自律神経のしくみ ④ 自律神経と脳の関わり



自律神経のしくみ ④ 自律神経と脳の関わり

2022年4月18日 18:57更新
専門外来コラム


自律神経と脳の関わり

 

脳といえば、人間にとって重要な器官のひとつですよね。自律神経にとっても、脳は深い関わりがあり重要な存在です。

 

脳は神経細胞を通して、心と身体から受け取る情報を管理しています。そして自律神経は、その脳の視床下部という場所によってコントロールされています。

 

自律神経を語るうえで視床下部は大切な存在です。脳の話も少し難しい言葉が多いかもしれませんが、心と身体とのつながりも含めてご説明していきます。

 

  • 脳は心と身体のコントロール役

脳は神経細胞を通して、心と身体の機能を管理しています。

まずは心の機能。私たちは「うれしい」「悲しい」などの感情を「心」という言葉を使って表現しますよね。実は、これらの感情はすべて頭の中で起こっている現象です。脳は場所ごとに、感情や思考、記憶、学習などを担当するエリアに分かれています。心、つまり感情は脳がつかさどる機能の一つに含まれます。

 

一方で身体の機能についてはどうでしょうか?手足を動かすことができたり、心臓が動いていたりするのも、個々で動いているという訳ではありません。脳が神経細胞に指令を送っているおかげで、身体の各臓器や器官がうまくはたらき続けることができます。

 

  • 自律神経は脳の視床下部に支配されている

1視床下部は自律神経系の最高中枢

自律神経は、本人の意思とはかかわりなく内臓や器官に作用しています。ホメオスタシスを保つために、24時間365日休まず体の状態を微調整しているのでしたね(前回のコラム「自律神経とホメオスタシス」より)。

 

自律神経のはたらきは、脳の視床下部という場所によってコントロールされています。「視床下部は自律神経系の最高中枢」と呼ばれているほど。脳の中ではとても小さな部分ですが、人間のホメオスタシスの維持に最も重要な役割を果たしています。

 

2.脳を構成する3パーツ

脳は大きく分けて大脳小脳脳幹の3つのパーツから成り立っています。視床下部は、脳幹(間脳・中脳・橋・延髄)のなかの、さらに間脳(視床・視床下部)という場所の中です。また、の大脳は「大脳新皮質」と「大脳辺縁系」の2つのエリアに分かれています。大脳新皮質はものを知覚・思考・判断するなど、知性をつかさどるはたらき、大脳辺縁系は食欲や性欲、快・不快、怒り・驚きなどの情動をつかさどるはたらきがあります。視床下部はこの大脳辺縁系の影響も強く受けながら、自律神経活動の調整を行っています。

 

  • 自律神経は「本能」に反応する

視床下部は大脳辺縁系などの影響を受けつつ、脳幹や脊髄に作用し、自律神経活動へとつながります。とくに大脳辺縁系からの情報が大きく影響しており、自律神経は本能的な欲求や情動・感情などに反応します。

 

たとえば、急に大きな音がしたとしましょう。この時、大脳辺縁系に「驚き」という感情が生じます。驚きに反応した視床下部は自律神経の交感神経を興奮させ、交感神経は心臓の鼓動を速めたり、血圧を上げたりするのです。

 

  • 自律神経は心の動きにも敏感

1.理性と本能のバランス

私たちは、理性と本能という、相反する感情のバランスをとりながら生きています。理性の部分は大脳新皮質、本能の部分は大脳辺縁系(視床下部も大きく関与)が強く影響を受けているのでしたね。しかし、本能的な喜怒哀楽が生じたときに、理性が強くはたらいて感情を抑制する方が強くなってしまうと、大脳新皮質と大脳辺縁系の間に混乱が生じます。

 

たとえば、「つらい」「苦しい」などの感情を理性で抑制してしまうと、視床下部はうまく情報を受け取ることができません。すると、視床下部は自律神経のコントロールもうまくできなくなってしまうため、自律神経失調症を引き起こすきっかけになるのです。

 

2.ストレスが長期化すると…

本来であれば、「つらい」「苦しい」などの感情が起こると交感神経が反応しますが、しばらくすると副交感神経がはたらいて、安定した状態に戻ります。しかし、ストレス状態が長期間にわたると、交感神経はずっと興奮したままです。副交感神経のスイッチが入りにくくなったり、切り替えがうまくいかなくなったりと、視床下部の自律神経コントロール力が乏しくなっていくと考えられています。

 

  • なるべく「自由」を大切に

私が臨床で自律神経失調症の患者さんを見ていて思うのが、ストレスや感情を抑制しすぎてしまっている方が多いということ。中学生や高校生にもよくみられます。このストレス社会で「本能のままに」というのは少し難しいですが、不調を抱えている方こそなるべく我慢をせず、自由や開放、安心などを大切にして頂けたらと思っています。ストレス発散やリフレッシュ、リラックスが大切と言われているのはこのためでもありますよ。

 

【出典】

・久手堅司監修.面白いほどわかる自律神経の新常識.宝島社.2021

・鈴木郁子編著.やさしい自律神経生理学.中外医学者.2021

・久保木富房監修.専門医が治す!自律神経失調症 ストレスに強い心身をつくる、効果的な療法&日常的なケア

・エレインN.マリーブ.R.N.人間の構造と機能.医学書院

 





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