がなくなり、夜更かしや朝寝坊が増えやすくなります。
さらに、夏の暑さによる外出や運動量の減少、長時間のスマートフォンやゲーム、冷房の効いた室内で過ごす時間の増加などが重なると、睡眠と覚醒のリズムが乱れ、自律神経にも影響を与えることがあります。
「朝起きられない」は、怠けとは限りません
学生さんの「朝起きられない」という症状で注意したい病気の一つが、起立性調節障害(OD:Orthostatic Dysregulation)です。
私たちの身体は、横になった状態から立ち上がると、重力によって血液が下半身に移動します。通常は自律神経が素早く働き、血管を収縮させたり心拍数を調節したりすることで、血圧や脳への血流を維持しています。
起立性調節障害では、この調節がうまくいかず、立ち上がった時にめまい、立ちくらみ、動悸、頭痛、吐き気、倦怠感などが現れることがあります。
特徴の一つとして、朝から午前中に症状が強く、午後から夕方になると比較的元気になる場合があります。そのため、ご家族から見ると「夜は元気なのに、なぜ朝だけ起きられないのだろう」「夏休みだから怠けているのではないか」と感じてしまうこともあります。
しかし、本人は起きようとしても身体が思うように動かないことがあります。気持ちや意欲だけの問題と決めつけず、身体的な原因がないかを確認することが大切です。
夏休みは不眠や昼夜逆転にも注意
夏休みの学生さんでは、不眠や睡眠リズムの乱れについてのご相談も増えます。
夜更かしをして朝遅くまで眠る生活が続くと、体内時計が徐々に後ろへずれていきます。「夜眠れない→朝起きられない→昼近くまで寝る→日中の活動量が減る→さらに夜眠れない」という悪循環になってしまうこともあります。
また、起立性調節障害などの自律神経症状がある学生さんでは、もともと朝に調子が悪いため起床時間が遅くなり、それによって夜の入眠時間も遅くなるという悪循環が生じることがあります。
睡眠不足や睡眠リズムの乱れは、眠気だけでなく、頭痛、倦怠感、集中力の低下、イライラ、食欲の変化など、さまざまな身体・精神症状につながります。夏休み明けに急に元の生活に戻そうとしても難しいことがあるため、早めに生活リズムを見直すことが重要です。
夏休みに意識したい5つのポイント
まず大切なのは、起床時刻を大きくずらさないことです。休日だからといって昼近くまで眠る生活が続くと、夜の睡眠にも影響します。
朝起きたらカーテンを開け、できるだけ朝の光を浴びましょう。朝の光は体内時計を整える重要な刺激になります。
朝食をとることも生活リズムを整えるきっかけになります。朝に食欲がない場合は、無理のない量から始めてみましょう。
また、夏は発汗によって水分を失いやすいため、こまめな水分摂取も大切です。脱水状態になると、立ちくらみや頭痛、倦怠感などが悪化することがあります。
そして、夜のスマートフォンやゲームの使い方も見直してみましょう。就寝直前まで強い光を浴びたり、刺激の強いコンテンツを見続けたりすることは、入眠を妨げる原因になります。
夏休みは体調を立て直すチャンスでもあります
「夏休みに入ったら朝起きられなくなった」「昼夜逆転してしまった」「立ちくらみや頭痛が増えた」「夜眠れない」「夏休み明けに学校へ戻れるか心配」といった状態が続いている場合には、単なる生活習慣の問題と考えず、起立性調節障害や睡眠障害などが隠れていないか、一度確認することをおすすめします。
症状によっては、貧血、甲状腺疾患など、ほかの身体疾患との鑑別が必要になることもあります。また、頭痛やめまい、不眠など複数の症状が重なっているケースも少なくありません。
夏休みの終盤になってから、急いで生活リズムを元に戻そうとしても、身体がなかなかついていかないことがあります。夏休みは生活リズムが崩れやすい時期である一方、学校生活に追われず、現在の体調や睡眠、自律神経の状態を見直すことのできる時期でもあります。
せたがや内科・神経内科クリニックでは、起立性調節障害をはじめ、頭痛、めまい、動悸、倦怠感、不眠など、学生さんにみられるさまざまな体調不良についてご相談いただけます。
「朝起きられないけれど、どこに相談したらよいかわからない」「検査を受けた方がよいのかわからない」という段階でも構いません。
