自律神経失調症について その3



自律神経失調症について その3

2019年12月11日 22:14更新
専門外来コラム


11/13の専門外来コラムの続きになっています。

 

2018年12月14日に出版となった拙書「最高のパフォーマンスを引き出す自律神経の整え方」から抜粋と一部手を加えての内容となっていく予定です。

 

不定愁訴=自律神経失調症ではないというのが私の考え方です。

そして、骨格と自律神経は非常に強い関係性を持っています。

 

60~68Pの引用になっています。絵を添付していないので分かりにくいかもしれません。

 

それでは、人間の骨格について、より詳しくみていきましょう。

 

 キーポイントとなるのは脊椎、つまり 24   個の背骨です。

人の骨格は、ざっくり言うと「頭蓋骨→頚椎→胸椎→腰椎→仙骨+骨盤→大腿骨→下腿骨→足関節」で構成されています。

脊椎は骨格の中心部分にあり、全身を安定させています。また、車のサスペンションのように、衝撃や振動を吸収してボディを安定させるバネの役割をしています。

 

頭蓋骨 頚椎 胸椎 脊椎 (計24個の 背骨) 腰椎 骨盤 大腿骨 下腿骨 足関節 仙骨

ということは、脊椎が変形し、動きが制限されていれば、全身にさまざまな症状 が出るのです。

脊椎は 24 個あり、それぞれ靭帯や筋肉とつながっています。

上から、「頚椎」(首の骨)が7個、「胸椎」(胸の骨)が 12 個、「腰椎」(腰の骨)が5個あります。これらは基本的に、連動して動いています。

試しに、左手を背骨の上の方に当てて、首を右にねじってみましょう。首を右に回したときには、頚椎だけではなく、胸椎も動いているのを感じると思います。頚椎、胸椎、腰椎が単独で動くことは少ないのです。

すると、腰痛がある場合には、首にも痛みやゆがみがある、といった場合が多くみられます。逆に首に痛みがある場合には、腰痛がある場合が多いです。

腰痛が治ったと思ったら、首の痛みを感じる方もいます。この場合には、腰痛の方を強く感じていたために、首の痛みを認知していなかった場合が多いです。

 

2足歩行に進化したことで人の体は不安定になった

 

骨格の観点からいうと、人間は2足歩行であるために、脊椎がゆがみやすく、より自律神経が乱れやすいと考えられます。

2足歩行である人間と4足歩行であるチンパンジーは、祖先が同じであるとされています。人間とチンパンジーの骨格を比較してみましょう。

4足歩行は両手と両足を使って、4点で体を支えています。これは橋が丸くなって強度を保っているのと同じで、とても安定した状態です。

この丸くなっている部分は、腹部を丸めることで腰椎を屈曲させてつくっています。たとえば、お相撲さんが四股を踏んで両手をついて「はっけよい」したときの状態というのは、とても安定していますので、簡単には崩すことができませんよね。

ところが人間は2つの足で、すべての体重を支えないといけなくなりました。これは4足歩行に比べるとかなり不安定な状態です。そこで重要なのが、土踏まずがあるということだと考えられています。 自分の足の裏を見てください。土踏まずはアーチ状になっているので、その名のとおり、土がつきません。このアーチが非常に重要です。指先からかかとの間に、小さい橋が架かっているような状態だと考えられます。

ちょうどこの橋の上に、重たくて不安定な頭が乗っている状態が理想的な骨格だといえます。

 

人間は大脳が発達したため、頭が重くなり、重力の影響をより強く受けることになりました。しかし、土踏まずのアーチの上に頭が乗っていると、重力に対し、土踏まずが縦のクッション(バネ)の役割をしてくれます。そして、脊椎の S字構造が横のクッション(バネ)の役割をしてくれます。

土踏まず‐脊椎‐頭のバランスがうまくとれた状態が、人の体にとって負担のない状態といえます。つまり、骨格がゆがんでおらず、自律神経も乱れにくい状態なのです。

 

ヒトとチンパンジーの骨格の違い

 

土踏まずがある

土踏まずがない

股関節は 屈曲

骨盤は長く、 横幅が狭い

腰椎は屈曲

大後頭孔は 頭蓋骨の後方

頭蓋骨が 小さい

足は曲がっている

股関節は 中間の位置

骨盤は短く、横幅が長く、おわん型

足は 伸びている

腰椎は伸展

大後頭孔 (脳と脊髄をつなぐ頭蓋骨の開口部)は 頭蓋骨の下部 頭蓋骨が大きい

 

人間は両手がフリーになったことで大脳が飛躍的に進歩して、いまの生活を確保できることとなりました。

しかし、それは骨格が安定した状態から、不安定な状態になってしまったということでもあります。そうである以上、骨格を全体でとらえ、安定させるように考えていく必要があります。

自律神経が乱れている方の中には、膝、腰、肩、首の痛みを訴える方がとても多いので、それを例として説明をしていきます。

膝が痛いとき、膝だけを治療しても治りません。膝下、膝上から股関節、そして股関節より上の部分も考えないといけません。右の膝が痛い方は、骨格全体のバランスを見てみると、右に傾いていることが多くあります。2本足で支えているので、割合で考えると右足に 50 %、左足に 50 %の体重が乗っているのがベストですね。これが右に 60 %、左に 40 %だとすると、右に負担がかかるのは当然だと思います。

腰痛に関しても、右の腰が痛い場合には、腰の上下のバランスが崩れていることが多いです。特に骨盤の位置が前後、左右ともにズレていることが多いです。

腰痛は原因が不明な場合があるとか、メカニズムが解明されていないといわれています。専門家でも意見がわかれています。

 

しかし、すべての骨格は連動していると考えれば、そんなに難しい話ではないは ずです。「レントゲンでも M R I でも、痛みがある部分の骨に問題はない。じゃあ原因は?」ということが度々あります。画像診断はとても大切ですが、体に問題があるとき、いきなり画像に問題が現れるわけではないです。その前に体への負担、腰痛なら腰はもちろん、尻や足など、連動する筋肉や骨格への負担が続くことで腰痛が出て、最終的に画像的にも見えるほどの変化が出てしまうのです。

同じく、肩こりや肩の痛みも、肩周辺にだけフォーカスを当てても診断できない場合が多いです。右肩が痛い方は、右肩が下がっている、首が右に傾いているなどの左右差が出ていることが多いです。そうなると、肩の近くにある頚椎、胸椎、鎖骨、肩甲骨、肋骨なども含めて判断をする必要があるのです。

首の痛みやこりに関しても、右首が痛い場合には、首が右に傾いている、右肩が下がっている、首がより右前に出ているなどの所見が見られることが多いです。レントゲンで「頚椎症」や「ストレートネック」が原因と診断されていることも多いです。ストレートネックよりも前に曲がっていて、首がクレーンのように前に出ている場合にはクレーンネックと呼ばれる場合もあります。

 

そして、「ストレートネックはパソコンやスマホの使用による現代病なので仕方ないですよ、まず治らないですよ」と言われた、といった話を患者さんからよく聞きます。ストレートネックが治らないというのに関しては、私からすると疑問がかなり湧いてきます。全体のバランスから考えれば、改善できる場合が多々あります。

実際に当院では多くの結果が出ています。

体の各部位の痛みは、このようにほかの骨との連動からとらえてください。強く症状が出ている部位しか見ないのは、ことわざで言えば、 「木を見て森を見ず」というのがぴったりです。痛い部分だけを見ていては、どうしてそこが痛くなったのか判断できないことが多いのです。

 

↑までが本からの引用です。





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