自律神経のしくみ③ 自律神経とホメオスタシス
2022年1月23日 17:42更新
専門外来コラム
■自律神経とホメオスタシス
ホメオスタシスという言葉をご存じでしょうか?
以前の専門外来コラムでは、「自律神経は内臓や血管などのはたらきを24時間、休まず自動的に調整してくれるシステム」ということでした。実はその調整には、「人間に本来備わっているホメオスタシス(恒常性)」という機能が深く関わっています。
ホメオスタシスという言葉は医療用語なので難しいかもしれませんが、一度理解すれば、自律神経のお話も今まで以上に深く学習できると思います。今回は、ホメオスタシスと自律神経の関係についてお話ししていきますね。
・人間の体に備わっているホメオスタシス機能
まずは「ホメオスタシスとは一体何なのか?」という問題からご説明していきます。
・ホメオスタシスの意味
ホメオスタシスとは、「外界がたえず変化していたとしても、体内の状態(体温・血液量・血液成分など)を一定に維持できる能力のこと」です。ホメオスタシスという言葉そのものは、「変化しない」という意味を持ちます。しかし人間の場合は、全く変化しないというよりは、ある一定の狭い範囲を変動している平衡状態と捉えてもらった方が良いかもしれません。
私たち人間の体は、数十兆個の細胞からなっています。それが一定の営みを続けていられるのは、ホメオスタシスを維持できているおかげです。たとえば私たちの体温は、約36℃程度に保たれています。外が暑い・寒いに関わらず、体温は一定ですよね。
ごく当たり前のことのように思われますが、もし体温が高くなった時に「体温を一定に維持しよう」という機能がはたらかないと、体に熱がこもったままになり、脳がうまく機能しなくなってしまいます。「体温が高くなったら、体温を下げるためにはたらこう(発汗など)」というプロセスは、ホメオスタシスを保つために脳にインプットされているはたらきなのです。
・ホメオスタシスが崩れるとどうなるか?
ホメオスタシスを維持するようなはたらきは、脳にプログラミングされています。とくに、脳の視床下部という部分が自律神経の調整をしているため、ホメオスタシスのはたらきが崩れると、交感神経と副交感神経の切り替えがうまくいかなくなります。
先ほど挙げた体温を例にとるなら、体温調節がうまくいかなくなり、冷えやのぼせの症状がでます。日本は寒暖差の激しい時期があるので、体が寒暖差に対応しきれず体調不良を引き起こすことになるのです。
・自律神経とホメオスタシスの深い関係
自律神経は、ホメオスタシスを維持するために、バランスを取りながら微調整を続けています。私たちを構成している数多くの細胞にお休みはありませんよね。常にホメオスタシスを維持するため、自律神経も24時間365日、休まずオートマティックにはたらいているのです。日中になれば交感神経が優位になり、人間活動を促します。リラックス時、眠前には副交感神経が優位になり、人間に必要な休息をもたらします。
寝ている時にも無意識に呼吸が続き、多少の暑さ寒さ・湿度の変化があっても寝続けていられるのは、自律神経がその時々の体の状態に応じて対応しているからです。
私たちの体はとても繊細で、優秀につくられているのです。
・不規則な生活が自律神経に良くない訳
・人間は規則正しい生活をするようにできている
「自律神経の乱れを治すには、規則正しい生活をしましょう」という言葉をよく耳にしませんか?これは本当です。自律神経は不規則な生活に弱いです。わかりやすい例が睡眠リズム。人間は、朝に起きて夜に寝る、朝に交感神経が優位になり、夜に副交感神経が優位になる、このようにできています。ホメオスタシスを維持するためです。
夜勤や交代制勤務で体調を崩す方が多いのは、人間の本来のコンディションに反することをしているからです。副交感神経が優位になるべき時間に無理やり起きていたり、交感神経が優位になるべき時間に眠らなければいけない生活をしていると、体に刻まれているリズムやホメオスタシス機能が混乱を起こします。その結果、自律神経の調節もうまくいかなくなり、さまざまな不調が現れます。
・自律神経が弱いと不規則に対応しきれない
そもそも自律神経が乱れていると、本来持っている微調整のはたらきも弱くなってしまいます。周囲の環境やストレスの影響をもろに受けることになるのです。自律神経の乱れている方が、体温調整ができずに冷えやのぼせを訴えられていたり、不眠や朝起きられないなどの症状があるのは、自律神経の微調整やスイッチングがうまくいっていない代表的な例です。
とすると、自律神経にとって、規則正しい生活をするのは大前提です。「夜寝る前にスマホを触らない方が良いです」と私が言っているのは、スマホを触ることが骨格のゆがみを引き起こすのもありますが、寝る前に脳を興奮させて交感神経が刺激されてしまうためでもあります。自律神経の不調がすでにある方はもちろん、そうでない方も、人間の本来あるべき生活リズムを送るように心がけると、より体調が良くなるかもしれませんね。
・参考
・久手堅司監修.面白いほどわかる自律神経の新常識.宝島社.2021
・鈴木郁子編著.やさしい自律神経生理学.中外医学者.2021
・久保木富房監修.専門医が治す!自律神経失調症 ストレスに強い心身をつくる、効果的な療法&日常的なケア
・エレインN.マリーブ.R.N.人間の構造と機能.医学書院
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