夏休み明けを少しでも良い状態で迎えられるよう、症状が続いている場合には、早めに身体の状態と生活リズムを確認していきましょう。
片頭痛とは?症状・診断基準から最新の治療薬までわかりやすく解説
2026年8月15日 08:15更新
専門外来コラム
片頭痛とは?症状・診断基準から最新の治療薬までわかりやすく解説
「頭がズキズキする」「頭痛がすると寝込んでしまう」「光や音がつらくなる」
このような症状が繰り返し起こる場合、**片頭痛(偏頭痛)**の可能性があります。
片頭痛は単なる「頭痛持ち」ではなく、日常生活や仕事、学校生活にも大きな影響を及ぼす神経疾患です。一方で、近年は治療が大きく進歩しており、従来の鎮痛薬やトリプタンに加えて、CGRP関連抗体薬などの新しい予防治療も選択できるようになりました。
今回は、片頭痛の症状、診断基準、治療薬、予防薬、そしてCGRP関連抗体薬について解説します。
当院の頭痛専門外来では、緊張型頭痛と片頭痛の方が多く、特に片頭痛の中は、痛みの回数、痛みの程度で悩んでいる方が多いです。
片頭痛の主な症状
片頭痛という名前から「頭の片側だけが痛む病気」と思われがちですが、必ずしも片側だけとは限りません。
典型的には、
- ズキンズキン、ドクンドクンと脈打つような痛み
- 頭の片側、または両側の痛み
- 中等度~強い頭痛
- 歩いたり階段を上ったりすると痛みが強くなる
- 吐き気、嘔吐
- 光がまぶしく感じる
- 音がうるさく感じる
などがみられます。
頭痛発作は、治療しなければ一般的に4~72時間持続します。
また、頭痛が始まる前から「あくびが増える」「眠気がある」「首や肩がこる」「集中しにくい」などの症状を感じる方もいます。
「前兆のある片頭痛」とは?
片頭痛の患者さんの一部では、頭痛の前に「前兆(オーラ)」と呼ばれる神経症状が現れます。
代表的なのが視覚症状です。
視野にキラキラ・ギザギザした光が見え、それが徐々に広がっていく**閃輝暗点(せんきあんてん)**がよく知られています。
そのほか、
- 手や顔のしびれ
- 言葉が出にくい
- 視野の一部が見えにくい
などがみられることがあります。
典型的な前兆は徐々に出現し、それぞれの症状は通常5~60分程度続きます。
片頭痛の診断基準
国際頭痛分類第3版(ICHD-3)では、「前兆のない片頭痛」について、以下のような診断基準が示されています。
① これまでに5回以上、同様の頭痛発作がある
② 頭痛が4~72時間続く
③ 次の4項目のうち2つ以上がある
- 頭の片側が痛む
- ズキンズキンと脈打つように痛む
- 中等度~重度の痛み
- 歩行や階段昇降など、日常的な動作で悪化する
④ 頭痛の最中に、次のどちらかがある
これらを総合的に判断して診断します。
ただし、頭痛には脳血管障害など別の病気が隠れていることもあります。診断基準に当てはまるからといって、自己判断だけで「片頭痛」と決めつけないことも重要です。
片頭痛の治療は「発作時」と「予防」の2本柱
片頭痛の治療は、大きく分けると、
① 頭痛が起きたときの急性期治療
② 頭痛そのものを起こりにくくする予防治療
の2つがあります。
頭痛の頻度や強さ、仕事や学校への影響などを考えながら、一人ひとりに合った治療を選択します。
片頭痛が起きたときに使う薬
1.鎮痛薬・NSAIDs
比較的軽い片頭痛では、アセトアミノフェンやNSAIDsなどを使用します。
ただし、鎮痛薬を頻繁に使用しすぎると、かえって頭痛が慢性化する**「薬剤の使用過多による頭痛(MOH)」**につながることがあります。
「頭痛薬を飲む日が増えてきた」という場合には、一度頭痛外来などで相談することをおすすめします。
2.トリプタン
トリプタンは、片頭痛発作に対して使用する代表的な治療薬です。
片頭痛に関係するセロトニン受容体に作用し、頭痛や吐き気、光・音過敏などを改善します。
一般的な鎮痛薬では十分に改善しない中等度~重度の片頭痛などで使用します。
3.ラスミジタン
ラスミジタンは、比較的新しい片頭痛急性期治療薬です。
トリプタンとは異なり、5-HT1F受容体に選択的に作用します。
血管収縮作用を持たないことが特徴の一つですが、めまいや眠気などが出ることがあるため、服用後の自動車運転などには注意が必要です。
片頭痛の「予防薬」とは?
片頭痛が頻繁に起こる場合や、発作によって仕事・学校・家事などに大きな支障が出ている場合には、発作が起きたときの治療だけではなく、予防治療を検討します。
従来から使用されている予防薬には、
- ロメリジンなどのカルシウム拮抗薬(当院では2番目に使用する回数が多い、予防薬です)
- プロプラノロールなどのβ遮断薬(当院では3か4番目に使用する回数が多い、予防薬です)
- バルプロ酸などの抗てんかん薬(当院では一番使用する回数が多い、予防薬です)
- アミトリプチリンなどの抗うつ薬(当院では3か4番目に使用する回数が多い、予防薬です)
- 漢方薬を使用する場合もあります。
などがあります。
患者さんの年齢、持病、妊娠の可能性、頭痛の特徴などを考慮しながら薬を選択します。
CGRP関連抗体薬とは?
近年、片頭痛治療で大きな進歩となったのが、CGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)に関連する治療薬です。
CGRPは、三叉神経などから放出され、片頭痛の発症に重要な役割を果たしている物質です。
このCGRPそのもの、あるいはCGRPが作用する受容体をブロックすることで、片頭痛発作を起こりにくくします。
現在、日本で使用されているCGRP関連抗体薬には、
ガルカネズマブ(エムガルティ®)
CGRPそのものに結合する抗体薬です。
フレマネズマブ(アジョビ®)
こちらもCGRPそのものに結合する抗体薬です。
エレヌマブ(アイモビーグ®)
CGRPそのものではなく、CGRP受容体に作用する抗体薬です。
いずれも注射による片頭痛の予防治療です。
従来の予防薬とは異なり、片頭痛の病態に深く関わるCGRPを標的として開発されたことが大きな特徴です。
この3種類が出たことで、片頭痛治療は劇的に変わりました。当院では、適応のある片頭痛患者さんで、これらの注射で効果が出なかったことはありません。1-2回注射では、頭痛の回数、程度ともに優位に減少しています。問題点としては、効果が4週間ということになるます(人により多少前後します)。金額も1回の注射で3割負担で12000円程度はします。皮下注射を行うので、注射場所に痛みが出やすく、かゆみがでることがあります。
CGRP関連抗体薬はどのような方に向いている?
例えば、
- 片頭痛の回数が多い
- 頭痛のため仕事や学校を休んでしまう
- 頭痛があると寝込んでしまう
- 従来の予防薬では十分な効果が得られない
- 副作用などで従来の予防薬を続けにくい
といった場合には、CGRP関連抗体薬を検討することがあります。
実際に使用できるかどうかは、頭痛の頻度、これまでの治療歴などを確認したうえで判断します。
さらに新しい治療薬「ゲパント」も登場
片頭痛治療は現在も進歩しています。
2025~2026年には日本でも、CGRPの働きを抑える**CGRP受容体拮抗薬(ゲパント)**が使用できるようになりました。
代表的なものとして、
リメゲパント(ナルティーク®)予防薬として使用するときは、2日に1回1錠の服用です。片頭痛発作時には1回1錠を出来るだけ早く服用します。患者さんに説明するときに、間違いやすいので。慣れるまでは、予防薬として初めはしようしてもらうようにしています。
片頭痛発作が起きたときの急性期治療と、片頭痛の発症抑制の両方に使用されます。金額は3割負担の方で月15回服用して、約13000円位程度します。
アトゲパント(アクイプタ®)予防薬として毎日1回4服用して、片頭痛を予防します。
片頭痛の発症抑制を目的として使用されます。金額は3割負担の方で月30回服用して、約13000円位程度します。
これらはCGRP関連抗体薬とは異なり、内服薬であることも特徴です。内服薬の予防薬では、今まであった薬とは違い、効果は非常に出やすいです。
片頭痛治療は、従来の「痛くなったら鎮痛薬を飲む」という治療から、片頭痛のメカニズムを標的とした治療へ大きく変化しています。
「頭痛だから仕方ない」と我慢しないことが大切です
片頭痛は、外見からはつらさが分かりにくいため、「頭痛くらいで……」と思われてしまうことがあります。
しかし、片頭痛は仕事、勉強、家事、育児など日常生活に大きな影響を及ぼす疾患です。
また、「市販の頭痛薬を飲めば何とかなる」と長期間自己治療を続けていると、薬剤の使用過多による頭痛を併発している場合もあります。
- 頭痛を繰り返している
- 頭痛で仕事や学校に支障が出ている
- 市販薬を飲む回数が増えている
- 頭痛が以前より増えてきた
- 吐き気や光・音過敏を伴う
- 自分の頭痛が片頭痛なのかわからない
このような場合は、一度医療機関で相談してみてください。
片頭痛は、正しく診断し、一人ひとりに合った治療を選択することで、日常生活への影響を大きく減らせる可能性があります。
※本記事は一般的な医学情報を提供することを目的としたものです。実際の診断や治療、薬剤の選択については、患者さんの症状や既往歴などによって異なります。医師にご相談ください。当院では、頭痛の症例件数が多く、患者さんにあった治療の選択肢を使用して、患者さんの納得される結果が出ています。
対面診療、オンライン診療としておりますので、一度ご相談されて下さい。
参考:国際頭痛分類第3版(ICHD-3)、日本頭痛学会「頭痛の診療ガイドライン2021」
冷房病・エアコン病・寒暖差疲労
2026年7月9日 21:25更新
専門外来コラム
梅雨明け・猛暑日に増える「冷房病(エアコン病)」「寒暖差疲労」にご注意ください
梅雨が明けました(もしくは梅雨明け直前)。
本格的な夏が始まりました。2026年の梅雨は比較的涼しい日が多かったですね。
一転して7月9日以降は、全国で30℃以上の暑さになりました。
一方で室内や電車、職場では冷房がしっかり効いているという環境が続いています。
「最近なんとなくだるい」
「冷房の部屋にいると体が冷える」「寒気がする」
「首や肩がガチガチにこる」
「立ちくらみやめまいが増えた」
「メンタル的な不調が増えた」
「寝ても疲れが取れない」
そんな症状はありませんか?
