首肩こりと不定愁訴-運動と漢方によるアプローチ①-
2025年4月8日 12:30更新
専門外来コラム
首肩こりと不定愁訴-運動と漢方によるアプローチ①-
首肩こりは日本人の国民病とも言われています。スマートフォンの普及やデスクワーク・在宅ワークの増加により、首肩こりが当たり前のように感じている方も多くお見掛けします。首肩こりは私たちの日常生活を妨げる不快な症状ですが、それを発端にさまざまな不定愁訴が起こっているということは、あまり知られていないようです。気象病・自律神経失調症専門外来に来る患者さんは皆、強い首肩こり持ちです。しかし、自覚すらない場合が多く、頭痛やめまい、全身倦怠感、吐き気など他の症状を主訴として受診されています。首肩こりの対処法に関する情報が飛び交っているものの、何が正しいのか判断が付き兼ねることもあるのではないでしょうか。まずは首肩こりがどのようにして起きているのかを知って頂き、ご自身に合った解消法を見つけましょう。
- 首肩こりの正体は?
首肩こりの「こり(凝り)」というのは、特定の筋肉の使い過ぎや筋力不足などによって筋肉の過緊張が続き、血行が悪くなっている状態です。つまり、首肩こりは、首肩まわりの筋肉が血行不良になっているということです。そもそも首は5㎏前後の頭を支えており、元々大きな負荷がかかりやすい場所です。私たち現代人は、長時間うつむき姿勢をする生活が定着してしまいました。うつむき姿勢は首肩まわりの筋肉に大きな負担がかかるので、首肩こりに悩まされる人が多いのも当然と言えるでしょう。首肩まわりの血液の循環が悪くなっていると、その部分に酸素や栄養が十分に行き届かなくなります。それだけではなく、老廃物が溜まりやすく、痛みにつながります。
- 首肩こりを引き起こす要因5つ
[①不良姿勢・骨格のゆがみ]
姿勢が悪いと、首肩まわりの筋肉に過度の負荷がかかり続けることになります。デスクワークやスマホを触っている時の姿勢は、頭がやや下がり、それを首肩で支えている状態です。痛みや凝りを感じていない時でも、首肩にはかなりの負担がかかっています。
首や頭が前に出ている姿勢が続くと、首肩をつなぐ胸鎖乳突筋という筋肉が硬くなります。骨格が歪んでいてストレートネックや猫背などがある方は、本人はまっすぐに立っているつもりでも、すでに頭が前に出てしまっています。すると、首肩まわりの筋肉は常に負担がかかっていて休まる暇もありません。
[②筋力不足]
重い荷物を持ったときを想像してみてください。荷物を持つための筋肉に過度な緊張が加わり、腕が痛くなったり張ったりすることがあると思います。首肩も同じです。そもそも筋力が足りていないと使い過ぎの状態になり、筋肉が伸びた状態で固まってしまっています。いくらストレッチしてメンテナンスを頑張っている人でも、筋力が不足していると首肩こりがすぐに起きてしまうのです。首肩こりによる不調が起こりやすいのは、首が細く、なで肩、そして女性であることが多いのをご存じでしょうか。というのは、女性は本来男性よりも筋肉量が少ないので、筋力不足による首肩こりを引き起こしやすいということです。
[③運動不足・誤ったメンテナンス]
運動不足の人は体を積極的に動かす機会が無いため、首肩まわりだけでなく、体全体が凝り固まってしまっている場合が多いです。一方、運動習慣のある人はさまざまな筋肉を動かし、血液の循環も良くなるため、筋肉の凝り固まり加減が変わってきます。たとえば水泳は、水を押しのけるために腕全体を回したり動かしたりますよね。この動きは肩甲骨がよく動くので、首肩こり対策には良い動きです。
また、首肩こりの原因が筋力不足にあるにも関わらず、ストレッチしかできていない場合、ストレッチというメンテナンスでは不十分です。もしも「毎日欠かさずストレッチしているのに首肩こりが治らない!」という人は、ストレッチはできていても、姿勢を維持するための筋力が足りなかったり、体のバランスが悪かったりと他にも問題があり、メンテナンス方法がご自身に合っていないのかもしれません。
[④自律神経が乱れている・ストレス]
自律神経と首肩こりはお互いに影響し合っています。というのは、「自律神経が乱れる→首肩こりが起こる」「首肩こりが酷い→自律神経が乱れやすくなる」という双方向の関係です。せたがや内科の自律神経失調症専門外来には、頭痛やめまい、倦怠感など全身にさまざまな不調が出ており、ご自身で自覚ができないほどに首肩が凝っている患者さんが多くいらっしゃいます。ストレス等で自律神経が乱れて首肩が凝り、余計に自律神経が整えづらくなって負の連鎖が起こってしまうのです。そのような方は、首肩こりを改善するストレッチやエクササイズを実施すると不調も良くなることが多いです。
[⑤血行不良]
首肩こりの正体は首肩まわりの筋肉の血行不良ですが、そもそも体全体が血行不良に陥っていると、首肩こりを引き起こしやすい体質になります。血行不良の原因はさまざまですが、体が冷えていると冷えた血液が全身を巡り、循環も悪くなっていきます。特に首は露出していることが多く冷えやすい場所でもあるので、首を温めたりお風呂に入ることが有効です。血行不良は冷えだけでなく、ストレスや運動不足でも起こります。そのため、上記の5つは独立しているというよりかは、それぞれが影響し合っていると考えた方が良いでしょう。
- 治療の選択肢は漢方、ストレッチ、運動
一時的に血行不良を解消する方法はありますが、それでも慢性的に首肩こりに悩まされているという方は、生活習慣に問題があったり、骨格にゆがみが生じて改善しづらい体になっていたりする可能性があります。その場合は、首肩まわりを軽くストレッチするだけではメンテナンスが足りないかもしれません。根本的に治したいという方は、漢方薬の併用や、背骨全体のメンテナンスをする必要があります。(次回のコラムで詳しく書いていきます)
前へ:« 自律神経が乱れやすい春の不調とメンタルケア
次へ: