気象病について-入門編-



気象病について-入門編-

2022年6月7日 22:27更新
専門外来コラム


気象病について-入門編-

 

今年は早い時期から気温が上下したり、気圧や湿度が変化したりと、自律神経に負担がかかる日々が続いていますね。私は5年以上前から気象病専門外来や自律神経失調症専門外来を開設していますが、最近ではやっと「気象病」や「自律神経」という言葉が世の中に普及してきたように思います。特に気象病に悩まされている方がとても多く、治療やセルフケアがより多くの患者さんに行き届いてほしいと願うばかりです。

 

梅雨の季節になってきたので、今回は気象病の導入について書いていきます。

 

・気象病とは?

 

▹気象の変化によって起こる不調

 

季節の変わり目や梅雨・台風の時期などに具合の悪くなる方はいませんか?

気象病とは、気圧や気温の変化(寒暖差)、湿度などの気象条件が変化することによって、心身ともにさまざまな不調が出ることを言います。

 

正式な病気として認定されている訳ではないですが、気象病は患者さんの生活に支障をきたしてしまう辛い不調です。重症度は「雨の降る前は何となく不調」という方から、「寝込んでしまって学校や仕事に行けない」という方までさまざまなケースがあります。

 

症状も非常に多岐にわたります。最も多いのは頭痛ですが、全身倦怠感やめまい、首肩こり、起床困難、低血圧、抑うつなど、心身、そして全身にさまざまな不調が出やすいです。

 

▹気象病は自律神経とセットで考える

 

気象病と深く関係しているのは自律神経です。

気圧の変化や寒暖差、湿度の変化などが起こると、自律神経がその変化に合わせて体温調整や身体のコンディションの調節がなされます。そのため、気象変化が激しい時ほど自律神経は酷使されていることになります。

 

何らかの要因で元々自律神経が乱れている方やストレスの多い方などは、気象病にもなりやすいです。逆に、気象病の治療や対策に加えて、自律神経を整えるためのメンテナンスをすると、気象変化に強い体づくりにつながります。

 

・気象病の方は増えています

 

最近では、「自分は気象病なのでは?」と思われている方が多いです。まずはチェックをしてみましょう。

 

▹チェックリスト

 

1 天候が変わるときに体調が悪い

2 雨が降る前や天候が変わる前になんとなく予測ができる

3 頭痛もちである

4 耳鳴りやめまいが起きやすい

5 肩こり・首こりもち

6 姿勢が悪い。猫背・反り腰などがある

7 乗り物酔いをしやすい

8 スマホやパソコンを使用する時間が長い(14時間以上)

9 ストレッチや柔軟をすることが少ない

10 歯の食いしばり、歯ぎしり、歯の治療が多い。顎関節症がある。

11 年中エアコンが効いた環境にいることが多い

12 日常的にストレスの多い生活をしている

13 更年期障害ではないか?と感じることがある(男女ともに)

 

1・2にチェックがつけばほぼ気象病と言って良いでしょう。3~13に3つ以上チェックがついた方は、予備軍と考えて良いです。

 

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▹なぜ気象病が増えているのか?

 

実際に私の気象病専門外来でも、患者さんが増加しています。

 

気象病の方が増えている要因はいくつも考えられますが、ここでは2つ挙げていきます。

1つは、世の中に「気象病」というという言葉や薬などが普及してきたことにあります。気象変化でなんとなく不調を感じていた方が、テレビや雑誌などをきっかけに、ご自身が気象病であることに気づいたケースですね。患者さんとお話していると、「やっとわかってもらえる病院を見つけた」「今までは気のせいと言われて辛かった」などの言葉を聴くことが多いです。隠れている気象病の方はまだまだ多くいらっしゃると感じています。

 

もう1つは、世の中が自律神経の乱れやすい環境になっており、単純に気象変化による自律神経系の不調を訴える方が増えていることにあります。最近ではスマホやパソコンを使用するのは当たり前、情報過多、異常気象などストレスフルな社会となっているように感じます。コロナ禍になって尚、ストレスが増えた方は多いでしょう。

 

スマホなどの長時間の使用は骨格のゆがみを招き、自律神経が乱れやすい体になります。また、脳に負担のかかる生活やストレスの多い日常は、自律神経を弱くしてしまう原因になります。自律神経が乱れていると、気象変化のストレスにも耐えきれずに気象病につながることが多いです。

 

・気象病の症状

 

気象病の症状は、本当にさまざまです。頭痛を訴える方が多いですが、他にも症状がたくさんあります。

 

・頭痛(もともと緊張型頭痛、片頭痛を持っている方は、ともに悪化しやすいです。)

・全身倦怠感

・首こり、肩こり

・めまい

・耳鳴り・耳がこもった感じ

・消化器症状(吐き気・胃痛・下痢・便秘など)

・動悸

・低血圧・血圧の変動

・朝起きられない

・メンタルの不調

・古傷の痛み、関節痛

・神経痛

・咳が出やすい・止まらなくなる(喘息のような症状)

・鼻炎

・冷え性(手足、体幹、体全体)

・手足のしびれ

 

先ほども書きましたが、最も出やすいのは頭痛です。気象病の方の80%以上の方に出ています。次に多いのは、全身倦怠感・だるさ。次に、首肩こり(これは気象に関わらず慢性的に持っている方が多いです)、めまい、朝起きられない、低血圧などです。

 

・気温や湿度も意外と大切

 

気象病専門外来にいらっしゃる患者さんの不調要因は、以下の割合です。

 

気圧:8~9

気温:1~2割

湿度:湿度のみでの来院はほとんどなし

 

気象病は、気圧の変化による不調を訴える方が多いですが、気象条件は他にもあります。気象病の方は「気圧・気温・湿度」の3つをポイントにして生活していくと良いでしょう。

 

気温の変化(寒暖差)は疲労感や頭痛、冷え・のぼせ(体温調節の不良)などを引き起こすことが多いです。また、「湿度が原因で不調が出ます」と言って来院する方は少ないですが、湿度が不調と関係しているのも間違いありません。

湿度を下げると、同じ気温でも体感温度が下がります。そのため、湿度の対策をするだけで身体の熱がこもりにくくなり、自律神経にかかる負担を減らすことができるのです。梅雨や夏場は、睡眠の質の改善に役立ちます。





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