自律神経のしくみ②:交感神経と副交感神経



自律神経のしくみ②:交感神経と副交感神経

2022年1月11日 20:53更新
専門外来コラム


自律神経のしくみ:交感神経と副交感神経

 

こんにちは。前回の専門外来コラム「自律神経のしくみ」では、自律神経はそもそも何なのか?という点に注目して書きました。

 

自律神経は、内臓や血管などのはたらきを24時間、休まず自動的に調整してくれるシステムです。その自動的なシステムは、交感神経と副交感神経がバランスよくはたらくことによって成り立ちます。

 

今回は、交感神経と副交感神経のふしぎについて書いていきます。

 

  • 自律神経は2種類で構成されるー交感神経と副交感神経ー

 

自律神経は、交感神経と副交感神経がバランスよくはたらくことで機能しています。

 

どんなに暑くても寒くても、私たちの体温が36℃~37℃の範囲で一定に保たれていますよね。このように、体内の環境は、ある一定の範囲の状態に保てるようにつくられています。これを恒常性(ホメオスタシス)と言います。

 

自律神経はこの恒常性を保つために必須のシステムです。

交感神経はアクセル、副交感神経はブレーキ。お互いがシーソーのようにバランスを取りながらはたらくことによって、体の状態を良いコンディションに保っています。

 

交感神経と副交感神経は24時間365日はたらいています。どちらか一方だけのスイッチが入っている訳ではありません。そのため、交感神経のはたらきが強いときは「交感神経が優位」、副交感神経の方が強くはたらいているときは「副交感神経が優位」と表現します。

 

  • 交感神経のはたらき

 

交感神経の役割

 

交感神経は、体と心が「興奮モード」のときに優位にはたらきます。たとえば、運動をしているときは心臓の鼓動が速くなったり血圧が上がったりしますよね。それ以外にも以下のようなはたらきがあります。

 

・脳血管を収縮させる

・瞳孔の拡大、涙の分泌を抑制する

・唾液が出づらくさせる

・気管支を拡張させる

・心拍数を増やす

・消化を抑制する

・排便・排尿を抑制する

・(暑い時など)汗を分泌して体温を下げる

・(寒い時など)鳥肌を立てて熱を発生させる

・末梢血管を収縮させる

 

交感神経が優位なときに出やすい症状

 

・頭痛(緊張性頭痛)

・眩しさ、目が乾く

・口が乾く

・動悸、息苦しさ

・便秘、下痢

・胃痛、腹痛

・体温調節がしづらい(熱がこもる)

・過緊張、首肩こり

 

交感神経が過度に優位になると、アクセル全開になりすぎるため不調につながります。慢性的にストレスがかかっていると、交感神経を優位にしてがんばるしかありません。その代償に、首肩こりや頭痛、動悸など、上記の症状が発生します。

 

交感神経のスイッチが入るタイミングは?

 

・日中

・興奮したとき

・驚いた時

・ストレスを強く感じたとき

・緊張したとき

・不安を感じているとき

・危険を感じたとき

 

私たちは人間活動をするために、本来は日中に交感神経のスイッチが入るようにできています。日常生活はストレスで溢れていますよね。交感神経は悪いものではありませんが、私たちの生活の中には交感神経のスイッチが入れる要素がたくさん潜んでいることを、頭の片隅に入れておきましょう。

 

  • 副交感神経のはたらき

 

副交感神経の役割

 

副交感神経は、体と心が「お休みモード」のときに優位にはたらきます。リラックスしているとき、体の力が抜けて脈がゆっくりになるのはこのためです。その他にも、副交感神経は「消化」のときに優位にはたらきます。心地よい環境でゆっくり食べた方が消化に良いのは副交感神経のおかげです。

 

・脳血管を拡張させる

・瞳孔を収縮させる

・サラッとした唾液を出す

・気管支を収縮させる

・心拍数を減らす

・消化を促進する

・排便・排尿を促進する

 

副交感神経が優位なときに出やすい症状

 

副交感神経はリラックスの印象が強いので「体に良いもの」と思われがちですが、副交感神経のはたらきが強すぎたり、適切なタイミングではたらかなかったりすると、不調の原因になります。

 

・頭痛(片頭痛)

・涙が出る

・徐脈(脈が遅くなりすぎる)

・だるさ・朝起きられない

 

副交感神経のスイッチの入るタイミングは?

 

・眠っているとき

・リラックスしているとき

・食後にゆっくりしているとき

・癒しを感じたとき

 

夜になると眠くなるのは、副交感神経のスイッチが入るようにできているからです。「規則正しい生活をしましょう」とよく言われますが、これは「人間に備わっている自律神経のリズムを乱さない生活」という意味になります。夜勤や当直、昼夜逆転の生活が体によくないのはこのためです。

 

  • 大切なのは交感神経・副交感神経のバランス

 

交感神経・副交感神経の2つはどちらがいいという訳ではなく、両方がオン・オフになり、状況に応じてバランスよく切り替わる状態が理想的です。

 

日中、学校の授業や仕事に集中したい時には交感神経が優位になって「興奮モード」にならなければ活動ができません。夜、ぐっすり休んで疲れを取るためには「お休みモード」になることが必須ですよね。

 

しかし、ストレスがかかって慢性的に緊張状態になると、夜も「興奮モード」がはたらいてしまいうまく休むことができません。これが積み重なると、自律神経のバランスが乱れてスイッチの切り替えが上手くいかず、不調につながるのです。

 

  • 自律神経のはたらくルートと脊椎(背骨)の位置

 

交感神経と副交感神経では、体内の通るルートが違うのを知っていますか?

交感神経は脊髄の外側から出たあと、お腹側を回り、体の各器官に分布していきます。

 

それに対して、副交感神経は、脳の下部(首のあたりです)にある中脳・橋・延髄から出て体の各器官に分布するルートと、脊髄の下部にある(腰のあたりです)骨盤神経から腸や膀胱・生殖器に向かうルートがあります。

 

「緊張すると胃がキリキリする、お腹が痛くなる」

「首や腰を温めてほぐすとリラックスする」

 

このようなシーンを想像すると、自律神経のはたらくルートと背骨や内臓の位置は何かつながりがあるのかもしれませんね。私は外来に来る患者さんにピラティス(背骨の動きを重視している運動です)をおススメしているのですが、「眠れるようになった」「胃腸の調子がよくなった(機能性ディスペプシアが改善した)」という方が多くいらっしゃいます。

 

≪参考≫

・久手堅司著.最高のパフォーマンスを引き出す自律神経の整え方.クロスメディアパブリッシング.2018

・久手堅司監修.面白いほどわかる自律神経の新常識.宝島社.2021

・鈴木郁子編著.やさしい自律神経生理学.中外医学者.2021

 





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