実はこの時期、多くの方が悩まされるのが冷房病・エアコン病・寒暖差疲労です。
夏バテと思っていた症状が、実は冷房による体への負担だったというケースも少なくありません。
今回は冷房病・寒暖差疲労について詳しくご紹介します。
冷房病(エアコン病)とは?
冷房病(エアコン病)は正式な保険病名ではありません。そのため、あまり聞きなれない言葉かもしれません。
しかし、当院では、気象病・天気病外来を設置したあと、夏場に不調になっている方が多く見られました。
冷房で冷えて不調になっていると判明したので、「冷房病・クーラー病外来」を設置しました。
その後、寒暖差による不調が年間を通じて起こっていることから、「寒暖差疲労外来」に変更となりました。
冷房の効いた室内と暑い屋外を何度も行き来することで、自律神経が疲れてしまい、様々な体調不良が起こる状態を指します。人間の体は体温を一定に保つために、自律神経が血管を広げたり縮めたりして体温調節をしています。
・室外は35℃前後
・室内は24~28℃前後
というような7℃以上の寒暖差を何度も繰り返すと、自律神経は休む暇がありません。
その結果、自律神経の働きが乱れ、様々な症状が現れます。
「寒暖差疲労」とは?
最近よく耳にする「寒暖差疲労」。
これは一日の中で大きな気温差が続くことで、自律神経が疲弊して様々な不調が出ている状態です。
寒暖差疲労を訴える方は、梅雨明けから猛暑日が続くこの時期は、特に症状が出やすくなります。
その理由として、
①気温が上がる(最低気温と最高気温が高い)、②湿度が上がる、③エアコンを使用しないと厳しい環境
ためです。
・炎天下
・冷房の効いたオフィス
・スーパー
・電車
・自宅
と寒暖差のある場所を何度も移動します。
自律神経は常に体温調節を行っているため、知らないうちに疲れが蓄積してしまいます。
冷房病・寒暖差疲労でよくみられる症状
このような症状はありませんか?
・冷え
・だるさ
・倦怠感
・めまい
・首こり
・肩こり
・頭痛
・疲れが取れない
・手足の冷え
・寝ても疲れが抜けない
・食欲低下
・胃腸の不調
特に女性は筋肉量が少ないため、冷えの影響を受けやすい傾向があります。
また、自律神経の乱れは睡眠の質にも影響し、疲れがさらに蓄積してしまう悪循環になることもあります。
なぜ首こり・肩こりが悪化するのでしょうか?
冷房で体が冷えると血管が収縮し、筋肉への血流が悪くなります。
・首こり
・肩こり
・背中の張り
・腰のはり、痛み
などが起こりやすくなります。
デスクワークで同じ姿勢が続く場合は、さらに症状が強くなることがあります。
首や肩の筋肉が硬くなると、緊張型頭痛やめまいの原因になることもあります。
めまいや立ちくらみも自律神経が関係することがあります
「暑いから熱中症かな?」
と思っていても、実際には自律神経の乱れによるめまいで受診される方も少なくありません。
冷房病では、
・血圧の調節
・血流の調節
にも影響が出るため、
立ちくらみ
ふわふわするめまい
疲れると悪化するめまい
などがみられることがあります。
もちろん、めまいには耳の病気や脳の病気など様々な原因があります。
症状が続く場合には自己判断せず、医療機関への相談をおすすめします。
今日からできる予防法:
①冷房の温度を下げすぎない:室温は26~28℃を目安にしましょう。直接冷風が体に当たり続ける環境も避けましょう。
②一枚羽織る:カーディガンや薄手の上着を一枚持ち歩くだけでも、首や肩の冷えを防ぐことができます。
女性だけでなく男性にもおすすめです。
③温かい飲み物も取り入れる:暑い日は冷たい飲み物ばかりになりがちですが、一日に何回か温かいお茶やスープを飲むことで体を内側から温めることができます。
④軽い運動:ウォーキングやストレッチは血流改善に効果があります。長時間同じ姿勢を続けないよう心掛けましょう。
⑤十分な睡眠:自律神経を整えるためには睡眠がとても大切です。夜更かしが続くと疲労が蓄積し、冷房病の症状も悪化しやすくなります。
⑥胃腸を整える:胃腸と脳・自律神経は連動しています。脳腸相関・胃脳相関と言われています。胃腸を内部から整えることがポイントです。発酵食品や食物繊維を取ることで整えやすくなります。
「夏だから仕方ない」と我慢しないでください。
毎年この時期になると、「夏バテだと思っていた」、「年齢のせいだと思っていた」「メンタルが原因と思っていた」「自律神経が乱れているからだと思っていた」、という患者さんが多く来院されます。
しかし、冷房や寒暖差疲労による自律神経の乱れが原因となっていることも少なくありません。
何かしらの不調がある方は、この記事を参考にして頂けたらと思います。
気象病について
2026年6月25日 20:54更新
専門外来コラム
「雨の日になると体調が悪い…」それは気象病かもしれません
「雨が降る前になると頭が痛い」
「台風が近づくと体がだるい」
「家族には理解されないけれど、自分だけ天気が分かる」
このような経験はありませんか?
実はこのような症状は『気象病・天気病』などと呼ばれ、多くの方が悩んでいます。最近ではテレビや新聞でも取り上げられることが増え、注目されている症状です。当院では2016年9月から気象病・天気病外来を開設しています。
今回は気象病について解説します。
気象病とは?
気象病とは、気圧・湿度・気温などの天候変化によって体調が悪化する状態の総称です。
正式な病名ではありません。
曇りの日、 雨の日、台風発生、台風接近、梅雨、季節の変わり目
などで症状が出やすくなります。
気象病セルフチェック(いつも伝えているチェックリストとは少し異なるバージョンです)
次の項目に当てはまるものはありますか?
①雨が降る前に頭痛が起こる、天気が悪くなる前に体調で分かる
②台風前になると体が重い
③曇りの日はやる気が出ない
④首や肩がいつもより凝る
⑤めまいが起きる
⑥関節が痛くなる
⑦古傷が痛む
⑧「今日は雨が降る」と身体が教えてくれる
⑨天気が崩れると、気持ちが沈んだり、不安になったりする。
⑩血圧が低く、立ちあがる時に不調が出やすい。
2つ以上該当する方は、気象病の可能性があります。
こんな症状はありませんか?気象病では実に様々な症状が現れます。
代表的な症状は
・片頭痛
・緊張型頭痛
頭痛は8割前後の方が訴えます。
・全身の倦怠感、だるさ
これは7割前後の方が訴えます。
・首こり/肩こり
・めまい
・動悸
・血圧が上下する(下がる場合が多い)
・関節痛
・古傷の痛み
・耳鳴り、耳がこもる
・吐き気
・不眠、過眠などの睡眠の乱れ
・集中力低下
・胃腸の不調(胃痛、腹痛、便秘、下痢、食欲不振)
・鼻炎、アレルギー症状
・気管支喘息、咳喘息
・不安
・うつ症状
・感情の起伏が強くなる
など様々です。
症状の出かたは、人それぞれです。
なぜ天気で体調が悪くなるの?
最も関係していると考えられているのが気圧の変化です。(気温差、湿度の話は、今回はなしです)耳の奥には身体のバランスを感じる「内耳」という器官があります。この内耳は非常に気圧の変化に敏感です。
気圧が変化すると内耳が刺激され、自律神経が乱れやすくなります。
すると
・血管が拡張する
・血流が変化する
・筋肉が緊張する
・痛みを感じやすくなる
などが起こり、さまざまな症状が出現します。
「私は天気予報より当たる」は本当?
