薬物乱用頭痛(MOH:Medication Overuse Headache)について
2017年12月14日 21:53更新
専門外来コラム
頭痛外来を受診される方の中には、
月に半分以上、頭痛のために鎮痛薬飲んでしまっている方が多く見られ、その中には薬物乱用頭痛となっている方が多いです。
月に10日以上鎮痛薬を飲んでいる、出そうだから早めに飲む、は要注意です。
頭痛が起こる。→鎮痛薬を飲むとおさまる→また頭痛が起こる→鎮痛薬を飲むとおさまる
どんどん効果時間が短くなりさらに飲む回数が増えるという悪循環に陥ります。
このようなサイクルになってしまい、根本原因の軽減が出来ていないため、鎮痛薬を飲み続けることになってしまいます。そのうち同じ薬では効かなくなり、その他の薬、多剤併用になってしまうことも多く見られます。
さらには、頭痛が起きそうな感じがすると鎮痛薬を飲んでしまう方が多いです(この出そうだから鎮痛薬を飲むという行為は乱用を引き起こす可能性が高いです)。
1回MOHになってしまうと、なかなか抜け出せなくなります。
緊張型頭痛、片頭痛、緊張型頭痛+片頭痛の混合型が改善しないため、鎮痛薬の服用が多くなってしまいます。
MOHは、緊張型頭痛、片頭痛の次に多いと言われております。実際に当院でもその割合となっています。男女比は女性に起こりやすいです。中学生以降では見られます。ストレスの多い方や、PCやスマホの使用時間の多い方にも多いです。
原因となる薬剤は、①市販の鎮痛薬(カフェインを含んだり、数種類の鎮痛成分が入っているのはよりなりやすいです)、 ②NSAIDs等の鎮痛薬、③トリプタン製剤、 ④エルゴタミン製剤(使用頻度が減っているため、単独で原因となっていることは少なくなっています)などがあります。
上記①~④を併用している方も多く見られます。
トリプタン製剤の処方されている方は、他の製剤より早い期間でなってしまうことが多いとされています。
当院では、多剤を併用されている方により多くのMOHが見られています。
緊張型頭痛+片頭痛の混合型の方は、よりMOHの程度が強くなっています。
以下に示したのが、診断基準です。国際頭痛分類第3版beta版(ICHD-3β)からの引用です。
薬剤の使用過多による頭痛(薬物乱用頭痛)(MOH:Medication Overuse Headache)の診断基準
A:以前から頭痛疾患をもつ患者において、頭痛は 1ヵ月に15日以上存在する
B:1種類以上の急性期または対症的頭痛治療薬を 3ヵ月を超えて定期的に乱用している
C:ほかに最適な ICHD-3 の診断がない
エルゴタミン乱用頭痛
3ヵ月を超えて、1ヵ月に10日以上、定期的にエルゴタミンを摂取している
トリプタン乱用頭痛
3ヵ月を超えて、1ヵ月に10日以上、定期的に 1つ以上のトリプタンを摂取している(剤形は問わない)
単純鎮痛薬乱用頭痛
3ヵ月を超えて、1ヵ月に15日以上、単一の鎮痛薬を摂取している
オピオイド乱用頭痛
3ヵ月を超えて、1ヵ月に10日以上、定期的に 1つ以上のオピオイドを摂取している
複合鎮痛薬乱用頭痛
3ヵ月を超えて、1ヵ月に10日以上、定期的に 1つ以上の複合鎮痛薬を摂取している
治療の流れは以下となります。
- 原因薬物を中止する:多剤使用している場合は、より飲んでいる回数が多い薬から中止していきます。
- 薬物中止後に起こる頭痛(反跳頭痛)に対する治療:ここを乗り切れないと減っていきません。2週間くらいの期間続くことをしっかりと説明しておくことが重要です。鎮痛薬をゼロにしなくても良いから、ギリギリまで飲まないようにしましょうと伝えています。ゼロと言われると、必要以上のプレッシャーとなってしまいます。
- 予防薬の投与:緊張型頭痛には、筋弛緩薬や漢方薬など。片頭痛には、抗てんかん薬、βブロッカー、漢方薬など。
- 頭痛ダイアリーの使用:頭痛が出た日数や時間帯、薬物使用日数を付けることによって、患者さん自身が自分の状態を把握できるようになります。出来れば、天気も書いてもらいます。
- 飲んで良い鎮痛薬の種類や回数:それとしっかりと伝えること、そして鎮痛薬を10回/月以内に抑えること
- ストレッチやマッサージ、ストレッチなどの運動療法:自分に合う方法なら何でも構わないです。日々の心身の疲れやストレスをリセットするためには、とても重要です。
- 気象病がベースにある場合は、そちらの治療も並行して行います。
気象病の治療を行うようになってからは、MOHからの離脱成功率が上がってきております。
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