自律神経のしくみ①自律神経とは何者なのか?



自律神経のしくみ①自律神経とは何者なのか?

2021年12月21日 18:05更新
専門外来コラム


自律神経のしくみ自律神経とは何者なのか?

 

こんにちは。

専門外来コラムをリニューアル中です。なかなか更新ができていなかったのですが、自律神経の不調や気象病についてきちんとまとめていきたいので、もう一度。

以前のブログの内容と重なっている部分があるかと思いますが、新しい情報も入れていきますね。

 

今回は自律神経の正体について書いていきます。

「自律神経」「自律神経失調症」「不定愁訴」など、意味が曖昧だったり、症状が幅広かったりして難しいと思います。医学的なことは少し難しいですが、これから体調を整えるためにご参考になればと思います。

 

『現代人の9割が乱れている自律神経』

 

「自律神経の乱れ」や「自律神経の不調」という言葉をよく聞きますよね。自律神経失調症専門外来を始めて5年以上経ちますが、パソコンやスマホの普及、コロナ禍の自粛疲れやストレスなどにより、自律神経の乱れによる不調をきたす方がより目立つようになりました。

 

自律神経の不調の症状は多岐にわたります。

 

・頭痛

・首・肩こり

・めまい

・疲労感・だるさ

・不眠

・動悸・息苦しさ

・低血圧

・胃腸の不調

・不安感・抑うつ・・・

 

症状は人それぞれなのでこれ以外にもありますが、上記の症状が多いです。

 

自律神経は、「生命を維持するために24時間はたらいているシステム」。本来であれば、私たちの身体と心を健康な状態に保ってくれるためのものです。しかし、自律神経は繊細です。ストレスの影響を大きく受けてしまいます。

 

精神的なストレスをはじめ、残業や疲労などの身体的ストレス、気圧や気温の変動による環境的なストレスなどにより、現代人の生活環境は厳しいものになっています。そのため、自律神経が乱れている人がほとんどなのです。

 

そして、忘れてはいけないのが骨格のゆがみ。骨格のゆがみや姿勢の悪さも、自律神経を乱す立派なストレスになっています。後ほど触れていきます。

 

『自律神経とはそもそも何なのか?』

 

 

自律神経のはたらき

 

自律神経とは、名前の通り、全身に巡っている神経の1つです。

簡単にいうと、

「生命を維持するために24時間、全身をコントロールしているシステム」。

 

難しいのでもう一歩踏み込んでいうと、

「内臓や血管などのはたらきを自動的に調整してくれる神経」です。

 

たとえば、

・寝ている時でも呼吸ができるようにしたり、心臓の鼓動が動き続ける

・ご飯を食べると自動的に胃腸が動いて消化活動がはじまる

・暑くなれば発汗をして体温を下げて適温にする

 

などは、すべて自律神経のはたらきのおかげです。人間の体は、体内の環境を一定の範囲内に保つようにできています(これを恒常性といいます)。自律神経は、この恒常性を保つために24時間休むことなく体の状態を微調整しているのです。

 

全身を巡る神経のうちの1つ

 

人間の体には、脳や内臓・血管などのさまざまな器官がありますよね。それらを支配して、うまくはたらくようにコントロールしているのが神経です。情報伝達の役割があります。

 

神経は大きく分けて2種類、より細かく分けると4種類です。

 

①中枢神経

脳と脊髄で構成されており、体の中心です。人体の「司令塔」の役割をしています。脳のイメージが強いかもしれませんが、脊髄(首から背骨に沿ったラインです)も重要な神経です。中枢からの指令を末梢神経に伝えたり、末梢神経が持ってきた全身の情報を受け取ります。

 

②末梢神経

末梢神経は、体にあるそれぞれの器官と細かいやり取りを行っています。脳や脊髄から来た指令を全身に伝えたり、逆に各器官から来たメッセージを中枢に伝えたりします。網目のように全身に広がっています。末梢神経はさらに「体性神経」と「自律神経」にわかれます。

 

(1)体性神経

体性神経はさらに「感覚神経」と「運動神経」にわかれます。やっとイメージつきやすい名前が出てきましたね。人間が活動をするうえで不可欠な神経です。体性神経は自分の意思でコントロールできるのがポイントです。

 

・感覚神経:温かい、冷たい、痛い、やわらかいなどの感覚を感知して、脳に伝えています。

 

