せたがや内科・神経内科クリニックBlog



「せたがや内科専門外来の運動処方について」

2024年11月12日 07:30更新
専門外来コラム


2024・11コラム

「せたがや内科専門外来の運動処方について」

 

自律神経失調症専門外来では、患者さんの状態に応じて主に運動を勧めています。運動処方と言ってもお薬のように正式な方法ではありませんですが、治療として「休むだけではなく、運動することも有効です」ということをお伝えして、簡単な運動などを指導しています。とはいえ、運動といってもさまざまですよね。実は「呼吸」も運動に入ります。自律神経失調症専門外来や原因不明の体調不良でお困りの患者さんは、症状も一人ひとり異なります。運動ができそうな方もいれば、起き上がって通院するのがやっとだという方もいます。必要であれば薬で治療をすることもありますが、患者さんの状態に応じて生活習慣の改善や運動の指導もさせて頂いています。今回は、私が診察で患者さんにお伝えしている運動についてご紹介します。

 

自律神経の不調に必要な運動

一般的に、運動というと生活習慣病予防や高齢者のフレイル予防など、病気の予防を目的としたものが推奨されている場合が多いです。不調を改善するための運動となると、また少し目的や内容が異なってきます。もちろん、どの運動も健康にとって良い事なのですが、自律神経失調症専門外来のような不調を持った方は、以下のことを優先して行った方が良いと考えています。

 

  • 呼吸で自律神経を整える

「ぐったりしていて動けない」という方も、「ある程度動けるけれど万全ではない」という方も、不調がある人に共通して重要なのが呼吸法です。呼吸は私たちが普段から無意識に行っているので気づきにくいかもしれませんが、呼吸も立派な運動の一つです。呼吸と自律神経には深い関係があります。呼吸は寝ている時でも自動的に一定のリズムで行われているものでもあり、自分の意思で吸ったり吐いたりできる運動です。息を吐くと副交感神経が優位、吸うと交感神経が優位に働くので、呼吸がうまくできる人は自律神経も整いやすいです。

深い呼吸法ができるようになると、呼吸をするのに想像以上に腹筋を使い、肋骨が下に動くことに気づくと思います。本当に呼吸が浅くなっている方はもしかしたら、筋肉痛になるかもしれません。呼吸が深くなると自然と眠りが深くなるので睡眠の質も良くなります。朝起き上がれなかったり疲れがとれなかったりする症状がある人の中には、寝ているようで眠れていない隠れ不眠の方もいます。

 

  • 首肩こりの応急処置

体調が悪い人は、大半が酷い首肩こりを持っています。首肩こりがあると頭痛やめまい、吐き気、息苦しさなど様々な不調が連鎖していきます。首肩こりの原因は、悪い姿勢や体のゆがみによって首肩まわりの筋肉に過度な負担がかかること、首肩まわりの筋肉の血行不良、ストレスによる首肩まわりの過緊張などが挙げられます。

 

 

  • 動ける人は好きな運動をしてOK

ある程度動ける人は、好きな運動から始めてみましょう。怪我をしたり具合が悪くなったりするまで負荷の高い運動でなければ大丈夫です。たとえばウォーキング、ジョギング、スイミング、サイクリングなどの有酸素運動だと基礎的な体力づくりにもつながります。これらのような運動はリズムを刻んだ動きがありますよね。リズムのある運動はストレスの解消になり、メンタル面でも大きな助けになります。ほどよい疲れでぐっすり眠れるようになるので睡眠の質も上がります。体調が優れないとき、「眠れていますか?」「食べられていますか?」の2つの質問は必ず聞かれる質問ですよね。心身の健康を保つ上で大切なのは食事と睡眠ですが、それを促してくれるのが運動です。

 

  • 背骨を意識した運動で不調を根本から解消へ

自律神経失調症やその他の原因不明の体調不良を生む大きな要因の一つに、「骨格のゆがみ」があります。簡単に言い換えると、姿勢の悪さです。ストレートネックや猫背、巻き肩(方が内側に丸まってしまっている状態)や腰痛、股関節の違和感など、骨格がゆがんでいると骨格の面でさまざまな異常が出てきます。ただ単に骨格が歪んでいるだけなのなら見栄えが少々悪くなるだけで済むのですが、この歪みが実は原因不明の体調不良の引き金になっていることがあります。

骨格を作る中心となっているのが背骨です。私の著書になりますが、「不調がデフォな私たちの”背骨リセット”」という本では、背骨のコンディショニングや背骨の動きに着目したエクササイズをテーマにしています。背骨の動きを意識した運動は、多くの人にとっては馴染みのないと思います。しかし、ヨガやピラティスなどのマットを使う運動をイメージするとどうでしょうか?少し想像しやすくなると思います。この本では、ストレッチやピラティスの簡単な動きなど、不調別に応じたさまざまな運動を紹介しています。

大人になるにつれて背骨の動きは悪くなっているのは確かなので、背骨を意識した運動はすべての人にとって必要なのかもしれません。背骨の動きが良くなると呼吸もしやすくなるので、自律神経にとっても良い循環が生まれます。

 

本格的に運動したくなったら専門家の指導を受けてみましょう

今回は触れませんでしたが、運動習慣をつけるのに筋トレも無くてはならない存在です。有酸素運動、筋トレ、背骨のメンテナンス、ストレッチ…忙しい生活の中でここまでのことを自分で実践するのは大変だと思います。本来は一人ひとりの体の状態や体調に合った運動をする必要があるので、どのメニューや組み合わせが良いのかを考慮したオーダーメイドの運動がしたいと思われる方はやはり、運動の専門家の指導を受けた方が良いでしょう。私は残念ですが医師としての指導しかできませんので、ご自身の目的に合った専門家の元を訪ねてみてください。



秋の気象病対策-台風・寒暖差疲労-

2024年10月8日 10:18更新
専門外来コラム


秋の気象病対策-台風・寒暖差疲労-

 

近頃では、年を重ねる毎に春夏秋冬が曖昧になり、「今年は異例の○○」といったような現象がしばしば起こるようになりました。2024年は夏がとても厳しく、そして長かったですね。激しい雷雨や多発する台風、寒暖差など秋も気象変化が激しくなっています。あまりに変化が目まぐるしくて体がついていかない方も多いと思います。対策をして少しでも楽に過ごせるように工夫をしていきましょう。

 

2024年の秋の特徴

[台風と秋雨前線]

今年は台風の勢力が強く、そして予測不能な進行速度・方向などが目立ちます。災害級の被害が予測されたり実際に起きていたりするため、従来の台風の対策では都合が変わってきているように思います。台風だけでなく秋雨前線や線状降水帯の発生などの影響もあり、激しい雷雨や異例の降水量に注意しなければいけない日が増えました。このように変化が目まぐるしい天候が続くと、もちろん体調への影響も大きくなります。常に蒸し暑く、晴れたり急に雨が降ったりと変わりやすい気候は、気象病をお持ちの方には厳しい条件です。台風が遠方にあっても頭痛やめまい、倦怠感、微熱、関節痛など、体にどっしりと何かが乗っかっている感じがして思うように過ごせないことがあるかもしれません。

