第3回 朝起きられない中高生、受診の目安は?
2026年9月27日 21:19更新
専門外来コラム
朝起きられない中高生、受診の目安は?
― 起立性調節障害を見逃さないために ―
「何度起こしても朝起きられない」
「学校がある日になると頭痛や吐き気を訴える」
「午前中はぐったりしているのに、夕方になると元気になる」
中学生・高校生のお子さんにこのような変化がみられると、保護者の方は心配になると思います。
特に夏休み明けは生活リズムが変化しやすく、朝起きられない、学校へ行けないといった相談が増える時期です。
単なる寝不足や夜更かしの場合もありますが、症状が続くときには、背景に起立性調節障害(Orthostatic Dysregulation:OD)などの病気が隠れている可能性があります。
では、どのくらい症状が続いたら医療機関を受診したほうがよいのでしょうか。
今回は「朝起きられない中高生」をテーマに、受診を考える目安についてお話しします。
「朝起きられない=夜更かし」とは限りません
思春期になると、睡眠のリズムは少しずつ変化します。勉強や部活動、塾などで帰宅時間が遅くなり、さらにスマートフォンやゲームなどによって就寝時間が遅くなることもあります。
そのため、まずは睡眠時間が十分に確保できているかを確認することが大切です。
しかし、「早く寝ても朝起きられない」「起き上がろうとするとめまいがする」「朝になると頭痛や吐き気が強くなる」といった症状がある場合、睡眠時間だけの問題ではない可能性があります。
その代表的なものが起立性調節障害です。
起立性調節障害では、なぜ起きられない?
私たちが横になった状態から立ち上がると、重力によって血液が下半身へ移動します。
通常は自律神経がすぐに反応し、血管を収縮させたり心拍数を調節したりすることで、血圧や脳への血流を保ちます。ところが起立性調節障害では、この調節がうまく働かないことがあります。
その結果、めまい・立ちくらみ、頭痛、動悸、吐き気、倦怠感、顔色が悪い、食欲がない、集中できないなどの症状が現れます。
特に朝から午前中に症状が強く、午後から夕方にかけて少しずつ改善することが多いのも特徴です。
こんな症状があれば、一度受診を
「何日休んだら受診する」という明確な基準があるわけではありません。しかし、次のような状態が繰り返されている場合には、一度医療機関への相談をおすすめします。
① 朝起きられない状態が続いている
数日程度の寝不足であれば、生活リズムを戻すことで改善することもあります。一方、十分に睡眠をとっているにもかかわらず朝起きられない状態が続く場合には、身体的な原因を確認してみる必要があります。
② 起き上がるとめまい・立ちくらみがする
ベッドから起きたときや椅子から立ち上がったときに、ふらつく、目の前が暗くなるといった症状を繰り返す場合は注意が必要です。
③ 朝に頭痛や吐き気が強い
起立性調節障害では頭痛を伴うことがあります。また、思春期には片頭痛も比較的多くみられるため、頭痛が学校生活に影響している場合には、一度診察を受けることをおすすめします。
④ 動悸や息苦しさを感じる
立ち上がったときに心拍数が大きく増加し、動悸や息苦しさを感じるタイプもあります。「立っているだけでつらい」「長時間立っていられない」という訴えも重要なサインです。
⑤ 遅刻・欠席が増えている
体調不良による遅刻や欠席が増え始めた段階で相談することも大切です。欠席が長期化すると、「勉強についていけない」「友達に会いにくい」など、新たな不安が加わってしまうことがあります。
午後に元気でも「仮病」とは限りません
保護者の方が特に戸惑うのが、「朝は学校に行けないほどつらそうだったのに、夕方にはゲームをしている」という状況ではないでしょうか。
しかし、起立性調節障害では午前中に症状が強く、午後になると改善することがあります。朝に本当につらかったとしても、夕方には普通に話せたり、食事ができたりすることは十分にあります。
午後に元気だからといって、朝の症状が「仮病だった」と判断することはできません。むしろ、こうした時間帯による体調の変化は診断を考えるうえで重要な情報になります。
受診するときには、「何時頃が一番つらいのか」「午後になるとどう変化するのか」も医師に伝えてください。
朝起きられない原因はODだけではありません
ここも非常に大切です。「中高生で朝起きられない」という症状が、すべて起立性調節障害というわけではありません。
例えば、貧血、甲状腺の病気、睡眠障害、感染症などの身体疾患が原因となっていることがあります。また、片頭痛によって朝から動けないケースもあります。
さらに学校生活、人間関係、受験、家庭環境などによる心理的ストレスが睡眠や自律神経に影響していることもあります。
そのため、最初から「起立性調節障害だ」と決めつけるのではなく、他の病気が隠れていないかを確認することが重要です。
受診前に記録しておくと役立つことが、
診察では、「朝起きられない」という情報だけでなく、一日の中で体調がどのように変化するかがとても参考になります。
可能であれば数日間、「何時に寝たか」「何時に起きたか」「朝食を食べられたか」「頭痛やめまいがあったか」「学校へ行けたか」「何時頃から元気になったか」などを簡単に記録してみてください。
毎日細かく記録する必要はありません。スマートフォンのメモなどでも十分です。
「午前10時まではほとんど動けないけれど、午後2時頃から元気になる」といった具体的な情報があると、診察の際に役立ちます。
ご家庭でできること
症状が軽い場合でも、生活の中でできる対策があります。まず大切なのは、十分な水分を摂ることです。暑い時期には汗によって水分が失われやすいため、特に注意しましょう。
医師から指導がある場合には、塩分摂取についても調整します。
また、起床・就寝時間を大きくずらさない、朝起きたらカーテンを開けて光を浴びる、朝食をできる範囲で摂る、急に立ち上がらない、日中に無理のない範囲で身体を動かす、昼寝を長時間しすぎない、といった工夫も大切です。
ただし、症状が強いときに無理やり運動させたり、無理に登校させたりすることが必ずしも良いとは限りません。その日の体調に合わせて少しずつ生活リズムを整えていきましょう。
「学校に行けるか」だけを判断基準にしない
起立性調節障害の診療では、「学校に行けた・行けなかった」だけで状態を評価しないことも重要です。
例えば、以前は朝まったく起きられなかった子が10時には起きられるようになった。朝食が少し食べられるようになった。午後から短時間だけ登校できるようになった。こうした変化も大切な改善のサインです。
症状が続いていると、本人も保護者の方も焦ってしまいます。しかし、回復には時間がかかる場合もあります。
小さな改善を積み重ねながら、身体のリズムを取り戻していくことが大切です。
早めの相談が、悪循環を防ぐことにつながります
朝起きられない状態が続くと、「体調が悪い → 学校を休む → 生活リズムがさらに乱れる → 学校へ行きづらくなる → 不安やストレスが増える → さらに体調が悪化する」という悪循環に入ることがあります。
そのため、「もう少し様子を見よう」と長期間我慢するよりも、日常生活や学校生活に影響が出始めた段階で相談することが大切です。
朝起きられないことは、必ずしも「本人の努力不足」ではありません。身体から発せられているサインの可能性があります。
お子さんが「朝起きられない」「立つとつらい」「頭が痛くて学校へ行けない」と訴えている場合には、その言葉に耳を傾け、必要に応じて医療機関へ相談してみてください。
せたがや内科・神経内科クリニックでは、起立性調節障害をはじめ、頭痛、めまい、不眠など、自律神経に関連するさまざまな症状について診療を行っています。
「受診したほうがよいのかわからない」という段階でも、症状が続いている場合にはご相談ください。
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