・運動神経:手や足、首や口などの体の部分を動かす役割があります。

 

(2)自律神経

ようやく登場です。中枢を構成している脊髄は、脳の視床下部から腰まで(首から背骨のライン)をケーブルのようにつなげる神経の束ですが、自律神経もこの束から全身に分布しています。私が「自律神経と背骨のゆがみ」に着目しているのは、この点が関係しています。

自律神経は「交感神経」と「副交感神経」の2つにわかれています。

・交感神経:心身が活動的で興奮しているときに優位にはたらく

 

・副交感神経:心身がリラックスしているとき、食べ物を消化しているときに優位にはたらく

 

交感神経・副交感神経については他のコラムで詳しく書こうと思います。

 

自律神経失調症とは?ー心身症とのちがいー

 

自律神経失調症の症状

日常生活や社会生活に支障が出るくらいの身体的な症状があるのにもかかわらず、「検査で異常が出ない」場合、自律神経失調症の疑いがあります。またその場合、自律神経系だけではなく、ホルモンや免疫のバランスも同時に崩していることが多いです。

 

症状は冒頭にも少し書きましたが、以下の通りです。

 

《全身症状》

・だるい

・眠れない

・疲れがとれないなど

 

≪器官的症状≫

・頭痛

・首・肩こり

・動機や息苦しさ

・めまい

・立ちくらみ

・のぼせ・冷え

・胃痛・吐き気・食欲不振

・下痢や便秘など

 

≪精神的症状≫

・情緒不安定

・イライラや不安感

・うつなど

 

当院にいらっしゃる患者さんについて

 

ちなみに当院の自律神経失調症専門外来にいらっしゃる患者さんは、このような方が多いです。

 

・自律神経失調症と診断されたが、どこの病院に行っても改善しない

・今の自分の問題は、体調不良がメインなのに、精神的なもの?と言われる。とくにプレッシャーを感じていたりはしていないが、精神的なものなのか心配

・ネットなどを見て自律神経失調症と思ったから、受診した

 

いずれにしても「症状がつらいのに理解されない」「病院に行っても相手にされない」「心療内科に回されるけど、心当たりがない」というお話をよく聴きます。

 

心身症とのちがい

心身症という病気を知っていますか?何らかのストレスが身体の症状に出ると、「心身症なのではないか?」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんね。心身症は「身体の病気の背景に、心理社会的な要因が関係している病態」です。自律神経失調症と似ているようで違います。

 

≪心身症≫

・特定の臓器や器官に症状が集中する

・明らかな身体疾患が生じる(胃かいよう)など

 ※胃かいようがすべて心身症というわけではありません

・体質や生活習慣によるものではなく、心理社会的な要因が症状に直結する

 

≪自律神経失調症≫

・多数の臓器や器官に症状が現れる

・明らかな身体疾患はない

・症状が不安定で、出たりで消えたりする

・心因のときもあるが、体質や生活習慣の乱れが影響する

 

心理的・精神的ストレスで自律神経失調症が悪化することもあるので、「自律神経失調症=精神的なものではない」と説明する時に伝わりづらいのが現状です。

 

見過ごされてきた「背骨・骨格・姿勢」と自律神経の関係

私は自律神経の不調を診るにあたって、「骨格の歪み」「背骨の状態」「姿勢」「筋肉の凝り」などに着目しています。なぜなら、骨格が歪んでいると、自律神経のはたらきが悪くなり、呼吸も浅くなって、自律神経失調症を引き起こしやすくなるからです。

 

長年の臨床経験からも、骨格の歪みにアプローチすることで元気になる患者さんを多く見ています。もちろん骨格だけではなく、食事や睡眠などの生活習慣や精神面も考慮することも必要ですので、患者さんを診察するときはトータルで判断するようにしています。

 

 

≪参考文献≫

・久手堅司著.最高のパフォーマンスを引き出す自律神経の整え方.クロスメディアパブリッシング.2018

・久手堅司監修.面白いほどわかる自律神経の新常識.宝島社.2021

・久保木富房監修.専門医が治す!自律神経失調症.高橋書店.2016

・鈴木郁子編著.やさしい自律神経生理学.中外医学者.2021

・厚生労働省/自律神経失調症

://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/heart/yk-082.html

 





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