貧血について
2017年12月2日 16:33更新
専門外来コラム
貧血とは、体内に鉄が欠乏している状態です。
一般的には、血液中のHb(ヘモグロビン)濃度が低下している事を指しています。
貧血では、肩こり、頭痛、めまい、倦怠感、動悸、息切れ、冷え、寒暖差疲労など様々な症状が出現します。
当院の専門外来である頭痛・肩こり外来、自律神経失調症外来、気象病外来を受診される方にも、貧血や隠れ貧血はよく見られます。
細胞には酸素が必要です。呼吸によって肺に取り込まれた酸素は、赤血球内のヘモグロビンと結合して、四肢末端まで運ばれます。
そのため、体内に鉄分が不足すると様々な悪影響を及ぼします。
成人の鉄総量は3-5gです。その割合に関しては、下記で述べます。
1日に1mgが体外へ出ていきます。女性では生理出血で20-30mgを失うとされています。
貧血の原因は、様々ですが、最も多いのが鉄欠乏性貧血です。
女性に多い理由は、生理周期で出血を伴うことが一番の理由です。
その他の理由としては、腎臓の機能障害に伴う腎性貧血、慢性炎症(関節リウマチなど)に伴う貧血などが挙げられます。
ここでは鉄欠乏性貧血について話していきます。
健康診断などの採血では、ヘモグロビン(Hb)、ヘマトクリット(Ht)、MCV(平均赤血球容積)、MCH(平均赤血球血色素量)、MCHC(平均赤血球ヘモグロビン量)、Fe(血清鉄)などです。
フェリチン、Fe(血清鉄)、TIBC、UIBCという数値は、健康診断ではあまり測定されません。
人間ドックでは測定されることもあります。
下記が鉄に関する基準値や参考値となります。
検査項目 |
基準値 |
赤血球数 |
女性 380万~480万 個/μl 男性 410万~550万 個/μl |
ヘモグロビン |
女性 12-16 g/dl 男性 14-18 g/dl |
Ht |
女性 36-45 % 男性 40-50 % |
MCV |
81-100 fl |
MCH |
27-32 pg |
MCHC |
31-36 % |
Fe |
女性 50-170 μg/dl 男性 60-210 μg/dl |
TIBC |
女性 260-420 μg/dl 男性 250-385 μg/dl |
UIBC |
女性 130-380 ng/ml 男性 110-330 ng/ml |
フェリチン |
女性 5-157 ng/ml 男性 20-280 ng/ml |
用語の説明:簡単な説明なので足りない部分はあると思います。
ヘモグロビン:赤血球の中にあり、ヘムとグロビンという物質が結合しています。ヘムは酸素と結びつく性質があります。
ヘマトクリット:血液中に占めている血球体積のわりありです。
MCV(平均赤血球容積):これは赤血球の大きさです。
MCH(平均赤血球ヘモグロビン値):赤血球1個あたりに含まれるヘモグロビン量の平均値。
MCHC(平均赤血球色素濃度):一定容積の赤血球に含まれるヘモグロビン量の平均値。
TIBC(総鉄結合能):血液中のトランスフェリンが鉄と結合できる総鉄量を示しています。
UIBC(不飽和鉄結合能):血液中の鉄と結合していないトランスフェリンを示しています。
トランスフェリン:トランスフェリンは肝臓で生成されるタンパク質です。血液中の鉄と結合する働きがあります。
フェリチン:内部に鉄分を貯蔵できるタンパク質です。鉄を細胞内に貯蔵して、トランスフェリンと鉄の交換を行なって、血液中の鉄を維持しています。
鉄の役割分類:
体内の鉄には、機能性鉄、貯蔵鉄、運搬鉄の3つの分類となります。
①機能性鉄は、ヘモグロビン(他にもありますがここでは省略します)が大半を占めております。体内の鉄量でも60~70%です。そのほかに、ミオグロビンやチトクロームがあります。
②運搬鉄には、トランスフェリンがあります。体内の鉄量の0.2~0.3%位です。
③貯蔵鉄は、フェリチンがあります。これは、体内の鉄量の25%前後です。肝臓や脾臓、骨髄や腸管に貯蔵されています。
割合から考えると、ヘモグロビンとフェリチンが重要になります。
体内の鉄分は、2/3がヘモグロビンの中に存在しています。残り1/3の中でも重要なのが、フェリチンとなります。
ヘモグロビン量が正常範囲内だと貧血ではないと思いがちですがそうではありません。
体内のストック分のフェリチンが少なくなると、隠れ貧血となってしまいます。
隠れ貧血でも、貧血の症状は出るのです。
先ほどから色んな数値が出てきていますが、当院で目安としているのは、Hb、Fe、フェリチンを目安にして以下の判断をしています。
当院では、
正常
軽めの隠れ貧血
重めの隠れ貧血
鉄欠乏性貧血
の4つで判断しています。
女性の場合で表にしてみます。おおよそ目安になります。
Hb g/dl |
Fe μg/dl |
フェリチン ng/ml |
|
正常 |
14以上 |
110以上 |
100以上 |
軽めの隠れ貧血 |
13~14未満 |
50-100 |
50~80 |
重めの隠れ貧血 |
12~13未満 |
50-100 |
20~50未満 |
鉄欠乏性貧血 |
11以下 |
50以下 |
20以下 |
正常、貧血、隠れ貧血で判断をして、臨床的な症状と合致するかが重要となってきます。
貧血、隠れ貧血で症状が出ている方は、Hbが13g/dl以上、フェリチンが50 ng/mlを超えるまでは、貧血の治療を勧めています。
上記の表にあるように、全て正常なのが理想ではありますが、そうでなくても症状の改善は見られます。
貧血や隠れ貧血には注意をされて下さい。
※鉄剤等の投薬には診察により保険適用外となる場合もあります。
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