 

[長引いた暑さのダメージ]

何と言っても、今年の夏は猛暑が続き、春から秋まで暑さが長引いています。10月でも30℃を超える日があるのは驚きですね。あまりに過酷な暑さが続いたので、秋が深まる今心配なのは、暑さによるダメージです。夏はどうしても涼しい環境にいたり、冷たいものを食べたりすることが多いと思います。暑さで体力が消耗していることもあり、少しずつ冷えと疲労が溜まっています。そのダメージが一気に降りかかってくるのが秋です。季節の変わり目なので自律神経が乱れやすいタイミングでもあります。特に気をつけたいのが胃腸の不調です。夏の調子で冷たいものを食べたり飲んだりすると、予想以上に胃腸に負担がかかるので注意しましょう。

 

[寒暖差疲労の始まり]

秋が夏と異なる点は、最高気温が上がったとしても、朝晩にはしっかりと最低気温が下がるところです。そこで発生するのが寒暖差です。秋に発生する寒暖差は、朝晩は20℃前後で涼しさを感じ、日中は20℃後半(30℃近くになることも)くらいで少し動けば汗ばむような暑さを感じます。私たちの体はその気温の変化に合わせて体温調節をしなければならず、自律神経が酷使されエネルギーが消耗されやすくなります。寒暖差による影響は体だけでなく肌トラブルなども引き起こします。汗をかいたり冷えて鳥肌がたったりと皮膚も忙しいですよね。紫外線によるダメージも積み重なっているので、皮膚が荒れやすくなったり、かゆみや発赤などが出やすくなったりします。

 

・秋の気象病対策

[あずき紅茶で浮腫み予防]

先日、雑誌の取材で一緒に掲載して頂いたイシハラクリニックの石原新菜院長が紹介されていた“あずき紅茶”は、私も気象病の方にお勧めしたい飲み物です。気象病の症状が出やすい方は、“水毒”といって体に余分な水分が溜まっていてうまく外に排出できない状態になっています。いわゆる浮腫んでいる状態ですね。女性は男性に比べて筋肉量が少なく、ホルモンなどの影響も重なって体に水分が溜まりやすいです。水毒の状態になると浮腫むだけではなく、体が冷えたりだるさ・胃腸の調子の悪さなどを感じるようになります。私は患者さんに対して五苓散という漢方を処方することがよくあるのですが、お家でも簡単に水毒の対策ができるのが”あずき紅茶”です。

あずき紅茶は体に溜まった老廃物や水分を排出するので、血流の改善が期待されます。継続して飲むと、気象病になりにくい体質づくりに役立つでしょう。

 

★あずき紅茶のつくり方

材料

・ゆであずき 大さじ5(100g程度)

・紅茶のティーバッグ 2袋

・熱湯 600ml

 

①   耐熱の容器(水筒など)にゆであずきを入れる

②  熱湯を注いでディーバッグを入れ、2~3分してから取り出し、一晩置く。

出典:雑誌 女性自身2024.9.17号 p49

 

[さまざまな方面から冷え対策を]

  • 湯船につかって入浴

自律神経が乱れている方は体温調節機能が弱くなっている方が多いので、頭は熱がこもってしまってのぼせているのに手足や胃腸が冷えた状態になっていることがあります。温と寒のバランスが大きく乱れてしまうと、自力でリセットするのは中々難しいです。湯船に浸かると血流が良くなり全身が温まるので、熱のバランスが整います。幸運なことに日本にはお風呂の文化がありますよね。海外ではシャワー浴が一般的な国も多く、温泉療法などの入浴に着目した治療法もある程です。入浴には冷えをリセットするだけでなく、自律神経を整える効果やリラックス効果、安眠効果などさまざまなメリットがあるので、不調を持っている方はぜひ毎日実践して頂きたい習慣です。

 

  • 運動

有酸素運動やリズム運動ではメンタルや血流の改善、筋トレをすれば代謝がアップして冷えづらい体づくりになります。そして、先日発売させていただいた書籍「不調がデフォな私たちの背骨リセット」に載っているような背骨を中心とした首・肩・腰・股関節などの骨格のメンテナンスをすれば、不調を改善・予防していくことができます。全てをバランスよく行おうと思うとハードルが高くなってしまうかもしれませんが、最も大切なのは、「とにかくまずは体を動かす習慣をつける」ということです。座りっぱなし、寝込みっぱなしはできるだけ避けたいところです。散歩をする習慣をつけるだけでも違いは大きいです。運動を始めると、じっとして運動不足であることがいかに冷えをもたらすのか体感できると思います。

 

 



新書籍「背骨リセット」予約開始しました

2024年9月10日 19:32更新
専門外来コラム


新書籍「背骨リセット」予約開始しました

 

実は昨年末くらいから進めていた書籍のお仕事がありました。最近形になってきており、情報が公開となったのでここでもお知らせいたします。今回のタイトルは「背骨リセット」です。

私は主に自律神経、気象病に関する書籍の執筆や監修をさせていただく機会が多いので、一見今までの著書と関係ないようなタイトルですが、今までご紹介したメソッド編をより詳細に、メインとして凝縮させた内容となっています。マンガやイラストも豊富なので、今までとテイストが異なり読んでいて楽しい本かもしれません。今回はじめて実現できたのが、今までに何度かご紹介させて頂いている賀来大樹さんとの共著です。「気象病ハンドブック」の後半にある実践編の監修をさせて頂いたり、せたがや内科の自律神経失調症専門外来や首肩こり、気象病専門外来などの患者さんを治療するうえでご協力頂いたりしているトレーナーさんです。賀来さんが提案してくださったメソッドがこれまで以上に詰まっているので、実践編の本としてとても内容が充実していると思います。

 

・背骨リセットとは?

「背骨リセット」と言われて、みなさんは何を想像されるでしょうか?おそらくですが、普段の生活の中で背骨を意識して過ごされている人は少ないと思います。もしかしたらスポーツ歴が長い方でも馴染みのない概念かもしれません。「背骨リセット」というのは、背骨を本来の正しい位置に整えることで、首肩こり、頭痛、めまい…などの不調を根本から治していこう、という意図が込められています。不調を治したいと思ったとき、「まずは病院で薬をもらおう」と考えるのが一般的ですよね。しかし、自律神経の乱れによる不調やその他の不定愁訴(何となく調子が悪いけれど、検査しても異常が見つからない不調のことです)は薬のみで治るケースが少なく、むしろ骨格を整えることで不調が改善することがあります。これが背骨リセットです。実は背骨は、自律神経の通り道に当たります。背骨が歪んでいると自律神経にも影響がいきますし、骨格全体が歪んで姿勢も悪くなるので、さまざまな不調の引き金になります。

 

せたがや内科に来る不調の患者さんは、レントゲンを撮ると背骨のゆがみが目立ちます。私たちの骨格は、誰しも多少は歪みが生じているものですが、度を越えてしまうと原因不明の不調を引き起こすこともあります。そこで背骨リセットの登場です。呼吸法やストレッチ、エクササイズなどにより背骨のズレ(骨格のゆがみ)を改善していきます。筋肉の緊張が強いところは緩めて、うまく使えていないところは強化。背骨を整えながら全体の動きを良くしていきます。すると、体調が改善していきます。背骨のゆがみが完全に治らなくても、その過程で不調が治っていくのが不思議なところです。

 

・評価を重視して一人ひとりに合った運動プログラムを

本来であれば運動は、一人ひとりの体に合ったものでなければ効果が薄れてしまいます。一般的に良いとされている運動やストレッチでも、厳密に言ってしまえば、万人に有効という訳ではないのが現実です。そこで大切なのが評価です。この本でも、序盤に評価のページを設けています。骨格の状態をまずチェックすることで、その人に合ったエクササイズを行うことができるように工夫をしました。不調がある方はすぐに何とかしたい気持ちが大きいと思いますので、すぐに実践編のページが気になるかもしれません。しかし、不調がある方こそ評価を丁寧に行うことをお勧めします。

 

・首をリセットするのに首だけを動かすわけではない?

