自律神経が乱れやすい春の不調とメンタルケア
2025年3月4日 08:06更新
専門外来コラム
自律神経が乱れやすい春の不調とメンタルケア
春といえば、厳しい寒さから解放されて桜の開花を待つ季節。ポジティブなイメージが強いですが、実は自律神経にとって春は厳しい環境です。春は寒気と暖気が交互に訪れるため、暖かさを感じる日もあれば肌寒さを感じる日があり、日々の気温の変化が大きくなります。激しく上下する気温の変化に振り回されているところに、爆弾低気圧と呼ばれる急激な気圧低下が発生するのも春の特徴です。とにかく気候変化が目まぐるしいため、「変化」を大の苦手とする自律神経にとっては、かなり無理を強いられる季節です。そして、体調が不安定になりやすい時こそ気をつけたいのがメンタル面の健康です。気候変動が激しいだけで心の容量が少なくなり、普段は平気なストレスでも耐えられなくなってしまう、という事態もあり得ます。今回のコラムが自分を大切にするきっかけになると幸いです。
- 春に気をつけたい4つの不調
[寒暖差疲労]
春は肌寒い日と暖かい日が交互に訪れるため、前日と当日との寒暖差、1週間単位での寒暖差が大きいのが特徴です。さらに、朝晩は冬の名残を感じる冷え込み、日中は最高気温が20℃前後の暖かさになるので、1日のうちで寒と暖の両方を感じ、体温調節機能を担当している自律神経は大忙しです。寒暖差疲労の症状は主に、冷え性、疲労感・倦怠感、首肩こり、頭痛、メンタルの不調、のぼせなどです。「心当たりがないのになんとなく調子が悪い」という方は寒暖差疲労の可能性があります。
[頭痛]
頭痛といえば大きく緊張性頭痛・片頭痛の2つに分けられますが(命に関わらない頭痛の場合)、春はこの両方が発症しやすい気候です。暖→寒の影響で体が収縮すると緊張性頭痛、寒→暖で血管が拡張すると片頭痛が起こりやすくなります。緊張性頭痛は血行を良くする方法が有効なので、温めたり首肩をマッサージ・ストレッチしたりすることで痛みを和らげることができます。一方で、片頭痛は急に血行が促された時に発作が起きやすいため、痛みが酷くて動けなくなった時は温めてはいけません。疼痛部を冷やすと一時的に痛みが緩和される場合もありますが、まずは暗い静かな部屋で安静にするのが優先です。緊張性頭痛と片頭痛では対処方法が異なりますので、どちらも症状があるという方は日頃のメンテナンスと症状が出た時の対処法を上手に使い分けていきましょう。
[花粉症]
今年は花粉の飛散が1月末(関東)に確認されましたが、気温が上昇し本格的にスギ花粉が飛び始めるのが3月です。花粉症の症状は鼻水・鼻づまり、くしゃみ、目のかゆみなど。最近では花粉による皮膚炎も増加しています。花粉症は一種のアレルギーなので、薬などで症状を緩和することができます。辛い方は早めに治療をして対策しましょう。
[メンタル]
春はメンタルを崩しやすい代表的なシーズンです。気候の変化、環境の変化が大きく、自律神経が乱れやすい要因がたくさんあります。冬は寒さの影響で交感神経が優位に働き緊張状態が続きますが、春になると副交感神経が優位になり、自動的に無気力状態になりやすいです。やる気が出ずに気持ちが上がらないことがあります。そんな中で寒暖差や気圧の上下も激しいので、気象病の症状として急に不安や落ち込みが激しくなることもあります。年度の変わり目で人間関係や居場所も新しくなる機会も多いので、ストレスを感じる季節です。女性は貧血が重なるとメンタルを保つことがより難しくなります。
- 運動のメンタル効果
運動は、実はうつ病や不安症の治療に用いられるほどメンタル面に良い効果をもたらすと言われています。運動をすると“幸せホルモン”と呼ばれている物質の一つであるエンドルフィンが出るため、気分が上向きます。その他にも運動によって多くの脳内物質が活性化され、不安が和らぐ、やる気が出るなどの効果が得られます。さらに、定期的に運動習慣(例えば20分のランニングを週3回続ける)を付けると、脳の構造や神経系にも変化をもたらし、記憶力の向上や喜びを感じやすくなるなど、メンタル面において好循環をもたらします。人間は本来動くようにできています。心も身体も人間らしい生活を目指すことは、自律神経を整えるための最善策でもあります。運動が苦手な方もいると思いますので、まずは自分の好きな運動・できそうなことから始めましょう。
- メンタルの安定はストレスマネジメントから
[自分を取りまくストレスを整理する]
気候変動(気圧、寒暖差など)、環境、人間関係、体調不良、個人的な悩み事など、私たちはさまざまなストレスに囲まれて生活しています。忙しく生活に追われていると、自分のストレスに気づくこともなく突然に限界を迎えてしまう方も少なくありません。まずは自分の状況を俯瞰で見て整理しましょう。その次に、「変えられるもの」「自分で減らせるもの」から変えてストレスのバランスを取ると良いかもしれません。
[“趣味を持つ”という余白を作る]
自分の好きなことをする時間がある方はどのくらいいるでしょうか?幸福を感じて生きている人の8割は、趣味があると言われています。趣味がメンタルヘルスを向上させるという事実は、さまざまな研究でわかっています。好きなことに没頭する時間は、仕事や心配事から解放される時間でもあります。逆に、趣味の時間が取れないという方は、それだけ時間にも心にも余白が無いという印でもあります。余裕のない生活はそれだけ自律神経にも負担がかかっているということです。趣味と言ってしまうと敷居が上がってしまうという場合は、生活の中で「気持ちが上がる」「心が躍る」瞬間を見つけてみましょう。好きなことを見つけている時間は、ストレスから解放される大切な時間ですね。
参考文献:
「スタンフォード式 人生を変える運動の科学」2020.4 大和書房. ケリー・マクゴニガル著
「不調にさよなら!自律神経を整える50のこと」2024.6宝島社. 久手堅司 監修
「毎日がラクになる!自律神経が整う本」2022.6 宝島社. 久手堅司 監修
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