診察する際に、よく聞く言葉があります。
「私、天気予報より先に分かるんです。」
実はこれは珍しいことではありません。
気圧は雨が降る何時間も前から下がり始めています。
そのため、身体が先に反応している可能性があります。
「今日は頭が痛い」
と思っていたら、数時間後に雨が降るということも少なくありません。
気象病になりやすい人
次のような方は気象病になりやすい傾向があります。
・女性(当院では7~8割が女性です)
・片頭痛がある
・自律神経が乱れやすい
・睡眠不足
・ストレスが多い
・デスクワーク中心
・スマホやタブレット、パソコンの使用時間が長い(1日4時間以上)
・首や肩がこりやすい
・めまいを起こしやすい
予防法
気象病を完全に防ぐことは難しいですが、症状を軽くすることはできます。
①規則正しい生活:睡眠不足は自律神経を乱します。毎日同じ時間に寝起きすることが大切です。
②首・肩をほぐす:首や肩の筋肉が硬いと症状が悪化しやすくなります。ストレッチや入浴がおすすめです。耳のマッサージも有効です。
③軽い運動:ウォーキングなどの有酸素運動は自律神経を整えます。筋トレも有効です。好きな運動をすることがポイントです。
④姿勢に気を付ける。
⑤呼吸を整える。
⑥水分補給:脱水になると頭痛も悪化します。こまめな水分補給を心掛けましょう。
⑦天気予報を確認する:最近では気圧変化を知らせるアプリもあります。症状が出そうな日を事前に知ることで、予定を調整したり、早めに休息を取ったりできます。
⑧入浴で、体を温める。
⑨食事に気を付ける。栄養をしっかり取る。発酵食品(ヨーグルトや味噌、納豆など)や食物繊維を取り入れて、胃腸を整える。
⑩仕事や勉強は、ある程度の時間で切り上げる。
病院では何をするの?
気象病だけを調べる検査はありません。当院では、専用外来のチェックリストと問診票を使用します。
症状や生活習慣を詳しく伺い、時間をかけて診察をします。
必要に応じて検査を行います。院内では、レントゲン、心電図、採血などを行う場合もあります。
頭部MRI撮影や耳鼻科受診、循環器内科受診、婦人科受診をして頂く場合もあります。
症状によっては投薬治療を行います。
・漢方薬が第一選択となる場合が多いです。10年以上使用している中で、1種類もしくは2種類の漢方薬で症状の軽減が見られやすいです。
頭痛薬、抗めまい薬、その他を薬をなどを組み合わせます。なるべく、薬の種類は増やさないようにしています。
放置してはいけない症状
次のような症状がある場合は、気象病だけとは限りません。
・今までで一番ひどい頭痛
・手足のしびれ
・ろれつが回らない
・胸の痛み
・意識障害
・激しいめまい
・高熱
このような場合は、早めに医療機関を受診してください。
まとめ
気象病は「気のせい」ではありません。
気圧や天候の変化によって、自律神経が影響を受け、さまざまな症状が現れることがあります。
・天気が悪くなると体調が悪い
・雨が降る前に頭痛がする
・自分の身体が天気予報代わりになる
・頭痛や肩こり、めまい、だるさが繰り返し起こる
という方は、一度ご相談ください。
症状の背景には気象病だけでなく、ほかの病気が隠れている場合もあります。適切な診断と対策によって、日常生活がぐっと楽になることがあります。
「いつものことだから」と我慢せず、つらい症状が続く場合はお気軽にご相談ください。
概日リズム睡眠障害について
2026年4月13日 13:45更新
専門外来コラム
概日リズム睡眠障害について。
「朝どうしても起きられない」、「夜になると目が冴えてしまう」、「午前中は調子が悪い」
こうした悩みを、単なる生活習慣や意志の弱さとして片付けてしまっていないでしょうか。
しかし実際には、それは医学的な問題の可能性があります。概日リズム睡眠障害かもしれません。
この疾患は、体内時計(概日リズム)が社会生活の時間とズレてしまうことで、睡眠と覚醒のタイミングが合わなくなる状態を指します。人間の体には約24~25時間周期のリズムがあり、睡眠・覚醒、体温、ホルモン分泌などをコントロールしています。しかしこのリズムが後ろにずれたり、一定でなくなったりすると、「眠りたい時間に眠れず、起きるべき時間に起きられない」という状態になります。
自律神経の乱れが先なのか、概日リズム睡眠障害が先なのか、判断しにくいですね。
睡眠相後退症候群、睡眠相前進症候群、非24時間睡眠覚醒症候群3つに分類されます。
特に多いのが「睡眠相後退症候群」と呼ばれるタイプです。これは、入眠時間が深夜から明け方にかけてずれ込み、その結果として朝起きることが極めて困難になる状態です。重要なのは、「起きられない」のではなく、「体がまだ夜だと認識している」という点です。つまり、本人の意思とは関係なく、生理的に覚醒できない状態にあるのです。