この本では、パーソナルトレーナーの賀来大樹さんにプログラムを組んで頂いています。

以下は、内容の打ち合わせをしている時のあるエピソードです。

 

首のエクササイズのプログラムを組んでいる最中、第一項目が首ではなく腸腰筋という筋肉のアプローチでした。すかさず他の制作スタッフの方から「首が悪いのにどうして○○をするのですか?首は動かさないのですか?」と質問がありました。もちろん私も同じようなことを思いましたし、読者の方も同じ疑問を抱かれるのではないかと思いました。

 

賀来さんからこのような答えが返ってきました。「実は、首がこっているからと言って首が悪いという訳ではないんですよ。首が弱い人は不良姿勢を取り続けていることが多く、その結果、腸腰筋が被害者の一つ(他にもあります)なので、まずは腸腰筋のアプローチをします。」

これを聞いて全員が「へぇー!!」と納得。これは私の中でとても印象的な出来事でした。

このように、骨格や筋肉・運動に関する知識がない方にとっては少し常識が覆ったように思える内容が入っているかもしれません。読者の方にも、読んでいて「へぇー!」となって頂けると嬉しいです。

 

・基本は呼吸。常に意識しましょう

自律神経を整える上で大切であり、基本となるのは「呼吸」です。呼吸は当たり前すぎて、その重要性が中々伝わりづらいですが、実践して効果を感じられる方にはわかって頂ける要素です。

自律神経は基本的には私たちが意識しなくても自動的に切り替わって機能しているのですが、唯一自力でスイッチングを行うことができるのが呼吸です。息を吐くと副交感神経が優位にはたらき、吸うと交感神経優位にはたらきます。

呼吸はブリージングとも呼ばれています。私が主に勧めているのは胸式呼吸と腹式呼吸です。この本でも呼吸の方法が載っています。実は呼吸は意外と運動量が多く、私たちはあらゆる筋肉が連動して動くことで吸ったり吐いたりしています。しっかりと胸式呼吸や腹式呼吸を行うと、それだけで筋肉痛になることがあるくらいです。ストレッチやエクササイズをしている時に大切にして頂きたいのが、呼吸を止めないことです。呼吸を意識しながらストレッチやエクササイズの動きを実践すると、より正しくできると思います。

 

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まだまだ続く暑さ・冷房病対策

2024年8月9日 07:20更新
専門外来コラム


まだまだ続く暑さ・冷房病対策

 

毎日35℃を超えるような酷暑が続いており、年々夏の過ごし方も少しずつ変わってきているように思います。熱中症には十分に気をつけなければいけない一方で、外出の機会が減ると運動不足に陥りやすく、かといって室内にいると冷房環境による冷えや寒暖差疲労などを引き起こしやすいです。夏バテや冷房病、不眠、寒暖差疲労など、夏を元気に過ごすことが中々難しくなってきました。そんな状況だからこそ、夏を快適に過ごすためのポイントをおさえていきましょう。

 

・今年の暑さの特徴

今年の暑さの特徴は、なんといっても「湿度の高さ」だと思います。ひと昔前の夏は気温が高くてもカラッとした暑さだったような気がするのですが、最近の夏は梅雨が過ぎても高温多湿でうだるような暑さです。湿度が上がるだけで体感する暑さは一気に上がりますし、汗が蒸発しにくくなるので熱が体から逃げにくくなります。

 

自律神経の機能が弱っている方は体温調節が苦手なので、湿度が上がったタイミングで不調を訴える人が多かったです。それに加えて体温を上回るような暑さの日数が多く、また、5~6月頃から始まり10月頃までと予想されている夏の長さも特徴的ですね。春や秋が短くなってきているように思います。

 

 

・夏に自律神経が乱れやすいポイント

夏は体温調節による負担が大きいです。体に熱がこもらないように熱を外に逃がしたり、室内外での気温差に合わせて体温を保ったりしなければいけません。また、熱帯夜により睡眠の質が下がるので、体も心も休息が十分ではありません。日中の暑さや夏バテで疲労が溜まっている状態だと思いますが、寝苦しい夜が続くことで回復しきれず全体的に弱ってきた結果、余計に自律神経が乱れやすい状況ができあがります。

 

・自律神経の弱い人が気をつけたい不調

[熱中症]

元々自律神経系の不調や不定愁訴などがある方は、熱中症になりやすいです。自律神経は体温調節を行うはたらきがあるので、自律神経の機能が弱っていて体温調節がスムーズにできなくなっている人は、体の外にうまく熱が放出されずに「気づいたら熱中症になっていた」「熱中症のような症状で具合が悪い」という方が多いです。水分補給をしていても熱中症になってしまうことも珍しくありません。

 

日中ももちろん熱中症のリスクはありますが、特に注意したいのは夜です。冷房が苦手という方も多いですが、最近の暑さでは夜中でもエアコンを切ってしまうのは危険です。自律神経が乱れている方は特に寝汗をかきやすく、大量に水分を失うと朝起きるまでには脱水を起こしてしまうことがあります。眠っているうちに脱水が酷くなるとそのまま熱中症にもつながってしまいます。頭や手足はものすごく熱くなっていて、体の表面やお腹は冷えているという状況になりやすいので、寝る前は夏でもお風呂に入って体の内側を温め、寝るときは頭だけ少し冷やしてみましょう。また、冷房で冷えすぎないようにパジャマは薄手の長そで長ズボン、布団はきちんとかけるなどの工夫も大切です。

 

[冷房病]

夏にやっかいなのが、冷房病です。冷えの感じ方や不調の出方はなかなか目には見えづらく、個人差も大きいです。人によって「快適」と感じる温度は差がありますよね。冷房環境にいると直接冷たい風が当たることもあり、震えるほど寒いのに頭は熱くなり、頭痛や吐き気が起きることもあります。

まず大切なのは、風がなるべく直接当たらない場所に避難すること、もしくは上着やストールなどを活用したり、首や足首などの露出を控えたりして風が当たる面積を減らすことです。そして、家に帰ったらしっかり湯船に浸かりましょう。入浴は1日の冷えや疲労をリセットしてくれる役割があるので、夏でも湯船で体を温めることをお勧めします。入浴には自律神経を整える作用や安眠効果などがあり、心身にとって良いことばかりです。

