自律神経失調症について その2
2019年11月13日 22:07更新
専門外来コラム
10/22の専門外来コラムの続きになっています。
2018年12月14日に出版となった拙書「最高のパフォーマンスを引き出す自律神経の整え方」から抜粋と一部手を加えての内容となっています。本の順番どおりではありません。
当院の自律神経失調症外来を受診される方は、下記のパターンに分かれています。
- 自律神経失調症と診断されたが、治療を受けても改善しない。
- 自分は、そこまで精神的にプレッシャーとかを感じていない。今の問題は、体調不良がメインだから、精神的な部分がメインではないのでは?
- 自律神経失調症と思ったから、受診された。
自律神経失調症は、不定愁訴(動悸、めまい、全身倦怠感+慢性疲労、息苦しさ・呼吸苦、喉のつまり・違和感、不眠・睡眠の乱れ、腹部の不調)などの原因が説明できないから診断名がついてしまっているのです。
実際に、血液検査、心電図、レントゲン、CTやMRI、超音波など、様々な検査では、それらの不調の原因が説明できないのです。
原因が見つからないとは言え、自律神経が乱れていたら出るような症状なのです。
私は、どの観点から自律神経を捉えているのでしょうか?
52P~60Pからの引用です。
最大の原因は「骨格」にあり
自律神経に影響を与えるさまざまな要因の中で、私が特に重視しているのは、「骨格」の乱れです。
「えっ、そんなものが影響しているの?」と思われたかもしれません。どういうことか、詳しくみていきましょう。
まず、「骨格」の乱れとはどういうことかというと、骨格が本来あるべき状態ではなくなっていることを指します。「骨格のゆがみ」と言ったほうがわかりやすいでしょうか。代表的な状態は、「姿勢の悪さ」です。 自律神経失調症で受診を希望される方々のほとんどは、姿勢が悪く、診察室に入ってきて数歩で、骨格のゆがみに気がつきます。
もちろん、ビジネスパーソンで受診される方も、同様に骨格のゆがみがすぐにわかることが多いです。ではなぜ、骨格がゆがんでいると自律神経は乱れてしまうのでしょうか?
まず、「脊髄」の問題があります。
自律神経は、脳の視床下部から始まり、「脊椎」の中の脊髄を通って、全身の各器官につながっています。
脊髄は脳と体をつないでいる神経の束であり〝首から腰までつながっているケーブル〟とたとえることができます。人が生きるために欠かせないとても重要なもので、これが損傷してしまうと、体を動かせなくなったり感覚がなくなったりしてしまいます。
脊髄は「脊椎」という骨のトンネル(背骨)を通っているおかげで、損傷から守られています。
脊椎のトンネルは、通常 S 字に近いカーブを保っています。これは脊髄をしっかり守り、人間の体を効率よく維持するために理想的なカーブです。
しかし、このカーブが変形したり、ずれてしまったりすると、中のケーブルは圧迫され、正常な働きをしづらくなってしまうのです。
さらに、「呼吸」の問題もあります。
骨格がゆがみ姿勢が悪くなっていると、肺がつぶされ、呼吸が浅く短くなってし まいます。
体に十分な酸素が行き渡らないことは、それだけで化学的ストレッサーによるストレス要因となります。また、浅く短い呼吸をしているときは交感神経が優位になっている状態です。
日常的に浅く短い呼吸をつづけていると、常に交感神経優位の状態になってしまい、自律神経のバランスが乱れる原因になってしまうのです。
ストレスが骨格の乱れに拍車をかける
「自律神経が乱れている」と言われると、多くの方は精神的なストレスのせいだと考えがちです。
しかし実際には、先に骨格がゆがんでいて、自律神経のバランスを失っている・失いかけている状態であると思ってください。
そこに、精神的ストレスや環境的ストレス、その他の身体的ストレスの問題が絡み合って、より自律神経の乱れがひどくなってしまうのです。
また、それらのストレスは、骨格の乱れにもさらに拍車をかけます。
たとえば、精神的なストレスが加わったとき、人間は自然と「歯を食いしばる」という習性があります。歯を食いしばると、顔の前方に強い力がかかるので、頭部が前に出やすくなります。頭部は安定した位置にないと、重力を強く受けてしまいます。すると、頭部を支えている首や肩は、前に出た分を支えないといけなくなり、余計な負担がかかります。
頭部の重さは体重の8〜 10 %近くもあります。体重が 60 キロだとすれば6キロです。そこにさらに重力が加わるのです。 前に出ると3倍近くの重さになると言われており、なんと 18 キロもの重さになってしまいます。
首・肩、脊椎のトンネルは、この重さに耐えなければいけません。短時間ならそこまで問題はないでしょうが、長時間続くと、トンネルにも限界がきてしまいます。
トンネルが耐えられなくなったら、中を通っている脊髄のケーブルも圧迫されてしまいます。そして、脊髄を通っている自律神経は、余計に乱れてしまうわけです。
「気づかない乱れ」が一番怖い
自律神経が乱れているという自覚や、姿勢が悪い(骨格がゆがんでいる)という自覚がある方は、まだ大丈夫です。3章ではゆがみを治すために気軽にできる方法をたくさん紹介していますので、これから治していきましょう。実は、一番怖いのは、自分の乱れに気づいていないことなのです。
電車の中の風景を思い浮かべてみてください。一車両にいる人たちの何%が、スマートフォンを使用しているでしょうか?
おそらく、およそ 80 %以上の方が使用しているのではないかと思います。
そのときの姿勢を思い出してください。下を向いている状態の方がほとんどだと思います。
下を向けば向くほど、脊椎のトンネルは頭の重さに耐えないといけなくなります。
人間がスマートフォンでネットやゲームを楽しんでいるあいだ、首や肩は文句も言わずに耐えているのです。そして、慢性的にその状態なので、首や肩がこっているということにすら気がついていないことが多いのです。
「気づかないくらいならいいじゃん」と思われるかもしれませんが、気づかないということは、決してよい状態ではありません。
実際に、自律神経の乱れで当院を受診される方で、首や肩、背中を触ってみるとすごくこっていて、すぐにでも治療すべき状態であるにもかかわらず、そのことに気づいていないことも多くあります。
①こりや痛みがない→②こりや痛みを感じる→③実際にこっているのに感じないか、触っていることすら感じない という段階を経ていきます。当院を受診される方々は②か③の方がほとんどです。
自律神経がひどく乱れている方は、③の状態がより強い傾向にあります。
現代人の9割は自律神経が乱れていることはすでに述べたとおりです。これはそのまま、現代人の9割は骨格がゆがんでいると言い換えてもよいです。パソコンやスマホの使用が日常的になった現代、ゆがみがまったくないほうが珍しいのです。
「自分は大丈夫」と思っている方も注意されてください。
また、「特になにもしていないのに、以前はひどかったこりを最近感じなくなった」という方や、マッサージなどに行って「すごくこっていますね」と驚かれるのに自覚がないような方は、特に要注意です。
↑までが本からの引用です。
不定愁訴=自律神経失調症という考え方をしていないことが、私の基本概念となっています。
続きはまた次回以降とさせて頂きます。
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