低血圧について



低血圧について

2018年4月10日 23:46更新
専門外来コラム


低血圧についてです。

 

低血圧とは、収縮期血圧(最大血圧)100(mmHg)以下、拡張期血圧(最低血圧)60(mmHg)以下の事をいいます。

 

高血圧と違い、症状がなければ治療をしなくても良いというのが一般的な考えです。そのため低血圧はあまり臨床的には注目はされていません。当院の専門外来を受診される方には、坐位や立位の血圧測定にて、低血圧を認めることが多くみられます。

 

低血圧に伴う症状には、以下のものがあります。

① 立ちくらみ、めまい。ひどくなると失神する。

② 立っていると気持ちが悪くなる。動悸や息切れが起こる。

③ 入浴後に体調不良になりやすい。

④ 朝起きるのが苦手である。

⑤ 全身倦怠感がある。

⑥ 顔色が悪い、青白い。貧血がある。

⑦ 食欲不振や胃もたれ、腹痛が起こりやすい。食後に体調が悪くなりやすい。

⑧ 頭痛、首こり、肩こりがある。臥位の場合は出にくい。

⑨ 精神的ストレスで体調不良になりやすい。

⑩ 気象変化に弱い。乗り物酔いをしやすい。

 

他にもありますが、分かりやすく10項目にしています。

 

当院で行なっている専門外来での症状に一致することが多いです。首肩こり、貧血、自律神経失調症などと相互に関係していると考えています。そのため、当院では低血圧を疑う方には自宅での血圧測定をおすすめしています。特に起床時の血圧が重要です。

緊張しやすい方は、診察室では緊張して血圧も上がってしまうので、低血圧は隠れやすくなってしまいます。

 

低血圧には、急性低血圧と慢性低血圧があります。

 

急性低血圧には、アレルギー(アナフィラキシーショックなどで急激に血圧が低下します)、ショック症候群(外傷による血管外への出血、心筋梗塞などの心機能低下など)、アルコール(空腹でアルコールを飲んで急速に吸収されて血管拡張による血圧低下)によるものなどがあります。

急性低血圧の方は、それぞれの原因に対しての適切な治療が必要となります。

 

慢性低血圧には、体質性低血圧と症状を伴う、起立性低血圧本態性低気圧症候性低気圧などがあります。

起立性調節障害は厳密には起立性低血圧とは違いますが、よく似ています。当院の患者さんでは、起立性調節障害と診断され治療されている方は、比較的が多いです。以前書いた起立性調節障害のブログを参照されてください。

 

体質性低血圧:常に低血圧ですが、症状が全くないため問題ありません。

本態性低血圧:明らかな原因がなく慢性的に低血圧な場合です。症状がない場合は、体質性低血圧となっていると考えて良いでしょう。

血圧が低いのを自覚していたり、指摘されるため、当院に来る際にはすでに診断されている方が多いです。

症候性低血圧:貧血、糖尿病や悪性腫瘍、甲状腺機能低下症、パーキンソン病などの神経難病、その他様々な疾患が原因となっています。

 

起立性低血圧:臥位では収縮期血圧が100mmHg以上あるが、立位になると80mmHg以下にも下降する状態です。

収縮期血圧が21mmHg以上下がる場合となります。

 

起立性低血圧が起る理由には、自律神経が関係しています。

自律神経は、交感神経と副交感神経に分かれています。交感神経は血圧を上昇させ、副交感神経は血圧を低下させます。起立直後に下がる直後型、時間が経って起きる遅延型の2つがあります。

 

起立性低血圧が起るメカニズムについて説明をします。血圧維持に関しては以下のシステムとなっています。

① 立ち上がると頭部への血流が減る。頭部へ行く血管は総頚動脈と椎骨動脈があります。特に総頚動脈の血流が多いです。

② 血流を減ったことを、頚動脈洞で感知します。

③ その信号が、自律神経を通じて、脳幹にある血圧中枢に伝わります。

④ 交感神経が優位になることで、心拍数の増加と末梢の血管を収縮させて、脳への血流を保持します。

 

この一連の流れがスムーズに行けば、起立性低血圧は起きません。

 

起立性低血圧は、寝ていてから起きるとき、特に早朝時に起きやすいです。これは、寝ているときは副交感神経が優位なためです。起き始めには、まだ活動モードの交感神経にうまくスイッチが入っていないと考えるとわかりやすいでしょう。

 

高齢の方では、動脈硬化が強い事が原因となりやすく、直後型の低血圧となることが多いです。

 

思春期や成長期の方では、成長発達段階(自律神経もまだ発達途中)のため起きやすくなります。起き上がることができない場合と遅延型が起きることが多いです。

思春期や成長期では、起立性調節障害と診断されることが多く、治療としては同じような薬を使用します。

骨格が急速に大きく来ることに、自律神経系が対応出来なくなっている場合や姿勢のゆがみ、首肩こりなどの自律神経の乱れやすい状態で起きやすくなります。朝気圧が下がっていると、低血圧のため、体が動かないという症状を持っている方は当院では多いです。

 

朝礼中に気持ち悪くなったり、めまいがしたりなどの体調不良、酷くなると意識をうしなったりする場合があります。立ち仕事を長時間されていて出る方もいます。

 

遅延型では、自律神経が乱れている方が起きやすいです。自律神経が乱れやすい骨格の状態の方が起きやすいと臨床では感じています。

貧血と間違われることもありますし、合併していることもあります。

 

様々な要因が低血圧と関係しますので、総合的な判断が必要となります。

 

治療や対処法に関しては、次回に書いていこうと思っています。





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