 

[寒暖差疲労]

春・秋は外の気温の変化による寒暖差疲労の影響が大きいですが、夏は室内外の気温差に注意が必要です。外は35℃近くの暑さで体から汗を出すために自律神経がはたらき、室内に入れば27~28℃(会社やお店だと寒いくらいの温度かもしれません)の環境下で一気に血管が収縮します。自律神経は体温調節をするために大忙しです。室内外の行き来が多い人ほど、このダメージを1日に何回も経験するので、気づいたらぐったり疲れているということもあるかもしれません。夏は暑さそのものによる疲労や夏バテ、熱帯夜による寝不足などでそもそも疲れやすくなっています。そこに寒暖差疲労が上乗せされると疲労感は大きいと思います。

 

[運動不足]

暑さを避けて外出の機会が減ると陥りやすいのが、運動不足です。運動不足自体は不調ではありませんが、体を動かさなくなると血流が悪くなって冷えも起こりやすいですし、不調の原因にもなります。炎天下の中で思いきり運動をするのは難しいですが、朝晩の気温の低い時間をみて散歩をする機会を作るのも良いですし、マットを使った運動(ヨガ・ピラティス)や自重で行う筋力トレーニングであれば家でもできます。具合が悪いので仕方がないですが、体調不良の人は運動不足が多く、活動量が減ると眠りも浅くなり、さらに体調が優れない…と悪循環に陥りやすいです。ブリージングと言って、呼吸をするだけでも運動になりますので、余裕のない人は深呼吸を積極的に行うだけでも違います。ぐったりしている夏こそ、動くことに気を配ってみてください。



自律神経と骨格②背骨のゆがみと自律神経の関係

2024年7月15日 20:21更新
専門外来コラム


自律神経と骨格②背骨のゆがみと自律神経の関係

 

今回は自律神経と背骨について書いていきます。先日の「自律神経と骨格背骨のつくり」では、背骨の構造や役割についてご紹介しました。せたがや内科の専門外来を受診する患者さんは、骨格のゆがみが大きく、それが要因となって不定愁訴や自律神経失調症などを発症している方が多いです。きっかけは様々ですが、背骨のゆがみが自律神経に悪影響を与えています。背骨のコンディションを整えると、自律神経のキャパシティーが大きくなり、私たちを取り巻くさまざまなストレスに負けない体づくりにもつながります。背骨を使うこと・整えることの重要性を少しずつでも知っていきましょう。

 

  • 背骨は自律神経の通り道

まずは自律神経がある場所について考えてみましょう。神経というのは、全身を網目のように張り巡らされており、さまざまな情報を伝達しているネットワークのようなものです。その中でも自律神経は、脳と脊髄から始まり、各臓器や器官に分布しています。呼吸や心拍、血圧、消化・排泄、汗や涙の調節などさまざまな生命活動に関わっています。

 

次に背骨のある場所について考えてみましょう。背骨は、正式には脊椎と呼ばれていて、頭の付け根(首)から始まり、お尻の割れ目のあたりまで縦に伸びています。先ほど「自律神経は脳と脊髄から始まっている」と言いましたが、実は、脊髄は背骨の中の脊柱管という場所の中に通っており、背骨が脊髄を保護しているのです。つまり、「背骨=自律神経の通り道」とも考えられますね。

 

神経は基本的に、情報を伝えるためにまっすぐ進んで行きます。しかし、背骨が歪んでいると自律神経の伝達ルートが妨げられ、神経がうまく機能しなくなってしまいます。神経が圧迫されないように背骨の歪みを減らし、動きを良くすることが大切です。

 

  • そもそも人間の骨格はゆがみやすい

人間の身体の構造を考えると、背骨はそもそもゆがみやすくできています。人間は2足歩行なので、とても不安定です。私たちは常に重力を感じながら生きていますよね。4~5kgある重い頭を細い首が支えており、内臓が重力に逆らって体の中に収まっていられるように、背骨やその他の骨格・筋肉が頑張ってつなぎとめています。また、背骨には鎖骨や肩甲骨がくっついており、両腕も支えています。さらには、身体の複雑な動きに対応できるように、背骨を中心として、体全体のバランスが取れるようにできています。私たちの身体の機能の高さと、背骨にかかる負担は計り知れませんね。

 

背骨は骨格の要です。そのため、背骨がゆがむと全身が歪んできます。勉強や仕事などでうつむき姿勢を続けていると、重い頭を支えている首はどうしてもエラーが出やすく、首がまっすぐになって頭が前に出ている状態(フォワ―ドヘッド)ができあがります。骨格は1部分にエラーが発生すると、バランスを取るために他の部分でカバーするものです。そのため、どんどん背骨が歪んで姿勢も悪くなっていき、それが癖になっていきます。

 

  • 背骨がゆがむ原因は?

背骨が歪む要因はたくさんあります。私たちは年齢を重ねるにつれて、背骨にとって良いとは言えない生活習慣が増えていきます。学校に行き始める年齢の頃からは、座りっぱなしやうつむきの姿勢が増えますし、大人になれば運動する機会が減っていく人が多いです。おそらく背骨のケアを習慣にしている人も少ないでしょう。子どもの頃から運動や姿勢の大切さは習ってきていても、背骨の重要性やメンテナンスの方法を知る機会は中々ないですよね。

 

そして、ストレスも背骨がゆがむ一つの要因になります。リラックスした人と、落ち込んで元気がない人の姿勢を比べてみるとわかりやすいと思います。ストレスがかかると交感神経が過剰に優位になり、体の緊張が強くなります。姿勢も悪くなりやすいですし、筋肉の凝り具合も変わってくるので不良姿勢になりやすいです。知らず知らずのうちに、背骨に負担のかかる生活をしていることが多いかもしれません。

 

  • 背骨の歪みが与える自律神経への影響

「ゆがみ」と言われて思い浮かぶ不調のイメージは、姿勢の乱れや腰痛などの痛みではないでしょうか?先ほど言ったように、背骨は自律神経の通り道でもありますよね。そのため、背骨が歪んでいると自律神経に関連した不調も起こります。実際、せたがや内科の自律神経失調症外来を受診する患者さんは背骨のゆがみが目立ちます。

人間の体には、筋系・神経系・骨格系がつながって動くことのできるシステムが備わっています。このシステムがあることで、頭で思い描いた運動が、実際に動作としてスムーズにできるようになります。脳や神経が指令を出し、実際に体を動かすのが筋肉、軸となって体を支えバランスをとるのが骨格です。

 

背骨にゆがみができると、骨格全体にもゆがみが発生します。肩の高さに左右差がでたり、骨盤が前傾・後傾したりします。すると筋肉-骨格-神経のバランスが崩れてしまい、思うように体が機能しません。倦怠感や頭痛、めまい、胃腸の不調、首肩こり、息苦しさなど、さまざまな不調につながっていきます。骨格が乱れると胸郭の動きが制限されるので、ほぼ確実に呼吸のしづらさが出ます。呼吸が浅くなると副交感神経優位になりにくく、リラックスしたり深く眠ったりするのが難しくなります。このように、骨格と自律神経は影響し合っているのですね。

