「せたがや内科専門外来の運動処方について」



「せたがや内科専門外来の運動処方について」

2024年11月12日 07:30更新
専門外来コラム


2024・11コラム

「せたがや内科専門外来の運動処方について」

 

自律神経失調症専門外来では、患者さんの状態に応じて主に運動を勧めています。運動処方と言ってもお薬のように正式な方法ではありませんですが、治療として「休むだけではなく、運動することも有効です」ということをお伝えして、簡単な運動などを指導しています。とはいえ、運動といってもさまざまですよね。実は「呼吸」も運動に入ります。自律神経失調症専門外来や原因不明の体調不良でお困りの患者さんは、症状も一人ひとり異なります。運動ができそうな方もいれば、起き上がって通院するのがやっとだという方もいます。必要であれば薬で治療をすることもありますが、患者さんの状態に応じて生活習慣の改善や運動の指導もさせて頂いています。今回は、私が診察で患者さんにお伝えしている運動についてご紹介します。

 

自律神経の不調に必要な運動

一般的に、運動というと生活習慣病予防や高齢者のフレイル予防など、病気の予防を目的としたものが推奨されている場合が多いです。不調を改善するための運動となると、また少し目的や内容が異なってきます。もちろん、どの運動も健康にとって良い事なのですが、自律神経失調症専門外来のような不調を持った方は、以下のことを優先して行った方が良いと考えています。

 

  • 呼吸で自律神経を整える

「ぐったりしていて動けない」という方も、「ある程度動けるけれど万全ではない」という方も、不調がある人に共通して重要なのが呼吸法です。呼吸は私たちが普段から無意識に行っているので気づきにくいかもしれませんが、呼吸も立派な運動の一つです。呼吸と自律神経には深い関係があります。呼吸は寝ている時でも自動的に一定のリズムで行われているものでもあり、自分の意思で吸ったり吐いたりできる運動です。息を吐くと副交感神経が優位、吸うと交感神経が優位に働くので、呼吸がうまくできる人は自律神経も整いやすいです。

深い呼吸法ができるようになると、呼吸をするのに想像以上に腹筋を使い、肋骨が下に動くことに気づくと思います。本当に呼吸が浅くなっている方はもしかしたら、筋肉痛になるかもしれません。呼吸が深くなると自然と眠りが深くなるので睡眠の質も良くなります。朝起き上がれなかったり疲れがとれなかったりする症状がある人の中には、寝ているようで眠れていない隠れ不眠の方もいます。

 

  • 首肩こりの応急処置

体調が悪い人は、大半が酷い首肩こりを持っています。首肩こりがあると頭痛やめまい、吐き気、息苦しさなど様々な不調が連鎖していきます。首肩こりの原因は、悪い姿勢や体のゆがみによって首肩まわりの筋肉に過度な負担がかかること、首肩まわりの筋肉の血行不良、ストレスによる首肩まわりの過緊張などが挙げられます。

 

 

  • 動ける人は好きな運動をしてOK

ある程度動ける人は、好きな運動から始めてみましょう。怪我をしたり具合が悪くなったりするまで負荷の高い運動でなければ大丈夫です。たとえばウォーキング、ジョギング、スイミング、サイクリングなどの有酸素運動だと基礎的な体力づくりにもつながります。これらのような運動はリズムを刻んだ動きがありますよね。リズムのある運動はストレスの解消になり、メンタル面でも大きな助けになります。ほどよい疲れでぐっすり眠れるようになるので睡眠の質も上がります。体調が優れないとき、「眠れていますか?」「食べられていますか?」の2つの質問は必ず聞かれる質問ですよね。心身の健康を保つ上で大切なのは食事と睡眠ですが、それを促してくれるのが運動です。

 

  • 背骨を意識した運動で不調を根本から解消へ

自律神経失調症やその他の原因不明の体調不良を生む大きな要因の一つに、「骨格のゆがみ」があります。簡単に言い換えると、姿勢の悪さです。ストレートネックや猫背、巻き肩(方が内側に丸まってしまっている状態)や腰痛、股関節の違和感など、骨格がゆがんでいると骨格の面でさまざまな異常が出てきます。ただ単に骨格が歪んでいるだけなのなら見栄えが少々悪くなるだけで済むのですが、この歪みが実は原因不明の体調不良の引き金になっていることがあります。

骨格を作る中心となっているのが背骨です。私の著書になりますが、「不調がデフォな私たちの”背骨リセット”」という本では、背骨のコンディショニングや背骨の動きに着目したエクササイズをテーマにしています。背骨の動きを意識した運動は、多くの人にとっては馴染みのないと思います。しかし、ヨガやピラティスなどのマットを使う運動をイメージするとどうでしょうか?少し想像しやすくなると思います。この本では、ストレッチやピラティスの簡単な動きなど、不調別に応じたさまざまな運動を紹介しています。

大人になるにつれて背骨の動きは悪くなっているのは確かなので、背骨を意識した運動はすべての人にとって必要なのかもしれません。背骨の動きが良くなると呼吸もしやすくなるので、自律神経にとっても良い循環が生まれます。

 

本格的に運動したくなったら専門家の指導を受けてみましょう

今回は触れませんでしたが、運動習慣をつけるのに筋トレも無くてはならない存在です。有酸素運動、筋トレ、背骨のメンテナンス、ストレッチ…忙しい生活の中でここまでのことを自分で実践するのは大変だと思います。本来は一人ひとりの体の状態や体調に合った運動をする必要があるので、どのメニューや組み合わせが良いのかを考慮したオーダーメイドの運動がしたいと思われる方はやはり、運動の専門家の指導を受けた方が良いでしょう。私は残念ですが医師としての指導しかできませんので、ご自身の目的に合った専門家の元を訪ねてみてください。





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