気象病といびきの意外な関係とは? 上野いびきクリニック・菅谷和之院長と対談
2026年11月3日 22:51更新
専門外来コラム
気象病といびきの意外な関係とは? ~上野いびきクリニック・菅谷和之院長との対談から~
気象病といびきは、自律神経と睡眠という共通の視点から考えることができます
今回は、上野いびきクリニックの菅谷和之院長からお声がけいただき、**「気象病といびきの関係」**をテーマに対談する機会がありました。
実は、菅谷先生とは研修医時代からの友人です。
研修医として医療の現場に立っていた頃からの付き合いですが、現在はそれぞれ異なる専門分野で診療を行っています。今回、このような形でご一緒できたことを、大変うれしく思っています。
私は日頃から、気象病や寒暖差疲労、自律神経に関連するさまざまな症状について診療しています。一方、菅谷先生は、いびきや睡眠時無呼吸症候群の診療を専門とされています。
一見すると異なる分野のように思えるかもしれませんが、実は両者を考えるうえで共通して重要になるのが、「自律神経」と「睡眠」です。
今回の対談を通じてお伝えしたいのは、気象病といびきは、自律神経と睡眠という共通の視点から考えることができるということです。
もちろん、気象病が直接いびきを引き起こすというわけではありません。しかし、それぞれの症状の背景にある仕組みを理解することで、身体の不調をより幅広く捉えることができます。
今回は対談のご紹介とともに、気象病といびき、そして睡眠時無呼吸症候群の関係について、内科・神経内科の立場から解説してみたいと思います。
【対談動画:気象病といびきの関係について】
https://www.youtube.com/watch?v=HzRa8AvJ6a8
1.気象病とはどのような状態なのでしょうか?
気象病とは、気圧、気温、湿度などの気象条件の変化に伴い、さまざまな身体の不調が現れたり、もともとの症状が悪化したりする状態の総称です。
代表的な症状としては、頭痛、めまい、倦怠感、肩こり、関節痛、気分の落ち込みなどがあります。
特に台風の接近時、梅雨の時期、季節の変わり目などに、体調不良を訴える方が少なくありません。
気象病の発症機序は、まだ十分に解明されているわけではありませんが、気圧の変化を感知する内耳の働きや、自律神経系の反応などが関与していると考えられています。
また、急激な気温変化に身体が適応しようとする際にも、自律神経は重要な役割を果たします。
気象病という言葉は広く知られるようになりましたが、一つの原因で説明できる病気ではありません。
片頭痛、めまい、慢性的な疲労感など、患者さんによって現れる症状も、その背景にある要因も異なります。
そのため、当院では気象の影響だけでなく、生活習慣や睡眠の状態、基礎疾患なども含めて総合的に考えることが大切だと捉えています。
2.気象病と自律神経の関係
自律神経は、心拍数、血圧、体温調節、消化活動など、私たちが意識しなくても働く身体機能を調節しています。
自律神経には、主に交感神経と副交感神経があり、身体の状況に応じてそれぞれが働いています。
例えば、寒いときには皮膚の血管が収縮して熱が逃げるのを防ぎ、暑いときには発汗などによって体温を調節します。
このように、環境が変化するたびに、私たちの身体ではさまざまな調節が行われています。
気象病では、こうした気象環境への適応に関わる生理的反応が、症状の発現に関係している可能性があります。
ただし、気象病のすべてを「自律神経の乱れ」だけで説明できるわけではありません。実際には、内耳の働き、片頭痛の発症機序、睡眠、ストレスなど、複数の要因が関与すると考えられます。
だからこそ、症状を一つの原因に決めつけず、身体全体の状態を確認することが重要なのです。
3.気象病と睡眠にはどのような関係があるのでしょうか?
「雨の日は身体がだるい」
「季節の変わり目になると、朝起きるのがつらい」
「天気が崩れる前になると、よく眠れない」
このような訴えを耳にすることがあります。
睡眠は、自律神経の働きと密接に関係しています。
通常、睡眠中には心拍数や血圧が低下し、身体は休息に適した状態へと変化します。
しかし、頭痛や身体の不快感が強い場合には、寝つきが悪くなったり、途中で目が覚めたりすることがあります。
また、睡眠不足や睡眠の分断が続くと、日中の疲労感や集中力の低下が生じ、身体の不調をさらに強く感じる可能性もあります。
気象病と睡眠の関係は、一方向だけではありません。
気象の変化に伴う不調が睡眠を妨げることもあれば、睡眠の状態が悪いことで、日中の身体症状がよりつらく感じられることも考えられます。
こうした相互の関係に目を向けることは、気象病の患者さんを診療するうえでも大切だと思います。
4.では、気象病といびきには関係があるのでしょうか?