 



今年の気象病対策2024

2024年6月9日 20:07更新
専門外来コラム


今年の気象病対策2024

 

ここ数年は例年と異なる異常気象が続いています。今年度も5月は異例の暑さ、激しい寒暖差、不安定な気候などで最近は体調を崩されている方が本当に多いです。6月は梅雨、気象病が目立つシーズンです。今年の梅雨入りは全国的に6月中旬という予報も出ています。梅雨は気温が高めで湿気が多く、ジメジメした日が続きます。雨に伴って気圧変動も大きいため、心身ともに不調が出やすい季節です。体調が悪いと寝込んでしまったり、気持ちもふさぎ込んでしまったりで、活動量が減ってしまうと思います。体調が悪いと動けなくなるのは当然なのですが、動かなさすぎるのもそれはそれで体に良くありません。今回は梅雨を乗り切るための工夫についてお伝えしていきます。

 

・気象病になりやすい人の特徴―女性・デスクワークの方は要注意―

気象病は、気圧の上下や気温差、湿度の影響によって体調不良が起こります。代表的なのは頭痛です。そして、めまいや倦怠感、朝起き上がれない、メンタル面での不調などの症状も出ます。

 

[女性]

気象病になりやすいのは特に、女性、デスクワーク・運動不足の方です。女性は、月経周期がある関係で、元々ホルモンのバランスが乱れやすく、自律神経に負担がかかっています。自律神経が乱れている人は気象病にもなりやすいです。そして、女性は筋肉量が少なく、特に若い方は血圧が低めであることもあり、血流が悪くなりやすいです。血流が悪いと身体が浮腫みやすい(余計な水分を溜めこみやすい)ので、気象病の症状が出やすくなります。

 

[デスクワーク・運動不足の人]

「デスクワークになってから体調が悪くなった」という方は、実は結構多いです。長時間同じ姿勢で作業に集中していると、知らず知らずのうちに姿勢が乱れ、悪い姿勢が癖になってしまいます。特にデスクワークは、目線が下でうつむき姿勢が続きますよね。頭が前に出て首・肩に負担がかかり、猫背などになるのが当たり前になっている方が多いと思います。良くない姿勢が続くと、骨格そのものもゆがみ、自律神経を弱らせてしまうことになります。自律神経のキャパシティーが減ってしまうと気候変動のストレスに打ち勝つ力も減ってしまうので、気象病の症状が出やすくなります。仕事が忙しいとどうしても運動不足になりやすいですが、凝り固まった身体をほぐしたり動かしたりする時間を作っていきたいですね。

 

「暑熱順化」で体温調節をしやすい体に

梅雨のシーズンは、気圧の上下だけではなく蒸し暑さもあるので、まずは蒸し暑さに対応できるように暑さに体を慣らすことが大切です。自律神経は変化に弱いため、暑くなり始めのタイミングや梅雨入り時に不調が出ることが多く、梅雨の後半になると、案外体が慣れてしまっているという方もいます。

 

最近では「暑熱順化」という言葉が浸透してきています。暑熱順化とは、体が暑さに適応できるように、体を暑さに慣らすことを言います。人は暑さに慣れると、気温が上がった時に汗をかいて、体温が上がり過ぎないように調節できるようになります。この体温調節の機能には自律神経が関わっています。季節の移行時期で体がまだ暑さに慣れていないと、熱がこもりやすくなって熱中症になったり、体調不良を引き起こしやすくなります。

 

暑さに慣れるためには、汗をかく練習をしましょう。「体温が上がる→汗をかく」という流れを繰り返すことで、暑い時にもスムーズに汗をかくことができるようになります。おすすめなのは、軽い運動と入浴です。ウォーキングや自転車など、日常に取り入れやすいもので大丈夫です。汗をかく練習をしている最中なので、できれば間を空けず、毎日できると良いですね。

 

[体温調節をしやすい環境と服装]

梅雨の蒸し暑さを乗り切るのに暑さ対策も大切ですが、もう一つポイントとなるのが、湿気対策です。湿度は体感温度に与える影響が大きいのをご存じでしょうか?同じ暑い日でも、カラッとした日とジメジメした日とでは快適さが異なりますよね。湿度が高いと暖かく感じ、低いと涼しく感じます。除湿器を積極的に使用していきましょう。除湿をすることで体感温度も下げることができますが、汗が蒸発しやすくなるので汗もかきやすくなります。

 

セルフケア①耳のマッサージ

耳には、自律神経に良いツボがたくさん集まっています。耳は気圧を感じるセンサーでもあるので、耳を引っ張ったりして耳まわりの血流を良くすると、気象病の予防になります。少しマッサージするだけで顔回りがポカポカしてくるのを実感できるでしょう。

 

[耳のマッサージ]

両耳の真ん中あたりを持って水平に軽く引っ張ったり斜めに引っ張ったりします。10秒キープするくらいが良いでしょう。次に、耳たぶを持って前後にゆっくり大きく回します。前に5回、後ろに5回やってみてください。

 

セルフケア②背骨のメンテナンス

デスクワークや運動不足の方が気象病になりやすいのには原因があります。身体を動かさないまま不良姿勢を続けていると、骨格のゆがみが強くなるからです。背骨は自律神経の通り道でもあるので、背骨のメンテナンスをして骨格のバランスを整えることで、自律神経にも良い効果が得られます。自律神経が整えば気象病にもなりにくいです。

 

[背骨のリセット]

  • 両足を腰幅に開き、正面を向いて立ちます。
  • 息を吐きながら、首(鼻の奥のあたりです)から背骨を1コずつ丸めていくイメージで、おじぎするように上半身を倒します。
  • 肩や腕は力を抜いてだらんとしながら、呼吸は止めずに60秒ほどキープしましょう。
  • 軽く息を吐きながら、今度は背骨を下から(お尻のあたりが一番下です)1コずつ積み立てていくようにゆっくり起こしていきます。

 



監修本「不調にさよなら!自律神経を整える50のこと」

2024年5月20日 15:17更新
専門外来コラム


監修本「不調にさよなら!自律神経を整える50のこと」発売中です

 

5月も暑さ・寒暖差、気圧低下など例年とは異なる気候が続いています。年々、1年を通して自律神経の乱れやすい気候や環境になってきていると感じます。最近では、「なんとなく辛い」、「お休みの日はぐったり…」という人も増えているのではないでしょうか?

