自律神経のしくみ ⑤ 自律神経と骨格の話



自律神経のしくみ ⑤ 自律神経と骨格の話

2022年4月25日 23:38更新
専門外来コラム


自律神経と骨格の話

 

私が行う自律神経失調症外来・気象病外来の最大の特徴は「骨格のゆがみと自律神経」に着目した治療です。一見、「背骨のゆがみや姿勢の悪さがそこまで体調と関係あるの?」と思われるかもしれません。私もそう思っていた過去があるのでわかります。しかし、原因のわからない自律神経の不調に悩まれている方こそ、筋肉や骨格のアプローチに可能性があると思いますよ。

 

・自律神経が乱れている人は骨格が歪んでいる

 

私は自律神経失調症外来・気象病外来・頭痛外来などの専門外来を始めて約7年経ちますが、自律神経が乱れている患者さんのほとんどが、背骨の弯曲や歪みがあります。ストレートネックや左右の肩の高さの違い、軽い側弯症、反り腰や平背、骨盤の高さの左右差などがあります。

 

骨格が歪むと、私たちの体にとってさまざまな不都合が生じます。骨格が歪んで姿勢が悪くなっている分だけ別の場所に負荷がかかり、さまざまな場所の筋肉が凝ることになります。たとえばストレートネックは、首が前に出ている分だけ頭の重さが何倍も首にかかることになります。そもそも頭の重さは4~6kgあるため、その倍になるだけで大きな負担です。その影響で首こり・肩こりが進むと、頭痛などの不調が出ます。

 

骨格のゆがみがある方は、頭痛だけでなくめまい・倦怠感・動悸・息苦しさ・胃腸不良・耳鳴り・低血圧など、あらゆる不調を抱えている方が多いです。

 

・骨格や背骨に着目する理由

 

①自律神経には呼吸が大切

 

自律神経にとって最も重要といっても過言ではないのが「呼吸」です。呼吸は無意識にできている方の方が多いと思いますので、命に関わる程苦しくならない限りは、そこまで重要視できないかもしれません。しかし、自律神経の不調を抱えている方こそ呼吸が浅く、うまく酸素や栄養が全身に回っていない方ばかりなんです。

 

呼吸と言えば、肺や胸を想像しますよね。骨格が歪んでいると胸郭が硬くなり、呼吸がしにくく、浅くなります。首や腰が痛い方は、一見首や腰そのものに問題があるのでは?と思う方もいるかもしれませんが、実は胸椎や胸郭の動きに問題がある方が多いです。

 

②脊椎と自律神経の関係

 

自律神経の通り道を知っていますか?

自律神経は、脳と脊髄から始まり、各臓器や器官に分布していく神経です。

 

交感神経系は胸・腰髄から出ますが、副交感神経のルートは脳幹および仙髄から出て、それぞれ各器官に指令がいきます。実は、脳幹から腰髄までのラインは、脊椎(頚椎・胸椎・腰椎・仙椎)のラインと同じです。首・背骨のことですね。

 

骨格が歪んでいると、自律神経の伝達ルートが妨げられてしまいます。まっすぐな道を進むのと、くねくね曲がったり、狭い道があったりすると通りづらいですよね。ちなみに背骨が歪んでいると、脳脊髄液の流れも悪くなってしまいます(自律神経と脳脊髄液も密接な関係があります)。どちらにせよ、自律神経のはたらきが悪くなる原因になってしまうのです。これも、私が骨格や首・背骨に注目している理由です。

 

③背骨の動きと自律神経

先ほども言いましたが、私が重要視しているのが胸椎です。首肩コリ、腰痛などがある方は、実は胸椎や胸郭が固くなって、ほとんど動いていないことが多いです。胸郭の動きを良くするためには、背骨全体の動きを良くすることも大切です。ストレッチやヨガ・ピラティスは背骨を意識できるよい運動だと思います。

 

背骨や胸郭の動きを良くすると、今まで動いていなかった部分のロックが解除されたようになり、血流が良くなったり体の動きが良くなったりします。すると、自律神経をつかさどっている視床下部()に酸素や栄養がより行き渡るので、自律神経のはたらきが良くなります。体の動きが改善すると身体的なストレスが減ることになるので、自律神経の負担も軽減しますよね。

 

④良い姿勢が体にもたらす効果

アメリカのある研究によると、人は姿勢を良くすると、前かがみなどの悪い姿勢よりもストレス耐性が上がると言われています。姿勢をよくして、抗重力筋を刺激することで、脳内にたくさんのセロトニンが分泌され、ストレスを感じにくい状態を作ります。

 

・気象病との関係

 

気象病にも触れておこうと思います。自律神経と気象病はとても深い関係にあります。

 

最近、気象病の認知度が上がってきたこともあり、「気象病は内耳の部分が問題なのでは?」と言われることが多いです。確かに内耳は気象病のメカニズムで重要な要因ですが、内耳だけが悪いというわけではありません。

 

内耳は頭蓋骨の中にあり、頭蓋骨は頚椎とつながっております。頚椎は胸椎と、胸椎は腰椎と、腰椎は骨盤群と下肢と足底までつながっています。人間の体は、骨格で構成されているので、「内耳の場所が体の中心線からどの程度ずれているのか」ということが診断の目安になっています。

内耳が安定しておらず揺れやすい状態にあるということは、より内耳が不安定な状態になりやすいと考えてください。骨格は気象病の方にとっても大切ですね。

 





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