今回の対談の中心となったテーマです。
まず、いびきは睡眠中に上気道が狭くなり、空気の流れによって周囲の軟らかい組織が振動することで発生します。
その原因には、肥満、顎や気道の形態、鼻づまり、飲酒など、さまざまな要因があります。
現時点では、気圧の変化が直接いびきや睡眠時無呼吸症候群を悪化させるという因果関係が、十分に確立されているわけではありません。
一方で、睡眠時無呼吸症候群の重症度に季節による変動が見られたという研究報告があります。
また、気温や湿度などの環境条件は睡眠の快適さに影響することがあります。
季節の変わり目に鼻炎や鼻づまりが悪化すると、鼻呼吸がしにくくなり、いびきが目立つ場合もあります。
さらに、気象病によって頭痛や倦怠感などが生じている方に、もともと睡眠時無呼吸症候群が存在している場合には、二つの問題が重なって、日中の不調がより強く感じられる可能性があります。
つまり、気象病といびきの間には、単純な原因と結果の関係ではなく、自律神経、睡眠の質、気道の状態、生活環境などを通じた複雑な関係が考えられるのです。
5.睡眠時無呼吸症候群は自律神経にも影響します
いびきを考える際、特に注意したいのが睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome:SAS)です。
睡眠時無呼吸症候群では、睡眠中に呼吸が繰り返し停止したり、浅くなったりします。
そのうち、睡眠中に上気道が狭くなったり閉塞したりするものを、閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)と呼びます。
呼吸が妨げられると、血液中の酸素濃度が低下し、呼吸を再開するための覚醒反応が起こります。
このような状態が繰り返されると、交感神経の活動が高まり、心拍数や血圧が変動することがあります。
本来、睡眠は心身を休めるために重要な時間ですが、睡眠時無呼吸症候群があると、身体が十分に休息できない場合があります。
その結果、日中の眠気、倦怠感、集中力の低下などにつながることがあります。
さらに、閉塞性睡眠時無呼吸は、高血圧、不整脈、脳卒中などの循環器・脳血管疾患とも関連することが知られています。
ここで重要なのは、いびきや睡眠中の呼吸障害が、単に夜間だけの問題ではないということです。
自律神経を介した身体への影響を考えるうえでも、睡眠の状態を評価することは重要だと思います。
6.「自律神経の不調」と思っていたら、睡眠時無呼吸症候群が隠れていることも
当院では、頭痛、めまい、倦怠感、動悸、集中力の低下など、さまざまな症状を訴える患者さんが来院されます。
こうした症状は、自律神経に関連して生じることもありますが、必ずしも自律神経だけが原因とは限りません。
例えば、十分な睡眠時間を確保しているにもかかわらず、朝から疲れている、日中の眠気が強いといった場合には、睡眠の質について確認する必要があります。
睡眠時無呼吸症候群が存在していても、ご本人が呼吸停止に気づいていない場合があります。
ご家族から「いびきが大きい」「眠っている間に呼吸が止まっている」と指摘されて、初めて気づく方もいます。
また、睡眠時無呼吸症候群は、肥満のある方だけに起こる病気ではありません。
顎や気道の形態などによって、痩せている方でも発症することがあります。
気象病の症状を訴える方でも、普段から睡眠の質が低下しているのであれば、気象病とは別に睡眠時無呼吸症候群が存在している可能性も考える必要があります。
「天気のせいだから仕方がない」
「自律神経が乱れているだけだろう」
そう決めつけるのではなく、症状の背景にある病態を丁寧に確認することが大切です。
7.睡眠時無呼吸症候群の検査と治療
睡眠時無呼吸症候群が疑われる場合には、問診や睡眠検査によって評価します。
代表的な検査には、自宅で実施できる携帯型装置による検査や、睡眠ポリグラフ検査(PSG)があります。
PSGでは、脳波、呼吸状態、血液中の酸素濃度、心電図などを記録し、睡眠中の状態を詳しく評価します。
睡眠時無呼吸の重症度を表す指標の一つが、無呼吸低呼吸指数(AHI)です。
これは、睡眠1時間あたりに無呼吸や低呼吸が何回起こるかを示すものです。