この時期になると恒例になってきました、宝島社さんから出させて頂いているムック本の自律神経シリーズ、最新刊「不調にさよなら!自律神経を整える50のこと」です。この本では、自律神経のケアにつながる小さな習慣を50個集めました。小さなことでも、これらが習慣になって積み重なると日々のすごしやすさが増していくと思います。少し内容を紹介していきます。

 

・自律神経を整えるには「当たり前のこと」が大切

自律神経のケアをするには、特別な治療というよりも「当たり前のこと」が大切になります。たとえば、朝起きて、食事を摂り、適度に体を動かし、夜はゆっくりお風呂に使って寝る。一見、当たり前すぎる一日ですが、このように過ごせている方はどのくらいいるでしょうか?忙しい生活のなかで、当たり前のことを当たり前のように行うのは意外と難しいと思います。すでに定着してしまっている生活習慣を直していくことは、最初は大変なことかもしれませんが、一歩踏み出してしまえば良い循環になっていきます。50項目あるのでできそうなものからやってみるのも良いでしょう。

 

・「体」「食べもの」「生活習慣」「メンタル」の4方向からアプローチ

 

  • 体からアプローチ―11key words―

自律神経が乱れている人の中には、全身の筋肉が凝り固まっていたり、体が過度に緊張していたりすることが多いです。全身が凝っていると、血流が悪くなりますし、首肩こりはさまざまな不調を招きます。自律神経も交感神経が過剰にはたらきやすくなり、体がうまく休息モードにならずに疲労が溜まっていくでしょう。体のアプローチは、主に運動の要素です。運動と言っても、簡単なストレッチや背骨のゆがみをリセットできるような動きなど、すぐにできるものです。動くことで体に巡る酸素と血液が良くなっていくと、「なんとなく」不調だった体もすっきりしていくと思います。

 

  • 食べもの—8key words—

自律神経を整えるのに、腸内環境が整っているかどうかはとても重要なポイントです。幸せホルモンと呼ばれているセロトニンは、気分を安定や睡眠の質に関わっています。セロトニンのレベルが適切に保たれていることは、自律神経のバランスを整えるために必要です。そのセロトニンは、実は9割が小腸で作られています。食事の内容ももちろん大切ですが、食べ方や食べる量などにもコツがあります。食べ物だけでなく、水分の摂り方にもご注目頂きたいです。

 

  • 生活習慣―14key words―

生活のなかのほんの小さな工夫が、私たちの調子を左右することもあります。たとえば、入浴する時間。体調を整えるのにとても重要になるのは、睡眠の質です。睡眠によってその日の疲れやストレスがリセットできれば、朝が起きられない症状や倦怠感などが起きにくい、タフな体に近づくでしょう。入浴する時間を眠る90分~120分前にすると、体が冷めていくタイミングで自然と眠ることができますし、深く眠ることができます。

 

  • メンタル―17key words―

心がすっきりとしていると、体調も良く感じることはありますよね。心と体は連動していますので、心のケアは体調を維持する上で欠かせません。自分の心を癒すアイテムはたくさん持っているに越したことはないでしょう。幸福な人の8割以上は趣味があると言われています。毎日仕事や学校、どうしても家事育児に追われてしまう方も多いと思いますが、気分転換やストレス発散のヒントを載せているのでぜひ参考にしてみてください。

 

タイプ別診断を使って自分に合った対処法を

今回のムック本では、A・B・Cのタイプ別診断と、タイプ別の対処法をご紹介しています。Aは体こわばりタイプ、Bは睡眠トラブルタイプ、Cはストレス過多タイプです。体こわばりタイプは、筋肉の過緊張や悪い姿勢が自律神経に負担をかけている方です。不調の方はデスクワークや運動不足などで筋肉が凝っており、骨格のゆがみが大きいことがあります。緊張しきった身体をほぐし、リラックスしやすい状態にすることで自律神経への負担を減らしていきましょう。

 

睡眠トラブルタイプは、睡眠の質の悪さや睡眠不足が心身の大きな負担になっているパターンです。休息がうまくいっていないと、それがストレスとなって自律神経にも大きな負担をかけています。反対に、自律神経の乱れが睡眠のトラブルを引き起こしていることもあります。たとえば、朝起きて日光を浴びる習慣をつけるだけでも、体内リズムをリセットして睡眠の質を高めることができます。

 

最後に、ストレス過多タイプ。これは、精神的なストレスが自律神経に負担をかけているパターンです。精神的にストレスを抱えていると、人間の体は生命の機器を感じるスイッチが入り、交感神経が過剰に優位にはたらきます。私たちの生活にメンタル面のストレスは付きものかもしれませんが、今日のストレスは今日のうちにリセットしておくと良いですね。メンタルのケアこそ十分すぎるくらいこまめに行うことをお勧めします。

 

参考:「不調にさよなら!自律神経を整える50のこと」



自律神経と骨格①背骨のつくり 

2024年5月10日 17:22更新
専門外来コラム


自律神経と骨格①背骨のつくり 

 

自律神経失調症外来や気象病外来、頭痛外来など、せたがや内科・神経内科クリニックの専門外来では、骨格のゆがみや背骨に着目して治療を行っています。自律神経が大きく乱れている患者さんや不定愁訴(原因がわからない体調不良)を抱えている方は、骨格のゆがみが目立つ方が多いです。骨格は、誰しも多少は歪んでいるものなのですが、ゆがみが強くなり体のバランスが大きく乱れていくと、頭痛やめまいなどさまざまな不調を引き起こす原因となります。骨格において特に重要なのは背骨です。背骨は骨格を構成するうえで軸となり、重要な存在です。しかし、私たちが生活している中で、背骨を意識する機会は中々多くはないのではないかと思っています。今回のコラムでは骨格と背骨について書いていきましょう。

 

  • 骨格の話

人間の体は200コ以上の骨でできています。骨格というのは、体にとって大切な土台です。骨は体を支えており、骨格を成すことによって複雑な動きを可能にしています。

骨格は軸骨格と付属肢骨格の2つに大別されています。軸骨格は頭蓋骨、背骨、肋骨、胸骨から成っており、体の中心を通る軸を作っています。一方で、付属肢骨格は四肢(両腕・両足・鎖骨・肩甲骨・骨盤など)で構成されており、軸骨格に四肢がくっついているようなイメージです。それらの中でも背骨は、軸骨格の主要な動きを作る重要な存在です

 

おまけになりますが、骨格系には、体を支える(支持)、動かす(運動)だけではなく、保護、貯蔵、造血という役割もあります。保護は頭蓋骨や胸郭に当てはまり、脳や内臓などを守っています。貯蔵というのは、骨の中はカルシウムやリン酸、マグネシウムなどを蓄えて血液の中の成分を調整しています。さらに、造血は骨髄に該当します。骨髄では赤血球や白血球・血小板などの血液が造られています。

 

  • 背骨のつくり

みなさんは、背骨と言ったらどこを想像するでしょうか?背中のあたりをイメージされるかもしれませんが、正確に位置を認識している人の方が少ないかもしれません。背骨は首から胸、腰、そしてお尻の部分まで繋がっています。

背骨というのは、医学・解剖学的に言うと「脊椎」という表現をします。首のあたりになるのが脊椎、胸のあたりが胸椎、背中・腰あたりが腰椎、その下が仙椎と言います。背骨は”1という呼び方をしますが、まっすぐ1本につながっているという訳ではありません。臼のような形をした小さい骨(椎骨)が縦に連なって構成されています。小さな骨と骨との間には椎間板というクッションの役割をしたものが挟まれています。一般的によく言う椎間板ヘルニアは、このクッション約の椎間板が飛び出てしまっている状態です。

 