この疾患はしばしば誤解されがちです。「夜更かしの延長」「怠けているだけ」「早く寝れば治る」といった認識は正確ではありません。実際には、本人は改善しようと努力しても眠れず、朝起きられないことに強いストレスを感じています。努力ではどうにもならない点が、この疾患の特徴です。
では、どのような場合にこの病気を疑うべきでしょうか。まず、休日になると昼過ぎまで眠ってしまう、または放っておくとどんどん就寝時間が遅れていくといった生活パターンが見られる場合は注意が必要です。また、夜型の生活では比較的元気に活動できる一方で、朝の仕事や学校ではパフォーマンスが著しく低下する場合も特徴的です。
さらに重要なのは、「改善しようとしても改善しない」という点です。早く寝ようとしても眠れない、目覚ましを複数使っても起きられない、生活習慣を整えてもリズムが戻らないなど、こうした状況が続く場合は、単なる生活習慣の問題ではなく、医学的な評価が必要になります。
診断においては、特別な検査が必須というわけではありません。基本となるのは詳細な問診と睡眠記録です(この二つの基本は続けるのが結構大変です)。
2週間程度の睡眠日誌をつけることで、生活リズムのズレが明確になることが多いです。補助的に、腕時計型の活動量計(アクチグラフ)や、メラトニン分泌のタイミングを測定する検査が用いられることもありますが、実臨床では問診と記録だけで十分判断できるケースも少なくありません。
治療において重要なのは、「無理に合わせる」のではなく、「リズムを調整する」ことです。
代表的な方法としては、
①朝に強い光を浴びる光療法
②メラトニンの分泌を調整する薬物療法(効果があるないは個人間での差が大きい)
③就寝時間を少しずつ前にずらしていく行動療法
があります。
ここで大切なのは、一気に正常な生活に戻そうとしないことです。急激な変化はかえって失敗しやすく、少しずつ段階的に調整することが成功の鍵となります。
当院でいつも話しているのは、
「スマホは寝る1時間前にはやめておきましょう」、
「夕方以降は部屋は白色系ではなく暖色系にしましょう」、
「午前中に太陽光を浴びるようにしましょう」 などです。
医療現場では、この疾患が見逃されることも少なくありません。「早く寝ましょう」といった一般的な生活指導で終わってしまったり、不眠症や精神的な問題として扱われたりするケースもあります。しかし、概日リズムの問題である以上、アプローチもそれに合わせる必要があります。
「朝起きられない」という症状の裏には、本人の努力では解決できない生理的な問題が隠れていることがあります。もし、生活改善を試みても改善しない場合や、夜型の方が明らかに調子が良いと感じる場合には、一度この疾患を疑ってみることが大切です。適切な理解と対応によって、生活の質は大きく改善する可能性があります。
当院では、「朝学校(仕事)に間に合わない」、「朝起きられない」、「午前中怠くて起きられない」という日常生活に支障が出ているため、受診される方が多いです。
注目しているポイントがあります。
・当院が1件目に相談している医療機関ではないことが多い。
・起立性調節障害と診断され治療をしているが改善していないため、自律神経の問題(自律神経失調症)ではないかと考えて当院受診となった。
・10代〜20代の方で多い。
・気象病のチェックリスト:①天候が悪い時に体調が悪い。②雨が降る前や天候が悪化する前に、何となく天気の変化が予測できる。→該当する。
この注目しているポイントについては、どこかで書いていければとは思っています。
概日リズム睡眠障害という診断が付いて、治療がうまくいくこともあります。
しかし、自律神経の乱れや、起立性調節障害、気象病、などの対策も同時に行う必要がある方が多いのではないかと、実感しています。
ビタミンD欠乏について
2026年2月15日 15:56更新
専門外来コラム
冬に増える「なんとなく不調」の正体
〜ビタミンD欠乏と頭痛・気分低下・低血圧の関係〜
最近こんな症状はありませんか?
・なんとなくずっとだるい、倦怠感が続く
・やる気が出ない
・気分が落ち込みやすい
・頭が重い、頭痛が増えた
・立ちくらみがある
・朝なかなか起きられない
・午前中は調子が悪い
・筋肉が重い感じがする
・風邪をひきやすい
・どれだけ寝てもスッキリしない
「疲れているだけなのかな」
「気のせいかも」
「メンタルが弱っているのかな」
「自律神経が乱れているのか」
「慢性疲労なのかな?」
「何かのストレスなのかな」
そう思ってやり過ごしている人は少なくありません。
でも、その不調の背景に
“ビタミンD欠乏” が隠れている可能性があります。
ビタミンDとは何をする栄養素?