治療法としては、CPAP療法が広く用いられています。
CPAP療法では、睡眠中にマスクを通じて空気を送り、気道が閉塞するのを防ぎます。
そのほか、口腔内装置、生活習慣の改善、体重管理、体位の工夫、適応がある場合の外科的治療などが検討されます。
適切な治療法は、無呼吸の重症度や症状、合併症、身体的な特徴などによって異なります。
大切なのは、いびきの音を小さくすることだけを目的とするのではなく、睡眠中の呼吸状態を適切に評価することです。
8.気象病と睡眠の問題がある方に心がけていただきたいこと
気象病の症状と睡眠の問題が重なっている場合には、生活習慣や睡眠環境を整えることも大切です。
まず、できるだけ一定の時刻に起床し、規則正しい生活リズムを保つことが基本になります。
朝の光を浴びることや、日中に適度な運動を行うことは、睡眠・覚醒のリズムを整えるうえで役立ちます。
また、寝室の温度や湿度を適切に保ち、快適な睡眠環境を作ることも重要です。
いびきがある方では、就寝前の飲酒を控えたり、鼻づまりの原因となる疾患を適切に治療したりすることも大切です。
仰向けでいびきが悪化する場合には、横向きで眠る工夫が役立つこともあります。
気象病の症状がある方には、天気や気圧の変化とともに、睡眠時間や体調を記録することもおすすめしています。
こうした記録は、ご自身の不調の傾向を知る手がかりになります。
ただし、生活習慣の改善だけで睡眠時無呼吸症候群を十分に治療できるとは限りません。
睡眠中の呼吸停止を指摘されている方や、日中の強い眠気が続く方は、医療機関での評価を検討してください。
9.菅谷先生との対談を通じて改めて感じたこと
今回、研修医時代からの友人である上野いびきクリニックの菅谷和之院長と、「気象病といびき」というテーマについてお話しできたことは、大変貴重な機会でした。
気象病といびき。
一見すると、まったく関係のない二つの問題のように思えるかもしれません。
しかし、実際の診療では、患者さんが感じている不調が一つの原因だけで説明できるとは限りません。
気象の変化による頭痛や倦怠感、睡眠の質の低下、睡眠中の呼吸障害など、複数の要因が重なっていることも考えられます。
だからこそ、内科・神経内科の立場と、いびき・睡眠医療の立場から、それぞれの専門的な視点を持ち寄ることには大きな意味があると感じています。
研修医時代からの友人が、それぞれの専門分野で診療を続け、こうして医学的なテーマについて語り合えることは、私にとってもうれしいことです。
今回の対談が、気象病や自律神経の不調に悩む方にとって、ご自身の睡眠を見直すきっかけになればと思います。
また、いびきや睡眠時無呼吸症候群に悩む方にも、睡眠だけでなく、日中の身体症状や生活環境などを含めて、健康を考えるきっかけになれば幸いです。
気象病といびき。一見すると関係のなさそうな二つの問題ですが、自律神経と睡眠という共通の視点から考えることで、身体の不調をより幅広く理解する手がかりになります。
今回の対談で、私が最もお伝えしたかったのも、この点です。
「天気が悪いから調子が悪い」
「いびきは昔からだから問題ない」
そう考えている方も、これを機会に、ご自身の身体と睡眠の状態を一度見直してみてはいかがでしょうか。
せたがや内科・神経内科クリニック
院長 久手堅 司
参考資料
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日本呼吸器学会『睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療ガイドライン2020』
-
日本呼吸器学会『睡眠時無呼吸症候群(一般向け疾患解説)』
-
Cassol CM, et al. Is sleep apnea a winter disease?: meteorologic and sleep laboratory evidence collected over 1 decade. Chest. 2012.
-
全国健康保険協会『季節の変わり目 気象病』
-
上野いびきクリニック『気象病といびき・睡眠時無呼吸の関係』
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