背骨は頚椎、胸椎、腰椎、仙骨・尾骨が連なってできています。頚椎が7コ、胸椎が12コ、腰椎が5コ、仙骨(仙椎5コ)が1コ、尾骨が1コです。人間を横から見るとS字状のカーブを描くように重なっています。頚椎と腰椎は前にカーブ、それ以外の部位は後ろにカーブしてバランスを取っています。首の始まりの第一頚椎は鼻の奥あたり、背骨の一番下にある尾骨はお尻の割れ目の上のあたりです。意外と縦に長いですよね。

 

  • 背骨の役割

背骨は骨格の中心にあり、姿勢をつくるうえでも軸となります。「骨格がゆがむ」とは、背骨がS字状に標準的なカーブを描いた状態から、カーブが強くなる、カーブが弱くなる、前から見て横方向に歪む(側弯と言います)など、正常なカーブを描かなくなることです。そもそも背骨がS字にカーブを描いているのは、頭や内臓を支え、体が動いた時の衝撃を吸収するためです。人間の体には、重力がかかっています。頭の重さは5~6kg、その重さを背骨1本で支えなければいけないため、背骨が弯曲することによって体のバランスを保っています。

 

皆さんは「背骨の動き」を意識したことがあるでしょうか?赤ちゃんの動きを想像してみてください。人間は、赤ん坊の段階では背骨の柔軟性が高く、動きもしなやかです。背中が丸まったり反ったりしても、大人と違って痛みやケガが出にくいでしょう。しかし、年齢を重ねるようになると圧倒的に増えるのが、座っている時間です。学校や会社に通うようになると、うつむき姿勢や背中が丸まった状態で何時間も作業をするというような状況が容易に想像できますよね。このように悪い姿勢でいる時間が長くなると、骨格が歪んで姿勢が悪くなるだけではなく、その姿勢が癖になって固まってしまうので、背骨の動きもどんどん悪くなっていきます。運動の習慣が無い人は、前屈や後屈、側屈などの軽い伸びをするだけでも、体の動かしづらさを感じるでしょう。背骨が本来持っている役割も発揮しきれず、アンバランスになっていきます。

 

  • 骨格が歪んでいる患者さんの特徴

自律神経失調症や気象病、その他原因不明の不定愁訴などを抱えている患者さんは、背骨がゆがんでいるケースが大半です。診察をしていて特徴的なのが、首肩こりが酷いのにも関わらずその自覚が無いということ。自分ではそこまで酷いとは思っていないため、セルフケアができていない方が多いです。そして、立って目を閉じて頂くと、フラフラで立っていられないほどのこともあります。普段は目で補正をしているのですが、骨格がゆがんで左右差があると体のバランスを取るのが難しくなっているのです。これがめまいの原因にもなります。骨格が歪んでいると、さまざまな不調を引き起こすため、背骨のケアはとても大切です。

 



春に起こりやすい不調・寒暖差疲労②対策

2024年4月10日 21:01更新
専門外来コラム


春に起こりやすい不調・寒暖差疲労②対策

 

先月のコラムでは、春に起こりやすい不調や寒暖差疲労についてお話しました。今年の春は、2月は季節外れの暖かさになったものの、3月に入ると中々気温が上がらず、春にしては気圧の上下や雨が多かったように思います。桜の開花も遅れましたね。目まぐるしく変わる気候に、すでに体調を崩してばかりの方も多いかもしれません。今回は春の不調の対策について書いていきます。

 

  • 春の不調を乗り切るための対策は?

 

①不調の傾向を「なんとなく」把握する

春は本当に体調を崩す要素が多い季節です。体調が悪い時はさまざまな要因が重なっていることが大半ですが、気圧に弱い、寒暖差に弱いなど、人それぞれに傾向はありますよね。

自分の不調が何によって起きているのか、寒暖差や気圧、花粉など、自分が弱い気候変動やダメージを受けやすいストレスについて知っておきましょう。

 

たとえば寒暖差の影響を一番受けやすい方は、体温調節と冷え対策に焦点を置いた方が良いです。毎日欠かさずお風呂に入ったり服装に気を付けたりと、小さな工夫ができるだけでも体調への影響が変わってきます。また、気圧に弱い方は、気圧の予報を見てスケジュールを立てると体への負担を減らせるでしょう。

 

このように、ポイントなのは、自分の傾向を「なんとなく」把握するということです。あまり細かく考えてしまうと、環境の変化や不調に意識が行きすぎてストレスが増えてしまいますのでお勧めしません。「なんとなく」で良いので自分の取り扱いがわかってくると、不調がある中でも生活が楽になっていくと思います。

 

②寒暖差には服装調整と入浴で冷え対策

春の装いは華やかで素敵ですが、冬の装いから一転、急に肌の露出が増えたり薄手の生地の服になったりしますよね。確かに日中は暖かいので薄着で丁度良いこともありますが、夕方になると一気に冷え込むので、薄着のままでいると体が冷えてしまい寒暖差の影響をもろに受けてしまいます。

 

「服装の工夫でそこまで体調に影響するの?」と思う方もいるかもしれませんが、たとえば足首を出さないように工夫するだけでも体の冷え具合が違ってきます。冷えを我慢し続ける日々と、小さな冷え対策をつみ重ねた生活とでは、後々に感じる体調が変わってくるでしょう。

 

「首」をつく場所は太い血管が通っており、体の冷えに影響します。春の寒暖差で少し肌寒い時は手首・足首・首を冷やさないようにすると、体から出ていく熱が少なくて済みます。春はストールを1枚持っておくと便利ですね。

 

服装は冷えの予防に役立ちますが、もう一つ大切なのが入浴です。入浴は、1日に蓄積した冷えをリセットするイメージです。お風呂に入ることは、自律神経の調整、睡眠の質の向上、血流の改善、代謝のアップ、リラックスなどさまざまな効果があります。1日を頑張った最後にゆっくりお風呂に浸かることは当たり前のようで、心身の健康にとってとても有益な習慣ですよ。

 

③花粉症の方は我慢しすぎずに病院へ

そろそろピークを越してくる時期ですが、花粉症対策についてもご紹介します。花粉症の方は、毎日さまざまな症状が出ていると思います。花粉症で弱っている分だけエネルギーが消耗されているので、もちろん自律神経のキャパシティーも小さくなり、それ以外の不調も出やすい状態です。花粉症は薬である程度症状を軽くすることも可能なので、我慢しすぎずに早めに病院を頼ってみましょう。

 

④骨格のメンテナンスを習慣に

寒暖差疲労や気圧の上下により、自律神経は疲れきってしまっている状態です。みなさんは背骨の動きを意識したことがあるでしょうか?背骨は自律神経の通り道でもあるので、背骨のゆがみが少ないこと、背骨の柔軟性を高めることが、自律神経のはたらきにとって大切な2点です。背骨は姿勢の要となる存在で、背骨のゆがみが骨格や姿勢のゆがみをもたらします。以下、背骨のエクササイズをご紹介するのでぜひやってみましょう。

 

