機能性胃腸症と姿勢の関連性について
2018年2月15日 20:50更新
専門外来コラム
機能性胃腸症(機能性ディスペプシア:FD functional dyspepsia)についてです。
FDと姿勢が関係していると考えたため、記述することにしました。
当院での内科は総合内科、神経内科なので科が違うのではと思われるかもしれません。
その通りで、当院では上部消化管検査や下部消化管検査は受けることは出来ません。
専門外来を受診される方で、胃の症状を訴える方は多いです。特に、慢性的な吐き気、心窩部痛、食欲はあるがお腹がすぐに一杯になるなどです。
当院で頭痛、肩こり首こり外来、自律神経失調症外来、気象病外来において、専用のチェックリストを作っています。その中で、胃部症状のチェックがあります。
□吐き気 □胃痛 □胃酸上昇 □逆流性食道炎 □下痢 □便秘
となっています。ここにチェックをされている方は、腹部症状があり、特に胃周辺にある方は、FDと診断され、投薬治療を受けている方は、かなりおいでになります。
まずは、FDがどういう疾患なのかを説明されて頂きます。
概念:FDとは、上腹部の痛みや不快感や腹部膨満感、吐き気、むかつきなどの上腹部症状を慢性的に訴えているが、明らかな器質的疾患が認められないことをいいます。
診断基準:ROMEⅢの診断基準 2006年より引用
1. 以下の症状のうち1つ以上の症状が6ヶ月以上前から起り、最近3ヶ月は症状が続いている。
A食後のもたれ、B早期膨満感、C心窩部痛、D心窩部灼熱感
2.かつ症状の原因となりそうな器質的疾患(上部内視鏡検査を含む)が確認されないもの
上記のうち、AまたはBが主症状であるものを食後愁訴症候群
PDS:postprandial distress syndrome
上記のうち、CまたはDが主症状であるものを心窩部痛症候群
EPS:epigastric pain syndrome
をもとに、2014年に日本消化器学会が作成した
機能性消化管疾患診療ガイドライン2014-機能性ディスペプシア(FD)
というガイドラインがベースとなっています。
原因:胃適応性弛緩性障害、胃排出障害、ヘリコバクター・ピロリ感染、内臓知覚過敏、アルコール、喫煙、ストレスや不安などの社会的因子、遺伝的要因などがあり、それが複雑に影響し合っていると考えられております。
治療:消化管運動機能改善薬、胃酸を抑制する薬を使用したり、胃の粘膜を保護する薬を使用したりします。ヘリコバクター・ピロリ感染がある場合には、除菌療法が必要とされています。漢方薬も効果を示します。それで効果が無い場合には、抗うつ薬や抗不安薬を使用することがあります。
ここからは私が臨床的に経験したことを説明させて頂きます。
論理的な裏付けがないと言われそうですが。
消化器専門医にて、FDと診断され治療を受けているがあまり効果が出ていない方に共通している部分。
1:姿勢が悪い、座っているときに猫背か、首が結構前に出ている
2:肩や首、背中がこっている(自覚症状があるなしに)
3:鎖骨の下を押すと痛い
4:腹部側面の肋骨を押すと痛い
→これは骨格的なゆがみがあるということなのですが。
骨格的なゆがみが出る理由
A:首が前に出る
B:PC作業やスマホ使用で手が回内する→肘も回内する→肩も回内する
C:肩の位置に左右差がある
D:骨盤の位置で前傾、後傾、左右差などがある
他にもありますが、特にA、BがFDの症状に関係しています。
人間の体幹は、胸部は心臓と肺があるため、胸骨、肋骨、鎖骨、背骨などでガードされています。しかし、腹部は背骨しかありません。
首が前に出て、肩が内巻きになると、胸郭が腹部を圧迫します。上から押されているわけですから、消化管内を調べても原因がはっきりしない。
当院を受診される方でFDの方に対して、姿勢の変化で胃部症状がどうかをチェックしています。姿勢を理想的(骨盤が立った状態、肩が開いた状態、首があまり前に出すぎていない状態)にしてみると、胃の不快感が改善することがとても多いです。
そんな簡単な事で治るはずがないでしょうと思われると思いますが、実際にその場ですぐに実感されている患者さんも多いです。
自分でFDと思われる方は、試しに以下の方法を行なってみて下さい。
① 椅子に座る
② 膝をそろえる。
③ 足首の角度、膝の角度、骨盤の角度が90°のイメージで座る
④ 胸を少し開く
⑤ 肩の上に耳を乗せるイメージで軽く顎を引く(この時に反り腰にならないように注意:腰を痛める可能性がある)
⑥ 視線をまっすぐに
この状態で、上腹部を軽く押してみて下さい。いつもの症状が改善した場合は、姿勢を正しくすることで症状が改善できると思って良いでしょう。
上記方法で改善した場合は、当院では数回の治療で良くなっています。自分で骨格を正しくすることが出来れば、それだけでもかなり変わってきます。
体幹や首や肩のストレッチや、ヨガ、負荷の少ない全身運動、PCやスマホを連続で使用しない、椅子の座り方を変えるなどのちょっとしたことで変わってきます。
カフェインを多く取られる方(5~6杯以上)は、FDだけでなく、慢性的な頭痛や肩こりに悩まされている方が多いです(特に男性に多い傾向があります)。
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