ビタミンDは単なる「骨のビタミン」ではありません。
主な働きは、
・カルシウム吸収を助け、骨を強くする
・免疫を整える
・筋肉の働きを支える
・神経の炎症やホルモン調整に関与する
・自律神経や血圧調整にも関わる
特に重要なのが、
日光(紫外線)を浴びることで体内で作られるという点です。
つまり、日照時間が短い冬や、外出が少ない生活では不足しやすいのです。
冬に増える理由:
寒冷地や冬場では、
・日照時間が短い
・外に出ない
・厚着で肌が露出しない
・在宅時間が増える
これらが重なり、ビタミンDが十分に作られません。
そうなると、冬にしか欠乏しないのではと思われがちです。ただ、最近では日焼け止めの性能があがったこと、日焼けを避けることが多くなったことからも、冬以外にもビタミンD欠乏は起こりやすくなっています。
不足すると出やすい症状について
① 倦怠感・だるさ(気象病・天気病外来、寒暖差疲労外来、自律神経失調症外来でも、1か2番目に多い症状です)
最も多いのが「なんとなく続くだるさ」です。風邪ではないのに、数週間続く疲労感。
階段がつらい、体が重い。でも熱はない。
これらが特徴です。
② 気分低下・やる気の低下
ビタミンDはセロトニン調整に関与します。
不足すると
・気分が沈みやすい
・やる気が出ない
・ぼーっとする
といった状態になりやすいのです。
冬季うつ(冬季気分障害)との関連も指摘されています。
③ 頭痛
意外に知られていませんが、ビタミンD不足と頭痛の関連も報告されています。
鉄欠乏性貧血や隠れ貧血、亜鉛欠乏症が頭痛に関係していることは、知られるようになりました。受診時に、採血結果を持参される場合には、鉄や亜鉛は測定していることが多いです。ビタミンDの採血結果を、持ってこられることは少ないです。
・慢性的な鈍い頭痛
・締め付けられる感じ
・片頭痛の頻度増加
・頭重感がある
・鎮痛薬があまり効かない
ビタミンDは神経炎症や血管反応の調整にも関わっているため、不足すると頭痛が起こりやすくなると考えられています。月に5回以上頭痛がある場合は、「もしかしたらビタミンDが足りてない」?と思ってみても良いでしょう。
④ 低血圧・立ちくらみ
あまり注目されませんが、ビタミンDは血管や自律神経の調整にも関与しています。
不足すると
・朝起きられない
・立ちくらみがする
・ふらっとする
・脈が弱く感じる
・血圧がいつもより低い
といった症状が出ることがあります。(自律神経失調症との鑑別が難しい、もしくは自律神経失調症の場合に低血圧があることも多い。)
特に若い女性はもともと低血圧傾向の方が多いです。(低血圧でも無症状なら、特に問題はないです。)
一般的には、寒くなると、血圧が上がることが多いのですが、低血圧の場合はそうでもありません。
冬場にさらに悪化して
「やる気が出ない」
「動き出せない」
という状態に見えてしまうことがあります。
しかしそれは怠けではなく、
体の循環が落ちているサインかもしれません。
⑤ 筋肉・骨の違和感
・太ももやふくらはぎの重さ
・背中や腰の鈍痛
・押すと痛い部位がある
重度になると骨軟化症へ進行することもあります。
⑥ 免疫低下
・風邪をひきやすい
・治りが遅い
免疫細胞にもビタミンD受容体が存在するため、
不足は感染リスク上昇と関連します。
⸻
「怠け」ではない
重要なのはここです。
ビタミンD不足や低血圧による不調は、
気合いではどうにもなりません。
「甘えている」
「根性が足りない」
ではなく、
生理的に起きている変化なのです。
どう判断するのか?
血液検査で「25(OH)ビタミンD3濃度」を測定します。
30ng/mL以上:理想値は40~80ng/mL
20〜30:不足傾向
20未満:欠乏
また、血圧も参考になります。
・収縮期血圧が90㎜Hg前後
・立ち上がるとふらつく
こういった場合は、循環状態も合わせて確認するとよいでしょう。
対策
・日光を10〜20分浴びる(顔と手)
・サプリメント(一般的に1000〜2000IU/日)
・サーモン、卵、干し椎茸などの摂取
・朝は急に立ち上がらず、ゆっくり体を起こす
・水分をしっかり摂る
※高用量摂取は医師の指示のもとで。
最後に
もしあなたや大切な家族が
・数週間続くだるさ
・頭痛
・気分の落ち込み
・立ちくらみや低血圧
・原因不明の不調
を感じているなら、ビタミンDという選択肢を思い出してください。
冬の不調は、心の弱さではありません。体からの静かなサインかもしれません。
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