≪背骨の屈曲と伸展≫

※タオルを用意します。

ⅰタオルを横に長く持ちます。息を吐いて、みぞおちの辺りを思いきり凹ませるように背骨をC字に丸めます。両腕は前方向にパンチするように水平に保ちます。この時、呼吸は止めないこと。また、肩は力んで上がらないように力を抜きましょう。

 

ⅱ今度は息を吸って、手はバンザイをするように上へ。胸を開き背骨を少し反らせて伸びを感じましょう。

 

ⅰ、ⅱの動きを10回ほど。無理のない範囲で行いましょう。お腹の力が抜けてしまうと腰を痛めてしまう可能性があるので、ご注意ください。

 

≪背骨の側屈≫

タオルを横に長く持ちます。両腕を上げた状態で息を吸い、吐きながら右に体を傾けます。左の脇の下あたりが伸びるのを感じながら、背骨が上と下に引っ張られている感じも意識して傾けましょう。元に戻ったら今度は左も同様に行います。左右10回繰り返しましょう。

 

⑤寒暖差腰痛の対策

寒暖差腰痛についてもお話しました。

 

https://youtu.be/7Goh8G1EU1s?si=um5JRt3qexZq4jjc

 

提携先の賀来大樹さんの動画でも腰痛の対策について発信されていたので、ここにも載せておきます。寒暖差に限らず腰痛で悩まれている方は多いと思います。ぜひ参考にしてみてください。



春に起こりやすい不調・寒暖差疲労①

2024年3月12日 14:06更新
専門外来コラム


春に起こりやすい不調・寒暖差疲労①

 

今年度も終わりに差し掛かってきました。気温も少しずつ上がり、日差しの暖かさを感じるようになってきたと思います。春になると卒業式や入学式などの行事や、桜も咲き始めるのでお花見、おでかけなどの行楽イベントも増えますよね。せっかくなので元気に乗り越えたいところですが、春は寒暖差や気候変動が激しかったり花粉が飛んだり。自律神経が乱れやすく、体調にも負担のかかる季節でもあります。

今回のコラムでは、春に起こりやすい不調の特徴についてご紹介していきます。

 

  • 春の気候の特徴

春の気候は、何と言っても寒暖差が大きく変化が起きやすいです。季節の変わり目なので、1日の気温差が大きいだけでなく、日によって冬に戻ったり夏寄りの気候になったりと、目まぐるしく気候が変動します。そして、風が強く空気が乾燥しています。昨年の春は「春の熱中症」が特集されていたくらいなので、目ぼしがつきにくい季節です。

 

暖かいと思ったら寒さを感じて体が冷えたり、乾燥で目や喉の調子が優れなかったりします。気圧も安定しないので、季節に体が馴染むまでが大変です。また、暖かさを感じる頃からスギ花粉や黄砂が飛び始めるので、気温、気圧、湿度、花粉など、さまざまな要因が重なると、心身にかかる負担が大きくなります。

 

  • 春に起こりやすい不調は?

①寒暖差疲労・寒暖差アレルギー

寒暖差疲労とは、気温差によって起こるさまざまな不調のことをいいます。具体的には、疲労感、倦怠感、首肩こり、冷え性、咳や鼻水などのアレルギー症状、メンタルの不調などがあります。春は寒暖差が大きいので、専門外来でも、ぐったりと疲れてしまったり、なんとなく調子が出ないという方が増えてくる印象です。

 

人間の体は、どんな環境にいてもおよそ36℃~37℃くらいの平熱で保たれています。外の気温が上下した時は、環境の変化に対応するために自律神経が体温を調節するようにはたらきます。そのため寒暖差が続くと、体温を一定に保つために自律神経がたくさんはたらかなければいけないので、エネルギーが消耗されてしまいます。

 

②花粉症

春は花粉の季節ですね。3月はちょうどスギ花粉のピークに値する時期でしょう。花粉症は、花粉によって引き起こされるアレルギー症状のことを指します。症状は、鼻水、鼻づまり、くしゃみ、目のかゆみなどです。喘息やアトピー性皮膚炎につながることもあります。一般的には、スギ花粉・ヒノキ花粉による花粉症が多いです。人によってはブタクサやヨモギ、イネ科の植物など秋に飛散する花粉で症状が出る方もいます。

 

最近では、モーニングアタックと言って、朝早くの時間に花粉症の症状が強く出やすいことがわかっています。ウェザーニュースさんの調査によると、花粉症が辛い時間は、1位が14時頃、続いて2位が6~8時頃となっています。

朝目覚めたときは、副交感神経が優位な状態から、交感神経が優位な状態に切り替わる時間です。交感神経にスイッチが入るタイミングなので、鼻が刺激に過敏になっている時間帯でもあります。花粉を始め、布団や室内のハウスダストなども混ざって吸い込むことで花粉症の症状が出やすいです。

 

③メンタルの不調

自律神経はとにかく「変化に弱い」という性質を持っています。春は気候だけではなく、年度末・年始始めということもあり、卒業や転職、入学や就職、引っ越しなど環境の変化も大きいシーズンです。つまり、とても自律神経が乱れやすい状況にあります。また、寒い季節は交感神経が優位にはたらく量が多くなりやすいのですが、春になって急にあたたかさを感じるようになると、全体的に、日中でも副交感神経の活動が増えます。すると、心身にスイッチが入りにくくなり、怠さや元気の無さを感じやすくなります。

 

自律神経が乱れると心の面でも不安定になりやすいので、さまざまなストレスが積み重なって対処しきれなくなってくると、メンタルの不調も出てきます。感情がコントロールできない、無気力になってしまった、などという方は、心の問題だけでなく自律神経にも目を向けて対策をしてみましょう。

 

④肌トラブル

寒暖差や乾燥による肌へのストレスや、紫外線、花粉・黄砂などの刺激などによって、春は肌にとっても辛い季節です。自律神経が乱れていると、体の免疫機能が正常にはたらくことが難しくなり、肌荒れなどの肌トラブルが生じやすくなります。肌の調子は体の外側・内側どちらからもケアできるように意識した方が良いでしょう。

 

⑤腰痛

最近、寒暖差の影響で痛みが出る方が増えています。「寒暖差腰痛」と、呼ばれているようです。暖かいと何となく体の緊張が抜けていると思いますが、寒くなると体が縮こまりますよね。寒暖差に合わせて緊張したり緩んだりを繰り返すと、不意のタイミングで腰を痛めやすいです。特に今年は、寒暖差腰痛を訴える方が多くなっています。

 

自律神経は体温調節をするのに重要なはたらきをしており、寒暖差が大きい季節には自律神経が酷使されて乱れやすくなります。自律神経が乱れると、血流が悪くなるので冷えにつながります。血管が収縮し、筋肉が硬くなることによって末梢神経という神経が圧迫され、腰痛を引き起こすこともあるでしょう。特に日本は座りっぱなしの姿勢で過ごしている人が多いです。座っている方が腰への負担が大きくなるので、デスクワークの方は立ったり歩いたりする時間を積極的に取っていきたいものですね。

春は明るいイメージがありますが、健康面で考えると少し負担の大きいシーズンです。

「なんとなく」の不調がある方も、しっかり対策をして元気に過ごしたいですね。対策については次回のコラムでご紹介していきます。

 



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